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ホークスが取り組むデータサイエンスの世界(基礎編)

こんにちは、マーケティング・コミュニケーション部の中澤です。

今季、ホークスは4年ぶりのリーグ優勝を達成することができました。
ファンの皆様の熱いご声援、ありがとうございました。
惜しくも日本一にはあと一歩届きませんでしたが、来年こそは!という強い決意を胸に、球団職員もみんなで次の準備へ動き始めています。

11月24日(日)に開催したファンフェスティバルでは、来季の取り組みを発表しました。

2025年、ソフトバンクホークスは誕生20周年を迎えます。

周東佑京選手会長が記念ユニフォームを着用してお披露目

ソフトバンクホークスとして2005年シーズンからプロ野球に参入後、この20年間で7度の日本一、リーグ優勝を成し遂げてきました。
チーム強化の裏側には、選手のたゆまぬ努力はもちろんのこと、スタッフのサポートも欠かせません。

中でも近年ホークスのチーム作りを支えているのは、トラッキングデータ分析や動作解析など最先端技術を駆使したチーム強化に取り組むデータサイエンスチーム。裏方で日々数値と向き合い、選手たちの技術強化や課題改善に向けた橋渡し役を担う精鋭たちです。

今回のnoteでは、日々選手たちが練習に明け暮れる傍らで、ホークスではどのようにデータ活用が行われているのか、あまり表に出る機会のないデータサイエンスの世界をご紹介します。

※10月12日(土)HAWKSベースボールパーク筑後で開催された「HAWKSデータサイエンス業務体験」の内容を元に構成しています。

■野球におけるデータサイエンスの歴史

まずは、ホークスの話を始める前に、野球界におけるデータサイエンスの歴史を振り返っていきましょう。

説明してくれたのは、チーフアナリストの吾郷 伸之( あごう しんじ)さん。

2000年代:職人時代 「収集と整理の時代」

野球界でデータ活用がはじまった創世記。スコアラーが「データを取って、作る」までを行う。限られた時間と環境の中で、収集したデータを整理してチームに提供していた時代。

「当時は、球場に出向いて、バックネット裏で試合を見て、データを直接収集していました。今よりかなりローカルな環境で、データの収集だけで大きな労力がかかっていました。」
吾郷さんが披露してくれた手書きの資料からは当時の仕事ぶりをのぞき見ることができます。

当時の分析内容イメージ

担当者の「目」だけが頼りの、まさに職人技といえる仕事だった時代です。

2010年代:映像革命期 「収集と整理」から「分析」の時代に

テクノロジーの発展(クラウド、モバイル端末の普及)により、データは取り込みによる自動生成、クラウドで一元管理できるように。場所を選ばず作業を行えるようになり、収集の労力が減った分、「データから何を読み取るか」という分析に主眼が置かれるようになった時代。

「今のように中継で全試合を放送するようなったのは2007、8年ぐらいから。映像環境の良化により、効率とデータ精度が格段に向上していきます。この頃にはデータを取ることではなく、分析してどう活用するかが重視されるようになっていきました。」

ホークスは2005年シーズンから「福岡ソフトバンクホークス」となり、全選手、チームスタッフにiPhone、iPadの端末を配布するなど、他球団に先駆けてデータ活用の推進に取り組んできました。
今のホークスが誇るデータサイエンスによるチーム強化の礎となっている時代です。

デジタル化により野球界を取り巻く環境も大きく変化

2020年代:「活用と取捨選択」の時代に

トラッキングデータの有効活用が始まり、扱えるデータの総量が大幅に増加。膨大なデータを活用する力、必要なデータを見極める力、さらにそれを伝える力が不可欠な時代への転換期。

テクノロジーの進化は留まることを知らず、トラックマンHawk-eyeといった新たなデータ取得機器が登場。今まではスコアラーの主観で伝えていた軌道や球種をデータから表現できるようになり、野球界におけるデータサイエンスの進歩は飛躍的に加速。
テレビ映像だけでなく、トラッキングデータから得られた情報からもデータの収集を行えるようになったことで、球種やコース、打球速度など客観的な評価をもとに分析ができるようになりました。

