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#45『きのうの影踏み』(著:辻村深月)を読んだ感想
辻村深月さんの『きのうの影踏み』
僕の好きな作家さんの一人である辻村深月さん。月に1冊は辻村さんの作品を読みたいと思っています。その中で本作を読んだきっかけは、あらすじの「怖くて好きなもの」に惹かれたことです。
あらすじ
小学生のころにはやった嫌いな人を消せるおまじない、電車の中であの女の子に出会ってから次々と奇妙な現象が始まり…、虫だと思って殺したら虫ではなかった!?幼い息子が繰り返し口にする謎のことば「だまだまマーク」って?横断歩道で事故が続くのはそこにいる女の子の霊が原因?日常に忍び寄る少しの違和感や背筋の凍る恐怖譚から、温かさが残る救済の物語まで、著者の“怖くて好きなもの”を詰め込んだ多彩な魂の怪異集。
感想
「よく分からない」からこそ感じる怖さが凝縮されたような1冊
共感できたり考えさせられたりすることが多かった
様々な「怖いもの」を集めた短編集。約240ページの中に13の話があり、数ページの凄く短い話もあります。登場人物は母と子が出てくる話が多いです。
怖いって「よく分からない」からこそ感じるのかもしれない、それが凝縮されたような1冊でした。
怖いものと聞くと、ホラー映画に出てくるような「妖怪」や「怪物」、「お化け屋敷」などを思い浮かべると思います。そういったものだけでなく、日常にありそうなものでも「よく分からない」のであれば、それは怖いものではないか。そして、その最たるものがどこにでも存在する「噂話」なのだと思いました。しかも、頭の中に残り続ける限り怖さは持続するし、情報化が進んで分からないものが減ったからこそ、「よく分からない」ものが目立って見える。ある意味ホラー映画よりも怖いのかもしれません。
ゾクゾクするよりも、共感できたり考えさせられたりと頷くことが多かったです。
「私の町の占い師」の「信じる信じないにかかわらずそこに「ある」力は、力の方から求めない人の元にも来てしまうのではないか」のフレーズには特に共感できました。「運命」と似たようなものでしょうか。
印象的な話は「私の町の占い師」「だまだまマーク」「ナマハゲと私」「噂地図」。一見ホラーには見えない「噂地図」が1番怖かったように思いました。噂話が耳に入らない方が生きやすいと思っていましたがそうとは限らないのだな。世の中は「よく分からないもの」だらけなのかもしれません。
僕は、はっきりと答えが提示されていない、読了後も考える話が好きです。本作はまさにそういった内容で、僕に合っていると思いました。
辻村さんは、モヤモヤと感じてはいるけれど言語化できない物事や心理描写を丁寧に描いていると読むたびに感じます。
印象的なフレーズ
それまで普通に、何事もなく出入りしていたはずの場所でも、それは起こった。
だから、ひょっとしたら、それらは突然現れたのではなくて、もともとあったものに、ただ、オレが気づくようになった、というだけのことなのかもしれない。
本当は最初から、どこでだって起きていたことだったのかもしれない。
それでも、本当に何か「縁がある」としか言いようのない、信じる信じないにかかわらずそこに「ある」力は、力の方から求めない人の元にも来てしまうのではないか、と思っている。
認めたらその通りになってしまうけど、噂だから、それがどこから来たのか、本当のところは誰にもわからない。
幽霊というのは怖いもので、「怪談」も「ホラー特集」も、自分の身に起こらないからこそ、おっかなびっくり楽しんでいられる。