20240301「蓄えた水」

充した自分が
溢れたなら
零れたそれを
何かに預け
その何かは
誰かが受け取るのだろう
足りなくなったら
また与えてもらって
十分に充たす
からからになって
涙も出ないなら
次はきっと
あなたの番
存分に吸収して
蘇るのだろう
溢れるくらいになったら
そのお零れを
わたしに与え
受け継ぐのだろう

なくなりはしない
どれもが変化して行くだけ
見えなくなっても
見えなくなっただけで
まだ在ってしまっている
忘れっぽいから
思い出すのも遠退き
わたしを呼んで
わたしに跪く
どれもが同等なら
そんなに気にしなくともいい
ぞんざいな言いなりになったとしても
そのわたしはわたしではないかもしれない
きっとあなたは聞くだろう
声もしてないのに
届く誰かのそれ
滑らかに沈む
沈黙の理り
どれもが生きて在る

蓄えた水
ずっとそのままでは
腐るだろうから
循環させ
濁りを流し
透き通る
眼に見えない湿度でも
既にそこに在って
体温で調整している
雪の結晶を費やし
からからに乾いた土地にも
やがて雨が降る
灯台の突端で
座って見てるのは
一体誰なのだろう
深海からの手紙
もう一度濡らして
溢れる涙は
どの海に注がれるのだろう