ホークス・Jリーグコラボの舞台裏(前編)~キーマンに聞くファイト!九州の未来~
こんにちは、マーケティング・コミュニケーション部の中澤です。
ホークスが九州を元気にする活動「ファイト!九州」。
2021年から九州各地でのイベントデーを開催し始めて、4年目となる今年。
新たな展開が生まれていることをご存知でしょうか?
それは、九州各地のJリーグクラブとのコラボグッズの発売。
ホークスと九州・沖縄を拠点に活動する全9クラブが集合した特別デザインのグッズを販売するなど、異なるスポーツチームが一丸になった異色のプロジェクト。
北九州市民球場&みずほPayPayドームで開催されるファイト!九州デーを前に、コラボ実現のキーマンとなった日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の竹内亮さんをお招きし、ホークス社員と共に舞台裏を語っていただきました。
このnoteを読んで、九州に生まれた新たな熱気を感じてください!
<ファイト!九州・Jリーグコラボ座談会>
長崎での出会いから生まれたコラボ企画実現の裏側
ーーコラボに至った経緯は?
H武内:去年のファイト!九州の活動でV・ファーレン長崎さんの試合でブースを出したり、マスコットコラボを実施した際に、偶然Jリーグの方がいらっしゃって挨拶をさせていただいたことがきっかけです。
その時は「また何か一緒にできたらいいですね」ぐらいの感じで終わっていたのですが、昨年末に今年のファイト九州の企画を考えていた時に、MD担当の南さんと「Jリーグとか、スポーツコラボのグッズも作ってみたいよね」と雑談レベルで話があがりました。そこで、「じゃあダメ元で1回聞いてみましょうか」と長崎で出会った担当の方に連絡したら、「ぜひやりましょう!」と話に乗っていただいて、ミーティングをして、トントン拍子に進んでいって、今に至ります。
ーー人の縁で話がつながっていった
H武内:はい。そもそもは昨年、長崎興行の関係者を訪問した時に、県のスポーツ振興課やスポーツコミッションの担当者を紹介いただいたことから始まっています。どんな連携ができるか話をしている中で「ヴェルカ(Bリーグ)とかV・ファーレンともなんか一緒にできることがあったらやりたいですね」と言っていただいたんです。ヴェルカはシーズンが終わっちゃっていたので、まずはV・ファーレンと何か一緒にできることがないか、繋いでもらったところがスタートでした。
ーーJリーグ側ではこの話をどのように受け止めていた?
J竹内:たまたま長崎で出会ったメンバーがクラブサポート部(各Jクラブのチームに1人の担当者がついて、マーケティングやメディア露出などのサポートをしている部署)でV・ファーレン長崎さん、アビスパ福岡さんの担当で、私がギラヴァンツ北九州さんの担当をしていました。
長崎や福岡をはじめ、九州を知るためにも、メディアの方々など各所にご挨拶をしに行くのですが、皆さんが口々に「ホークスではこうしているよ」みたいな話をお聞きすることが多くて、メディアの皆さんの根底に「やっぱり九州ではホークスさんが根付いてるな」と実感していました。
福岡のメディアの皆さんにアタックする担当としては「ホークスさんの露出のシェアを奪いに行くのは無理なので、できれば共存する形を探っていけないか?」と今後の戦略を考えていた時にちょうど今回の話をいただいたので、前向きに話が進んでいきましたね。
ーーJリーグとしても、ちょうど機会を探っていたタイミングだった
J竹内:はい。私たちとしては、この話がなかったとしてもどうにかホークスさんとお会いして、 九州全体でのコラボとか、包括で何かできることはないか探していたところだったので、たまたま長崎で先駆けてやっていただいていたタイミングとご縁がばっちりかみ合っていました。
ーーこのような野球チームとのコラボは今までに例があった?
J竹内:地元チーム同士で名古屋グランパスと中日ドラゴンズさん、横浜F・マリノスと横浜DeNAベイスターズさんのようにコラボしているところはあります。ただ、やっぱり福岡でいうと、本当にホークスさんのシェアがめちゃくちゃ強いので、アビスパやギラヴァンツとしてもなかなか打診できないし…ここは今まで特にやれていなかったところかなと思います。
ーー今回はチーム同士ではなく、9クラブを巻き込んだコラボ。どうやって実現できた?
