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7点【感想】最低賃金 生活保障の基盤(日本弁護士連合会貧困問題対策本部 編)
オススメ度 7/10 最低賃金の現状と目指すべき姿について学べたから
一日に8時間,週に5日,つまり週40時間,きっちりと働いて,それで生活できる.当たりまえに思えるけれど,なかなか実現できていないこのテーマ.この宿題を終わらせ,格差と貧困が深刻化する現状を解決するカギは,最低賃金という仕組みが握っている!? 制度の初歩から,海外の事例まで幅広く紹介.
(出版社HPより)
▷基本データ
(さいていちんぎん せいかつほしょうのきばん)
【著者等】
日本弁護士連合会貧困問題対策本部 編
(にほんべんごしれんごうかいひんこんもんだいたいさくほんぶ へん)
【出版社・レーベル】
岩波ブックレット
【読む前の独断と偏見によるジャンル】
最低賃金を上げる必要性がわかる本
【その本を選んだ理由】
貧困対策として最低賃金を上げることがとても大事とよく聞くから
【貸出日・購入日】
2020/12/9
▷この本から学べたこと
最低賃金で働くと、フルタイムやとしても、とてもじゃないけど生活できひんて話をよく聞くやん?
せやけども、最低賃金について全然知らんから勉強したいと思ってこの本を借りてん。
1.そもそもなぜ最低賃金が必要なのか
最低賃金が法律で定めらていないと、より安い賃金で働こうとする労働者が出てきて、立場的に強い使用者に食い物にされるから。
せやから日本でも1959年(昭和34年)、高度経済成長期の前半、岩戸景気の時に本格的に導入されてん。
ほんで、憲法25条の生存権を根拠として、「契約自由の原則」に修正を加える形の制度であり、憲法27条「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」となってるから最低賃金法があるってことらしいねん。
2.現在の日本の最低賃金の状況
先進国の中では非常に低い水準で、フルタイム労働者の賃金の中央値を100とした場合は40%しか無くて、フランスやったら62%、その他ヨーロッパ諸国や韓国も50%は超えてる状態やねん。
ほんで、金額自体も、円にして諸外国は1,000円を超えてるけど、日本は地域別に決まってるねんけど、それを均すと900円弱で低い水準。
せやから国連の勧告でもその平均水準の低さに懸念が持たれてるねんて。
3.なぜ最低賃金が低いのか
男性世帯主が家計を支えて、妻のパートタイムや学生アルバイトなどが「家計補助」として見なされてたから、最低賃金の低さが社会問題と見なされず、放置されてきてん。
4.なぜ最低賃金の低さが問題となっているのか
単純に言うと新自由主義による「非正規雇用」の拡大が原因やねん。
1981年では労働者の8人に1人が非正規雇用やってんけど、2007年の時点では3人に1人が非正規雇用になって、2008年のリーマンショックによる派遣切りにより生活できなくなった人がクローズアップされて、問題が可視化されたりで、一時は減ったけど、結局2018年では、5人に2人が非正規雇用と拡大している状態。
つまり、非正規雇用が生活賃金になってる人がどんどん増えてきて、最低賃金のままでは、まともに暮らせへんってなってるねんな。
実際、正規雇用の人が世帯主の世帯の貧困率が数%しかないのに対し、パート・アルバイトの人が世帯主の世帯では貧困率が40%を超える状態。
5.最低賃金の低さが生む問題
まず、生活が安定しないので結婚できない・しない人が増えてきている。実際の2010年時点のデータとして、30歳代の男性の未婚率が、正規労働者の場合30.8%に対し、非正規労働者の場合76.5%もある。
また、非正規労働者の6割を占める女性の場合、35歳の壁と言うのがあって、これを超えると急に派遣契約を結びにくくなったり、シングルマザーのダブルワーク・トリプルワークによる長時間労働も問題になってる。
生活保護と最低賃金の逆転現象も生じていて、何でかって言うと、生活保護の場合、医療・介護扶助があって、税金の免除もあるけども、非正規労働者はこれらを支払わんとあかんから実質的な収入が生活保護基準未満になってまうねんな。
