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#64 建築家なしの建築

"建築家なしの建築"を読了。
前回の本が面白かったので、続けてルドフスキーの著作を手に取ってみた。

写真がメインな本で、ページをめくりながら「ほー、こんなに自然と柔軟に共生しながら人は自分の暮らす場所を形成できるのか〜」と感動しっぱなしだった!

直前に読んでいた「人間のための街路」に記載があったように、テクノロジー(前著は「自動車」だった)の発達に伴い人のための街路/まちだったところが、テクノロジーのためのものになってしまうもの寂しさ/窮屈さを思い出しながら本書をじっくり読むことができた。

特に印象に残ったのは下記の内容。

  • 共同体建築は、二、三の知識人や専門家によってではなく、伝統を共有し、経験の共同性に基づいて働く、全住民の自発的継続的な作業によって生み出された共同芸術である

  • 新しい発見や現存する手段の改善が、必ずより高い価値とより大きな幸福をもたらすと期待するのは全く単純すぎる考え方だ。文化が現実的、具体的な進歩によって崩壊することもあると言うのは決して逆説ではない

  • ルドフスキーの都市論の核心にあるのは極めて現世的な享楽主義の人生哲学である。一日一日を、精神的なものも感覚的なものも含めて充実させ、物質的な面ではむしろ浪費を拝しつつ、生活を楽しもうとする思想である

スマートイナフシティの本とも一部連動するような内容で面白かったな〜。
「人間のための街路」と読むと良書。

以下、学びメモ。

ーーーーー
・風土的な建築は流行の変化に関わりがない。それは完全に目的に適っているのでほとんど不変であり、全く改善の余地がないのである。
・正統的建築史の中では、建築家個人の仕事に重点が置かれているが、ここでは共同体による事業が強調される。
→★ピエトロ・ベルスキは共同体建築を定義して、「二、三の知識人や専門家によってではなく、伝統を共有し、経験の共同性に基づいて働く、全住民の自発的継続的な作業によって生み出された共同芸術である」と述べた。★
・★ホイジンガーは「新しい発見や現存する手段の改善が、必ずより高い価値とより大きな幸福をもたらすと期待するのは全く単純すぎる考え方だ。文化が現実的、具体的な進歩によって崩壊することもあると言うのは決して逆説ではない」と言っている。★
・事例の一部→ムユーユレイの円形劇場、オルデクの死者の都、バンタリカの穴居人の街、河南省/山西省などに渡る地域で約1千万人の人々の黄土へ掘り抜いた住居/ドゴンの断崖居住者/水の都市/島根の囲い
・(解説)ルドフスキーは学者としてのアカデミックなものというより、一市井人としての京楽的なものであり、それが彼の叙述に魅惑と力を与えているように思える。
→★彼の都市論の核心にあるのは極めて現世的な享楽主義の人生哲学である。一日一日を、精神的なものも感覚的なものも含めて充実させ、物質的な面ではむしろ浪費を拝しつつ、生活を楽しもうとする思想である。★ 

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