年上のあたしと年下の君
学生だった頃。
夜の仕事と酒に溺れていた私は、毎日違う男と出会って毎日違う人と遊んで、仲良くもないその日暮らしの女友達とつるんでは愚痴り、その日、その瞬間に精一杯に輝きを感じる事に必死になっていた。
彼と出会ったのは夜の街で
ロクな出会い方じゃなかったのも引っかかっていたからか、
3つも年下の離れた彼のことを、異性として見ることはできなくて
一度も体を重ねた事はない。
彼はそれでもいいからと
何度も会った。
死ぬほど大事にしてくれた。
ただ、ただ想ってくれた。
体の関係がないだけで、
ただ仲のいいカップルと同じ事をした。
ご飯を食べて映画を見て夜中に花火をして、二人乗りをしてフラフラして、手を繋いで散歩して、花火大会も行った。
「なぁ、ほんまに好きやで。
付き合ってや。だめ?」
「答え、、聞きたい?言おうか?」
「いや、、
やっぱやめとく。」
「分かった。」
「でも、俺はずっと変わらんで。ずっと好きやで。」
「.....そっか、」
そっけなく私の背中に顔を埋める彼を感じながら、特に何も感じる事もなく携帯の意味のない無駄でしかない、ただ流れ行くSNSに目を戻す。
このやりとりを何度しただろう。
彼はどんな気持ちで私の背中に顔を押し付けたのだろう。
彼の熱い吐息がいつもより長く私の背中に感じたのは、気のせいじゃなくて。
背中を向けていた事も全ては、私は気持ちに向き合えるような人間じゃなかったからで。
もっと俺を見てよ、ねぇ。
もっとちゃんと、俺を見てよ
今思えば、そんな言葉にも背を向けたのだと思う。
私はずっと彼を子供扱いした。
でも私の方が凄く子供だった。
3つ年下の彼の方がずっと大人で、ずっと器が大きい人だった。
わがままを言っても、泣いても抱きしめて頭を撫でてくれた。
ただ、そばにいられたらそれでいいと何度も私に言った。
でも、そんな彼は年上の私に安定した居心地の良さを甘えられる環境を感じているのだと、それもなんとなくわかっていた。
だけど、やっぱり100%を彼には甘えられない
私は彼と寄り添えなかったんだ。
どこか純粋な彼が許せなくて。
もっと汚ければ、もっと漬け込んでくれさえすれば。
きっと私はもっと悪い女でいられたのに。
傷つく事しか知らなかった私は真剣に向き合う事が出来なくて。
彼の恋心を知らないフリをした。
そんな自分でいいと思っていたし、体の関係をしなくても、それでも愛をくれる彼を手離せず共依存している事に快感を覚えていた。
そんな自分を第三者的に判断出来なかったのだと思う。
クズな自分に快感を覚えていたその生活に、慣れてしまっていて。
抜け出す事にさえも、
自分の精神力が削られる事を恐れた。
でもね。
不器用なりに彼を大切にして。
ほんとはね。
彼のことは好きだった。
子供な私は、それを否定し続けた。
いつか、恋人になれば体の関係もあるかも知れない。
終わりのない愛はなくて。
未来の見えない彼との関係は、私にとってただの通過点でしかなくて彼だけのために割く時間も、彼との関係性のための名前も必要ないって思ってた。
今、私の隣には結婚を前提に付き合っている彼氏がいて、将来が見える大切さを噛みしめる。当たり前の幸せが、刺激なく通り過ぎていく。
年下の彼のラインは
1年半くらい既読をつけていない。
それでも今でも彼からたまに連絡がくる。
「なぁ、会いたい」
既読のつかない私のラインにメッセージを送る彼の表情はどんなだろう。
背中に感じた熱い吐息だけを頼りに記憶を辿る。
今でも私の背中を見つめていますか?
あの頃から背を向けたままの私は、
彼の表情を知る事はない。
今でも夜中に明るく光るラインの通知。
携帯を裏返す。
「どうしたの?誰?」
「愛してるよ」
笑顔を向けて体を絡める。
そっとキスをして
私は、彼氏の胸に顔を埋める。
彼氏の吐息を額に感じながら、目を閉じた。
今日もきっと
「なぁ、会いたい」
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