社長の飼い犬とケンカして転職した

「(市場で)成功することが目的」「いい作品を作ることが目的」というけれど、たいていはそれは正しくない。

たいていは、市場で成功することが目的ではなく、自分がなんらかの成功するのが目的だ。
ただひたすらにユーザーに受ける作品の事だけを考えられる人間がいたら気持ち悪いと思う。

そして、前にいた会社では、これが問題になって転職した。

上司は口では「市場で成功する作品を作れ」だったけれど、現実には市場での成功の前に、社長に自分が気に入られる絶対の目標があった。
だから社長の意に沿わないと彼が思うゲームは絶対に許可を出さないし、作っている途中で、社長の意に沿わないと少しでも感じたら平気でプロジェクトを捻じ曲げる。
つまり、何か一言社長が「今、こんなゲームが受けている」なんて話をすると、すぐにそれをゲームに取り入れろという。どんなムチャだろうと関係なしだ。
これに振り回されてスタッフが疲弊して辞めるし、やる気をなくすしで、士気が下がってしょうがなかった。
だからリーダーになったとき、それを変えようと思った。

徹底的に彼に「これでいいよね」と確認を取り、すべてに彼のOKを取りながら仕事を進めたのだけど、やっぱり社長の一言で情けない犬のように尻尾を振ってまたひっくり返した。

それで「社長に具申するのも、あなたの仕事でしょう」と言ったら、彼は僕に凄く低い評価をつけた。ついでに書けばチームをビルドしたことも評価されなかった。
もちろん、こちらもやる気がなくなっていたので、転職した。

クソゲーができても、それで社長の覚えがめでたくなるなら、それは彼にとっての成功。
それがひいては会社にとっての不利益になろうと、ユーザーの不利益になろうと、短期的には成功だ。
そういう上司とは、とても仕事がしづらいし、出来るだけ避けたいなあとは思っているけど、作品を信じて、上の意見を無視することは難しい。

結局、たいていは純粋にゲームが市場に受けるかの前に上司に受けるか=自分が評価されるかの社内を向いたコトが、政治がある。

それに、そこで妥協して調整した方が結果的に社長のお気に入りになって、予算が増額され、プロモもしてもらえて、全員幸せの可能性だってある。

これは全くクリエイターにとっては忌々しいし難しい問題だけど、いくら作りたいからと言って、ただの飼い犬になってはいけないと思うのだ。

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