【超短編小説】愛するセフレよ、お誕生日、おめでとう。
お誕生日おめでとう。
今日は私が大好きなあなたのお誕生日。
おそらくあなたが、もしくはあなたが信仰している
あの人と同じお誕生日。
それは私にはどうでもいい。
今日は、私の大好きで仕方がない、あなたのお誕生日。
思い返せばもう、あなたのお誕生日は知り合ってから3回目。
私は3年も片思いしていたということ?
それはそれでとても素晴らしいことでもあるし、
悲しいことだと思う人もいるかもしれない。
私はずっと、あなたのことが好き。
出会って、本当に一瞬で、恋に落ちた気がする。
それは一目惚れなんだと思う。
初めて会った時、あなたは可愛いけれど飄々としていて
少しだけ自信がなさそうで、
だけどそれは私に対しての自信のなさではなくて。
あなたはずっと、近い場所にいたのに、
とても遠いところにいる感じ。
3年間、私たちは何をしたわけでもない。
一緒に食事をしたこともない。
一緒に映画を見たこともない。
一緒にスポーツをしたこともない。
一緒にしたことあるのは、小さいお仕事だけ。
あとは、ほんの少しの触れ合いと、おしゃべり。
私たちを繋いでいるのは、触れ合いだけ。
所詮はセフレ。セックスしかしない。
泊まることもない。旅行にも行かない。
ご飯も食べない。
ちなみに私、全然セックス好きじゃない。
あなたと居られるから、セックスしてるだけ。
だって、セックス無しだったら
あなたは会ってくれないから。
セックスしかしない私たちだけど、
3年も、関わり合っている。
距離が離れても、変わらなかったことに、
ほんの少し驚いてる。
私に出会って、あなたは信じられないくらい
壁にぶつかった。
私のマイナスを全部引き取ってくれたのかと
思うくらい、良いことがなかった。
だけど、私はそのあと、あなた同様、運気がダダ下がり。
お互い下げちんで、下げマンなのかな、と
いまだに考え込む。
あなたは、今日はお誕生日。
昨日は連絡をくれたけど
今日は一切連絡がない。
「大切な誕生日の時間を、お前に使うことはないよ」
と言われてる気がしてしまうの。
セフレが故に、思考が残念になっていくの。
LINEにお誕生日を登録しているよね。
恥ずかしくないのかな、なんて思ってしまうの。
だってあれって「お祝いしてください」って
言ってるようなものじゃない?
あなたはきっと私のお誕生日を知らないでしょう。
結構すごい人と同じなのよ。
お誕生日おめでとう。
私の大好きなひと。
メッセージを送る勇気がないから
ここで、ひっそり、お祝いするね。
私の大好きな、世界一大切な、セフレ。
お誕生日おめでとう。