H武内:やっぱりJリーグのクラブサポート部の存在が大きいです。もし我々が各クラブさんに個別にコラボの話をお願いしに行っていたら、うまく話がまとまらなかっただろうなと思います。おそらくそのサポートがなければ、「今年は長崎とどこかもう一つ。来年もうちょっと増やそうか」というように少しずつしかコラボ先を増やせなかったはずなので、Jリーグさんが間に入って全クラブを取りまとめてくれたおかげで実現できました。
ーーグッズ以外にイベント連携もしているが、すべてJリーグが絡んでいる?
H武内:熊本のファイト九州デーで、ロアッソ熊本さんに来てもらうなど、個別のイベントは各チームの方と直接やり取りさせていただいています。
一度Jリーグさんに間に入っていただいたことでホークスとしても個別のクラブと繋がりができてやり取りしやすくなっていますし、どのように話を進めるか、まず相談してからハンドリングしてもらえるので、すごく助かっていますね。
ーー多くのチームの意向を揃えて1つにまとめるのは苦労があったのでは?
J竹内:いちクラブとしてのパワーを考えると、ホークスさんとのコラボなんて夢のような話だったので、基本的にどのクラブからも反対はなく、良いリアクションを得ることができました。
細かいところでデザインの微修正の要望などはありましたが「包括でやることで実現できるんだよ」ということは皆さんにご理解いただいていたので、反発は本当になかったですね。Jリーグとしても過去にいろんなIPとのコラボでノウハウを持っていて「このクラブからはこういう要望が出るだろうから前もって伝えておこう」というような配慮ができたので、上手く取りまとめることができたのかなと思います。
ーーサポーターの反応は?
H武内:コラボを発表した際のSNSで好反応な方が多かったのはすごく印象的です。特にアビスパサポーターの方からは「やっとできるんだ!」みたいな声もあり、少なからずお客さんに求められていたことをひとつの形にできたのは嬉しい瞬間でした。
J竹内:全クラブに聞けている訳ではないですけど、ロアッソ熊本さんの来場者アンケートにも結果が出ていました。イベントのことを聞いているのに、この時はコラボグッズが好評という回答ばかり集まってきたので、QとAが合っていないんですけど(笑)。それくらい新しいグッズに対する反響はありました。
ーーJクラブの方に喜んでもらえるのは、ホークスとしても嬉しい
J竹内:選手グッズは毎年入れ替えられるんですけど、定番グッズは取り入れるエッセンスも限られていて、デザインも割と似てきちゃうんです。他のクラブも入っていたり、ホークスさんとのコラボでグッズのデザインのやり方がいつもと違ったりするのは相当目新しかったようで、すごく良いお声をたくさんいただきましたね。
H武内:ちょっと脱線するかもしれませんが、僕の感覚ではJリーグの同じ地域にあるクラブってあまり関係性が良くない(笑)。僕は大阪出身ですが、関西のチームのサポーター同士はあまり仲が良くないイメージがありました。なので、九州もそうなのかなと思っていたのですが、先日長崎に行ったら、全クラブのエンブレムが揃ったタオルが1番先に売り切れているんですよ。
九州の人たちはみんなアットホームというか「九州をみんなで応援してるよ」というあたたかい雰囲気を感じたので、地域性も今回のコラボに賛同していただいた要因なのかなって気はしますね。これを関西でやりましょうって言ったら、もしかしたら売れないかもしれません(笑)。
J竹内:そうですね。あんまりそういう敵対心みたいなものはないんだろうなと現場レベルで感じました。元々「九州だJ!」という、九州全体で盛り上げていこう!というJクラブ自体のマーケティング活動もあったりするので、仲も良いし、連携もしやすかった地域かもしれないですね。
九州全県を揃えることにこだわる。デザインに込めた想い
ーー今回のコラボでこだわった点は?