「例えば、大津投手のように8種類の変化球を操ったり、2つの球種の中間をいく『マッチェ(まっすぐ(ストレート)とチェンジアップの中間球)』のような球種を操る投手も現れています。判別にはトラッキングデータが欠かせません。」

Hawk-eyeによるデータ取得画面

分析機器の進化はさることながら、時代を追うごとに選手のスキルもより高度に進化を続けており、チーム強化にとってデータサイエンスは欠かせないものとなってきていることがわかります。

体験会では、参加者が実際に試合映像を見ながらPCへのデータ入力体験を行いました。

「作業そのものは簡単ですが、遅れず、正確にやることが大事。映像と合わせてトラッキングデータを見ながら、スムーズに打ち込んでいきましょう。」

吾郷さんがそう話すわけは、映像と入力時間がリンクしているため、分析を行う自分たちはもちろん、選手やチームスタッフが後で映像をチェックする際にずれがないようにするためだそう。

収集の精度を保つことが、その後の分析の精度を高めることにつながるのだと、データ分析の基盤となるデータ収集の大切さを説いていました。

参加者へデータ入力のコツを教える吾郷さん

■福岡ソフトバンクホークス IT化の歴史

このような野球界を取り巻く環境も踏まえ、ホークスIT化の歴史も辿っていきましょう。

2005年に誕生した福岡ソフトバンクホークスは、率先してテクノロジーの活用によるチーム及び選手強化・育成環境の構築を推進してきた球団でもあります。

2009年に選手・スタッフへiPhone、iPadを提供し常にデータを閲覧できる環境を整備。2010年代にはトラッキング、スタッツ等の詳細なデータを活用できる環境を整えると、2020年にはバイオメカニクス機器を導入しデータサイエンスに特化した「R&D(Research and Development)部門」を新設するなど、膨大なデータを活かしきるための組織改革にも着手。

2011年にプロ野球界で初めて3軍制を導入したチームは年を追うごとに拡大を続け、昨年からは4軍制が始動するなど、育成環境の拡大は留まるところを知りません。

データサイエンスによるチーム強化に取り組む体制を整えるとは、どういうことか?
もう少し踏み込んで考えると以下のように要素を分解することができます。

・データを取得・活用できる設備と人材の整備
・データをチーム強化に活かすためのプログラムの導入
・データを元に選手がトレーニングに励む環境の構築

単に設備を整えるだけでなく、最新機器を扱える人材がいることや、集めたデータを効果的に活用できる戦略の設計が、チーム強化のカギを握っているといえます。

ホークスのデータサイエンスチームを束ねるチーム戦略室の小山亮室長は、
「人の育成は終わりがなく、ずっと続けていくこと。現状に満足せず、設備や人材への投資により組織としてのデータ活用を広げていきたい。そして、今後のさらなる拡大のためには、優秀な人材の発掘が必要不可欠。従来のようなコネクションからの採用ではなく、ホークスが目指していることや行っている取り組みを理解して、興味を持ってもらう人を増やしたい。」
とデータの活用に秀でた新たな人材の発掘に向けて、今後の意気込みを語ってくれました。

テクノロジーの進化はこの先の未来もさらに進んでいくことは間違いないでしょう。
常に新たな機器や手法の導入により、更なる発展の可能性を模索するべく、ホークスのデータサイエンスチームは挑戦を続けていきます。

体験会参加者へ講義をする小山さん

以上、今回のnoteでは、ホークスが取り組むデータサイエンスの世界を簡単にご紹介しました。

次回のnoteは実践編
ホークスのチーム作りにおいて、どのような環境で選手育成が行われているのかを具体的に探っていきます。お楽しみに!

(マーケティング・コミュニケーション部 中澤佑輔)

★ホークスIT化への取り組みはこちらのページでも紹介しています

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