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インドのピックル製造における油の使い方とその意義:米油、ひまわり油、太白ごま油、マスタードオイルの特徴

こんにちは、アートオブピックルです。今回は、インドのピックル作りに使用するさまざまな油について、その特徴と、なぜ一度加熱することが推奨されるかを解説します。南インドではひまわり油や「ジンゲリーオイル」(太白ごま油と同じもの)が主に使われ、北インドではマスタードオイルが一般的です。これらの油を高温で熱することで得られる効果と注意点について見ていきましょう。


なぜ油を一度高温で加熱するのか?

ピックルを保存するうえで、油を加熱することは非常に重要な工程です。以下がその理由です:

  1. 微生物の抑制
    ピックルは保存食品として長期保存が求められますが、微生物の繁殖はその保存性を脅かします。広島大学の中野宏幸教授の研究によると、加熱は食中毒菌の芽胞を抑制する効果があるとされ、ボツリヌス菌のような耐熱性のある菌も加熱によって増殖リスクを抑えられることがわかっています。このため、ピックル製造時に油を高温まで加熱することは保存性の向上に役立ちます。

  2. 酸化の抑制
    油の酸化は、ピックルの風味や品質を損なう原因となります。加熱によって酸化しやすい不純物が取り除かれ、酸化が遅くなり、結果としてピックルが劣化しにくくなります。米油、ひまわり油、太白ごま油、マスタードオイルも、それぞれのスモークポイント(煙が出る温度)に注意しながら加熱すると、酸化を抑える効果が期待できます。

  3. 風味の抽出
    ピックルには多くの香辛料が使われ、加熱した油はそれらの香り成分を引き出し、味に奥行きを与えます。特にマスタードオイルは高温にすることで独特の辛みと風味が和らぎ、ピックル全体のバランスが取れるようになります。

加熱時の注意点

各油をスモークポイントの手前まで加熱し、煙が出る直前に火を止めることで、油の分解を防ぎながら必要な殺菌効果や風味抽出を得ることができます。適切な温度管理でピックルの保存性や味わいを最適化しましょう。

各種油の特徴と加熱のポイント

以下、ピックル作りによく使われる各油のスモークポイントと、その特徴について詳しく見ていきます。ここにはない油を使ってピックルを作ることももちろんできるます。

  • 米油(スモークポイント:約232℃)
    米油は軽い風味で、酸化に強くピックルの素材の味を引き立てる役割があります。高温に耐えられるため、インドでは一般的ではありませんが、ピックルに適した油の一つと考えています。

  • ひまわり油(スモークポイント:約266℃)
    南インドで一般的に使われる油で、軽い風味と高い酸化安定性を持ちます。香辛料とよくなじみ、ピックルの保存性を高めます。インドではレモンのピックルを作るときに、ひまわり油とジンゲリーオイルのどちらかを使うことが多いです。

  • 太白ごま油(スモークポイント:約210℃)
    無味無臭で、スパイスの風味を引き立てるために最適です。南インドのピックルによく使用される「ジンゲリーオイル」に一番近いです。ちなみにジンゲリーオイルのスモークポイントは350°F(176℃)ぐらいです。

  • マスタードオイル(スモークポイント:約250℃)
    北インドのアチャールではマスタードオイルが好まれ、ピックルに特有の深い風味と辛みをもたらします。高温にすることで風味がまろやかになり、特徴的な香りがアチャールらしさを演出します。

  • ココナッツオイル(スモークポイント:約177℃)
    ココナッツオイルは、南インドで使用されます。特に海産物(イカ・エビなど)におすすめ。精製されていない低温抽出のココナッツオイルには特有の甘みと香りがあり、加熱で引き出されるため、ピックルに特徴的な風味を加えます。ただし、スモークポイントが比較的低いため、加熱は煙が出ない範囲にとどめましょう。

  • 動物性の油(スモークポイント:約200℃)
    クールグのポークピックルでは豚バラの油を利用してピックルを作ります。脂の質の良い豚を使用すると非常に美味しいポークピックルを作ることができます。

    *スモークポイントは参照文献によって微妙に異なります

アートオブピックルについて

「アートオブピックル」では、伝統と科学的根拠に基づき、日本の食材を用いて、南インドの本格的なピックルを作り皆様にお届けしています。尾道からお届けする新しい味をぜひお楽しみください。

アートオブピックルでは旬の柑橘のピックルをオンラインで販売しています。

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