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研修医が初めて精神科に入院した話

入院前の研修状況

研修医1年目。約半年経って少しずつ慣れてきた頃でした。
外来をやったり、当直に入ったり、外科ローテでオペ入ったり。
当直明けに長時間オペに入るよう言われていたり、外来ではっきりした診断がわからず苦悩したり。
そんな日々でした。
ハイポな研修なのでそこまで大変ではないはずなのです。それに先生方も優しかったのです。それなのに、前から抱えていたメンタル不調が悪化していきました。

働きながら考えていたこと

死ぬつもりでした。
本気で自殺を考えていたので、私なりに覚悟して首を吊りました。(以前から首吊りは繰り返していましたが)
ちゃんと死ぬつもりで実行したはずなのに、苦しくなってしまったからか足がつく環境でやっていたので、もがいてしまい失敗に終わりました。
やっぱり私に覚悟が足りなかったのでしょうか。
生きるのが苦しくて死ぬことを決意したのに、結局成功しなくて、生きることも死ぬこともできないという八方塞がりな状況で絶望しました。

ここでかなり限界を感じたので、当直明けのオペを休み、初めての有給もとりました。
一旦仕事から解放されれば少しは気持ちが軽くなると思っていたのです。

有給休暇中

もう食欲もなく、睡眠もうまくとれず心身ともに不調でした。
気を紛らわしたくて読書やゲームをしようと思っても、全くできない。横になってただ泣いているだけの日々でした。
結局休んでも、しんどいのは変わらずひたすら時間経過を耐えながら待っているだけでした。仕事がしんどいんじゃない。もう生きるのがしんどいんだと分かりました。
こんな日々に耐えられないから、自分で終わりを設けようと思いました。今度こそ首吊りを成功させようと思いました。
もう次の日に自分が生きている未来がうまく見えなかったのです。

精神科受診。そして入院

私も精神科を目指す医師の端くれ。勝手に死んでいくのは先生に迷惑がかかると考えていました。
だから精神科を予約外で受診することを決め、その日までは苦しくても生きることを決意しました。

そして、上記事柄を先生にお伝えしました。
そうすると、
「今の状況だと生きている未来が見えず限界だというのは、死んでしまう可能性があるということ。入院という選択肢が良いと思います」
と言われました。
正直、そのときの私の状況を客観的に見たら入院も選択肢としてあがる可能性はあると思っていたので、少しの驚きで済みました。
空笑いしながら、もうどうしようもないですよね…、入院受け入れます。とお伝えし、任意入院となりました。

一旦荷物をとりに帰宅。どれくらいの期間になるかわからず、働かない頭を使って荷物の準備をしました。
そして大荷物を抱えて、精神科病棟へと足を踏み出したのです。

入院してから今の話

いきなり入院となったので、休職することを伝えられておらず、外来当直オペ全部どうしようとなっていました。実際に、外来休むときには研修医の代わりを立てなきゃいけないからと2年目の先生からLINEで怒られました。急遽別の人に入ってもらい多大なご迷惑をおかけした自覚があります。
入院予定は1ヶ月。その間の外来と当直は全て変わってもらう形となりました。

こうして入院生活が始まります。
最初は現実感がありませんでした。これは夢で次の瞬間には普通に働いているんじゃないかって、同期と笑い合って、先生に怒られながら日々過ごしているのではないかって考えていました。
けど、今の私は医師じゃないんです。入院中にコードブルーが鳴ったときに行かなきゃと思ったけど、私いま医者じゃないんだ、閉鎖病棟にいて行くことができないんだ、とショックを受けました。
他の患者さんと話していても傾聴しなきゃって思うけれども、今の私は医療者じゃないんです。
ここまで頑張って積み重ねてきたものが全て崩れ去って、道を踏み外してしまったという感覚があります。ここまで引かれていたレールから外れてしまったのです。

ここまで積み上げてきた医師という立場から患者になってしまいました。
精神科病棟で働いていらっしゃる先生方は知っている人が多く、看護師さんにも面識がある方がいて、少し気まずい状況の入院となっていました。そもそも、研修医が入院しているという状況は病棟の方々にとって腫れもののような存在のはずです。
だから、私はいくらしんどくても希死念慮が強くても誰にも助けを求められず、一人で過ごしているのと何ら変わりない生活を余儀なくされています。
もちろん1患者としているわけだから助けを求めることは構わないはずです。でも先生方や看護師さんの忙しさを知っておりますし、立場の問題もあって、声はかけられていないのです。
だから私は「大丈夫」というしかないのです。
大丈夫、大丈夫って言い続けていたら、もう私が何を考えているのか分からなくなってきて、とりあえず仕事復帰して限界迎えたら今度こそ死ねばいいかって考えてます。

だって私が消えても誰も困らない。今の私を心配してくれる人はいない。私の存在は人様に多大なご迷惑をおかけしている。

だから、私は死ぬべきなのです。

入院しても良くなるかわからない。もし良くなってもすぐにまた希死念慮に支配されるかもしれない。仕事に復帰できるかわからない。笑顔で患者さんと話して、頭を使って診断や治療を考えられるかわからない。
もう不安ばかりです。

けれど、今の私にできることはゆっくり休むこと。
日々葛藤しながら、1日1日頑張って生きています。

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