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アートなニンジンの花~自家採種のススメ その3~

ソイルラボでは、毎年野菜の種を採っています。
今回はその種採りについてのお話の3回目、根菜類の「大根」と「ニンジン」の種採りをご紹介します。

1、2回目のご紹介では、果菜類の中の「ピーマン」「トマト」「きゅうり」、「ナス」「カボチャ」の種の採り方について書いています。ぜひそちらも読んでみてください。


根菜の栽培サイクル

大根やニンジンのおおまかな栽培サイクルはこのような感じです。



大根の種をとる


一年を通して食卓で大活躍する野菜のひとつ、大根。
サラダやお味噌汁、煮物などなくてはならない野菜です。

晩秋に収穫した大蔵大根

私たちの農園では夏に大根の種をまき、晩秋から冬にかけて収穫します。
種が採れるのは翌年の夏ごろです。


晩秋~冬

収穫期が終わるころ、収穫した大根の中から大きくて形のよいものを種採り用に数本選び、再びその大根を畑に植え替えます。

このとき、交雑しないように近くにアブラナ科の野菜などがない場所を選びます。

数本を植え替える理由は、アブラナ科である大根は種を作るときに自分以外の花粉と交配する仕組みがあります。そのため、必ず複数本の大根を種採り用として選びます。


早春~初夏

植え替えた大根はそのまま冬を越え、早春の頃になると根元から少しずつ新たな葉が出てきます。

葉が増えてくると徐々に真ん中から花穂がついた茎が伸びてきて分岐します。そして花穂がふくらみ、きれいな黄色の菜の花を咲かせます。

紅芯大根、根元から花穂が出てきました


初夏~真夏

やがて花が終わり、6月ごろになってくると花が咲いていたところに3〜5cmほどのさやができます。始めは緑色ですが、そのままにしておくとやがて黄色からベージュ色になり、株全体が枯れたように乾燥してきます。

乾燥し始めてきたら大根を引き抜き、軒先などで乾燥を進めます。

畑にそのままにしておいても大丈夫ですが、種がはじけて落ちてしまうことがあるし、畑も片付かないので、別の場所に移してしまうことが多いです。

完全に乾いたら、さやをハサミなどで枝から切り離し、ガラス瓶などに乾燥材を入れて保存します。

さやには2〜4粒くらい種が入っています。種はすぐに取りださなくても大丈夫です。

その年の夏の種まきに間に合えばそのまま種をまきます。


種が採れたら

ところで大根の種はさやの中に入っていますが、このさやがけっこう固く、種を取り出すのが手間になります。

大蔵大根の種、さやに2~4粒ほど入っています

しかし自然の中でできたときに、このさやって取れにくいよね、枯れ落ちたときにそのまま発芽しないのかな?と。

まずはなんでも実験してみるということで、さやごと土に埋めてみたことがあります。

さやから取り出した種もまき、発芽を待ちました。
すると取り出した種より少し時間がかかったものの、さやごと土に埋めたものもきちんと発芽しました。

このことがわかってから、私たちのところでは大根はさやごと種まきしています。


ニンジンの種をとる


ニンジンも食卓に欠かせない野菜です。
今は黄色や紫色など、色とりどりのニンジンもありますね。

ニンジンは春と夏に種をまき、夏から冬にかけて収穫します。
種が採れるのは、翌年の夏ごろです。

初秋に採れたニンジン、かぼちゃ、枝豆


晩秋~冬


収穫期が終わるころに、収穫したニンジンの中から大根と同じように大きくて形のよいものを種採り用に数本選びます。

選んだニンジンを畑に植え替えます。夏収穫のニンジンは同じ畑にそのままにしておくこともあります。

ちなみに、ニンジンはネズミの大好物。冬越しするとき、人気があまりない畑にあるニンジンはネズミに食べられてしまいます。そのため種取り用のニンジンは大根よりも多めに残すようにしています。


早春~初夏

そのまま冬を越え、早春の頃になると根元から少しずつ新しい葉が出てきます。
葉が増えてきて、徐々に真ん中から茎が伸びてきて分岐します。分岐した先に花房がつき、たくさんの小さな白い花が咲きます。

咲き誇るニンジンの花

このニンジンの花!なんともきれいでアーティスティックな出で立ちで、畑の中が一気にアートな空間になります。
ぜひ一度花を咲かせてみてください!


初夏~初秋

やがて花が終わり、7月ごろになってくると花房の部分が茶色になり種ができてきます。
房が乾いてきたら房ごと切り取って、軒先などで乾燥させます。

2週間ほど乾燥させたら、新聞紙などの上で花房を指でなぞるように種を落として取り出し、ガラス瓶などに乾燥材を入れて保存します。

種には「ひげ」がついていますが、取らずにそのままでも大丈夫です。

画像上がひげなしのニンジンの種、下がひげつき


【参考図書のご紹介】



種の保管と発芽試験


種の乾燥を終えたら小瓶や小さなチャック袋、紙袋などに乾燥剤と一緒に入れ、温度変化の少ない冷蔵庫の野菜室などで保管します。湿気が多かったり暑くなり過ぎたりする場所は避けてください。

このとき品種名と採種日を小瓶や袋に明記しておきます。種にも寿命がありますが、きちんと保管していれば、使いきれなかった種を翌年に蒔いても大丈夫でしょう。

固定種の野菜の種については「野口種苗」さんのHPにさまざまな記事があるのでとても参考になります。オンラインショップもあります。野口種苗さんで種を購入すると、種袋に採種方法や種子寿命が明記されていますよ。

参考:「野口のタネ 野口種苗研究所」HPより 

野口のタネ オンラインショップ


根菜の種採りと種まきは2年越し

繰り返しになりますが、種を採る根菜の栽培サイクルはこのようになります。

ニンジンや大根はだいたいが冬越ししてから種をつけるので、翌年の春に種をまくニンジンなどには間に合いません。
そのため栽培サイクルは2年として動きます。

少しずつ自分の畑で野菜と種を育てていくと、だんだんとその畑や環境に合った野菜になっていきます。
まさに「うちの大根」になっていくのですね。

そんなことができるのも、家庭菜園で固定種野菜を育て続ける楽しみのひとつだと思います。


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