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#29『#真相をお話しします』(著:結城真一郎)を読んだ感想【ネタバレなし】
結城真一郎さんの『#真相をお話しします』
2023年(第20回)本屋大賞ノミネート作品です。また、短編集の1作「#拡散希望」は第74回日本推理作家協会賞を受賞しています。
僕は4か月前にAudibleで聴き、今回紙の本で再読しました。
あらすじ
私たちの日常に潜む小さな"歪み"、
あなたは見抜くことができるか。
家庭教師の派遣サービス業に従事する大学生が、とある家族の異変に気がついて……(「惨者面談」)。不妊に悩む夫婦がようやく授かった我が子。しかしそこへ「あなたの精子提供によって生まれた子供です」と名乗る別の〈娘〉が現れたことから予想外の真実が明らかになる(「パンドラ」)。子供が4人しかいない島で、僕らはiPhoneを手に入れ「ゆーちゅーばー」になることにした。でも、ある事件を境に島のひとびとがやけによそよそしくなっていって……(「#拡散希望」)など、昨年「#拡散希望」が第74回日本推理作家協会賞を受賞。そして今年、第22回本格ミステリ大賞にノミネートされるなど、いま話題沸騰中の著者による、現代日本の〈いま〉とミステリの技巧が見事に融合した珠玉の5篇を収録。
感想
・いたる所にある伏線や終盤の展開はどの短編も見どころがある
・それぞれのテーマについて教訓のようなものを伝えている?
・思っている以上に、小学六年生は大人だ
パパ活、マッチングアプリ、リモート飲み会、YouTuberといった、近年話題の出来事をテーマにした短編集。
いたる所にある伏線がきれいに回収される終盤の展開は、どの短編も見どころがありました。
馴染みのあるテーマを取り扱っていることもあり、読みやすかったです。加えて、ハラハラする気の抜けない展開で充実感があります。
改めて読んでみて、それぞれのテーマについて教訓のようなものを伝えていると思いました。
ネタバレ要素もあるため詳しくは言えませんが……
言えるのは、「思っている以上に、小学六年生は大人だ」ということです。
あとは、直接会って話すことが大事ということでしょうか。
本作で印象的な話は、最初の「惨者面談」と最後の「#拡散希望」です。
本作では、予想できない真相が待ち受けていますが「惨者面談」が最もインパクトが強かったです。それにより、以降の短編に一気に引き込まれました。
「#拡散希望」は、なんとも言えない気持ちになりました。怖さも感じます。今の世の中でのYouTubeの影響ってすごく大きいんだなと改めて思いました。
ただ、「パンドラ」はデリケートなテーマでもあり、賛否両論があるかなと思いました。
印象的なフレーズ
俺たちが思っている以上に、小学六年生は大人だぜ。
差し出されたのはiPhone7だった。メタリックに輝く黒のボディ、色鮮やかなアイコンが並ぶ画面。何世代か前の機種ではあるが、スマホも携帯も持っていなかった当時の僕らにとって、それは日常に紛れ込んできた突然の"未来"だった。