6.最低賃金の決定方法の問題
決定方法は、
中央最低賃金審議会が統計データや労使のヒアリングをもとに目安を示す。
→目安を参考にして、各都道府県の最低賃金審議会が意見をまとめる。
→意見を踏まえて各都道府県の労働局長が金額を決定。
という流れやねん。
ほんで肝心の審議会委員は中央も各都道府県も「労働者を代表する委員」(労働組合の役員等)、「経営者を代表する委員」(経営団体の役員等)、「中立的な立場の委員」(学者や弁護士等)という同数の三者で構成されるねんけど、労働者代表も大手企業の労働組合出身者が選ばれるため、非正規労働者の声や実態がどこまで反映されているか疑問があると言われてるねんて。
しかも、中央および地方最低賃金審議会の多くは実質的に非公開となってて、審議の内容や過程を検証することが困難になってるって問題もあるらしいわ。
7.最低賃金の地域差の問題
2006年時点では最大と最低で109円しか差がなかってんけど、2019年時点で最も高い東京都の1,013円に対し、最も低い15県は790円しかなくて、何と223円もの差があるねんけど、この格差は年々と拡大してるねんな。
ほんで、これがどんな問題を生んでるかと言うと、地方の若者の県外就職が増加して人材確保が困難になってるねんな。
しかも、実際の生活費として地方でも都市部でも変わらんと言う話があって、何でかって言うと地方では公共交通機関が貧弱で逆に自家用車の費用がかかるとか、通信費や教育費は変わらへんし、むしろ都市部の大学に進学して、アパート代とか通学費用が余計にかかるってのもあるらしいわ。
この他にも外国人労働者も都市部に集中してしまうっていう問題も懸念されるらしい。
せやからこういう問題もあるし、「労働者の対価に地域格差を設けることは矛盾する」という考えもあるから全国一律最低賃金制度の確立に向けた動きが加速しそうらしいわ。
8.最低賃金の大幅引き上げの課題
「最低賃金の大幅引き上げは企業の経営を圧迫し、経済が悪化する」という反対論が日本では繰り返されている状況やねん。
せやけど、アメリカでは最低賃金の引き上げがむしろ地域経済に好影響をもたらしているという研究論文も数多く発表されてるらしい。
また、アメリカや韓国では、一定の規模以下の企業に対して、社会保険料等の減免が行われているらしいから、日本でも同じように中小企業に対して、健康保険料、労働保険料、厚生年金保険料等の事業者負担分を減免するべきやねんて。
そのほか、現状の日本にある「業務改善助成金」という援助策も、適用範囲が狭いなどが理由で十分に活用されてないから制度の改善が経営者からも要望されてたりしてて、やっぱり経営側へのバックアップも整える必要があるらしいわ。
その他、下請け業者が元受けから締め付けを受けて、賃金上昇分を価格に上乗せしにくいらしいから下請け業者への保護制度も必要とのこと。
▷感想
自分自身は、非正規雇用で働いたことがないから、いろんなところから得た知識での判断になるけど、やっぱりこの本が言うように非正規雇用で働く人が増えてきている現状では、最低賃金を引き上げんことには人間らしい生活ができないとは感じた。
本の中では、最終的に時給1,500円を目指すっていう話で、その財源については特に触れられてへんかったから、個人的な補足になるねんけど、最初は政府が補助金等で差額を支えるべきやと思う。
最近読んだ『MMTによる令和「新」経済論 現代貨幣理論の真実』(藤井聡)によると、国債を新たに発行して残高が増えても日本では財政破綻することはないという話やから、財源は問題なく確保できると思うし、こうすると民間で循環するお金の総量が増えて、経済が発展する良性インフレが起こるはずやねん。
せやから最低賃金の引き上げは、中小企業が潰れて地域経済が滅茶苦茶になるんじゃなくて、労働者全体の所得が増えて、消費が増えて、企業も儲かって、税収も増えるって好循環になり、日本全体の経済が再浮上するきっかけになるからやらんとあかんと強く思ったわ。
やっぱりお金に困ると心まで貧しくなりがちやから、みんながお金に困らん社会を作らんとあかんよね。
ほな今回はこんなもんで、また!
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