J竹内:どこのクラブも欠けないっていうところは絶対に守りたかったです。九州の中でもホークスさんとのつながりが薄い地域では「なぜコラボするのか」という理解を得るのが最初は難しかったところもあります。個別の事情で入れられないチームが出てくる可能性もゼロではなかったのですが、どこかが欠けると九州全体でコラボしている意味がなくなってしまうので、各地の足並みを揃えられるように意識して動いていました。
H武内:ホークスとしては「ファイト!九州プロジェクト」と言いつつも、現状ではすべての県で試合ができていないもどかしさもあります。佐賀や大分、沖縄では試合ができていないので、今回Jリーグさんのお力を借りてアプローチできたのは、すごくありがたかったです。
ーーグッズのデザインについてのこだわりは?
H南:全部で9クラブあるので、共通のデザインの中でクラブカラーをそれぞれ反映していくのは難しくて苦労しました。どうしたらうまくまとめられるか思考錯誤して、このようなホークスとJクラブ名のダブルネームとロゴをしっかり出しつつ、それぞれのカラーを活かしたデザインに落ち着きました。
クラブ名の並び方だったり、ロゴのサイズ感は、9クラブを平等に扱えるようにJリーグの竹内さんにアドバイスいただきながら調整を重ねました。
H武内:僕はこのグッズがめちゃくちゃ好きなんです。
J竹内:このグッズ(クラブ名タオル)でいえば、どこかのロゴがフルで4つも入っているのに、うちは全部切れてますという指摘を受けたりもしましたね。クラブからしたら我が子なので、そういう気持ちもわかりますよね。あとは、どうしてもクラブカラーが存在しているので、全体は白や黒をベースにして、個々のクラブとホークスさんのロゴは、各クラブのカラーが出せるようにかなり細かく直していただいて、みんなが満足できるデザインに仕上がったと思います。
H南:タオルマフラーは巻いた時にどちらのロゴもしっかり見えるようにしていますね。各クラブの細かな温度感はたぶん僕らでは吸い上げられないですし、これまでの経験上「このクラブはこう言うだろうな」とかも教えていただきながら進められたので、そこは本当にありがたかったです。
J竹内:デザインとして全体の足並みを揃えるために、クラブの通常ルールと異なる部分は納得をしてもらわないといけないこともありました。一方で、クラブとして大切にしていることはできる限り担保してあげられるようにしたり、細かな調整をしている感じでしたね。
裏側の話をすると、昔Jリーグでグッズ制作を内製化していた時期があって、その時のデザイン担当がたまたま九州複数クラブのクラブサポート部の担当で、九州の知見があったんです。だから各クラブの要望はある程度把握できていて、スムーズに進めることができました。
ーーコラボによるメリットを感じた点は?
H武内:ホークスのプロモーション目線では、やはり各地のメディアに取り上げていただけるネタになるところ。地元メディアを訪問した際に、紹介をするとめちゃくちゃ反応が良くて、「こんなのもやってるんですか?」と一番食いついてもらえたのはこのコラボグッズの話でした。
福岡から他県に出ていった時に、ホークスだけではそこまで取り上げてもらえないけど、長崎だったらV・ファーレンさん、宮崎だったらテゲバジャーロさんといったように、地域に根付いているチームとコラボすることで、その県の中により入り込んでいけるんです。
J竹内:その点はJリーグ側も非常にありがたくて、我々クラブサポート部はメディア露出の支援も一緒にやらせてもらってますけど、なかなか結果報道以外でどうやって扱っていただくかは、きっかけ作りを悩まれている部分もありました。こういう目新しいコラボだと、同じく食いつきは良くて、「前に言ってたコラボ企画、どうなりました?」みたいな話をメディア様から問い合わせをいただいたりしたので、メディアの注目度も高かったように感じます。
以上、前編では今回のコラボ実現に至った経緯とデザイン開発に込めた担当者の想いをお伝えしました。なぜホークスと九州のJクラブでタッグを組むことができたか、裏側のやり取りを垣間見ることができたでしょうか?
後編では、野球とサッカーそれぞれの立場から見た競技特性の違いや相互層客の可能性について迫ります。
後編はこちら ↓
(取材・文:マーケティング・コミュニケーション部 中澤 佑輔)
■今後の「ファイト!九州デー」開催日程
6月21日(金)対千葉ロッテマリーンズ@北九州市民球場
6月23日(日)対千葉ロッテマリーンズ@みずほPayPayドーム
8月28日(水)対オリックス・バファローズ@長崎・ビッグNスタジアム
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