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読んだり縫ったり作ったり別館。

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最近の記事

ハリセンボンの雨

眠りの端を掴むための擬似共感覚 耳鳴りの断面の質感を蝸牛の感覚毛で探る内に意識が遠ざかる 噴水の水が連なる水流から不連続な水滴になるみたいに 普段聞こえる側面だけでなく、音の断端に触覚を差し入れ構造を確かめる これを積分して音を再現することは可能だろうか 「耳鳴りって耳を近づけると他の人に聴こえるのとそうじゃないのがある」って昔誰かに言われて信じてたな。 自分の耳鳴りは金属質な轟音で、イメージは無数の針が降り続ける音。なので微細なワイヤロープみたいな断面をしている、はず。

    • 白黒つかないことばかり

      ある方の投稿した写真がずっと気になっている。 碁笥が重なって置いてある。 あれって重なるものだったっけ? ここ数日私の頭の4/3以上はこの問題で占められている。 蓋はでこぼこと地模様があるのに対し、ふっくりとした胴は南北に南瓜のような筋が入り、艶々している。団栗みたいに。底が丸く凹んでいるのだろうか。下の蓋を外した状態で重ねたのだろうか。盤は脚は無いが厚く、年季が入った様子が窺える。 祖父母の家にも碁盤があった。脚付き盤で、子供の頃は重くて持ち上げられなかった。艶消しであ

      • カリフォルニアロケンロール、その先に轍

        数年前、紙刺繍の為に刺し子の図案を探していて、南部菱刺しの存在を知った。そもそも布じゃないところから始まった。 こぎんは以前から知っていて格好良いけど試そうと思った事がなかった。菱刺しは何だろう、いきなり刺してみたいと思ったから一目惚れ。 しかも盛岡が好きだけど離れて久しく、何とかご縁を保ちたいと焦っていた私はこれだ!と思った。南部せんべい南部鉄器、きっとこの辺りだ。そう南部が広いことにまだ気づいていなかった。日本一小さな県出身です。東北広すぎる。 考えたら青森の〜みたいな事

        • 「アルゼンチンかもしれない」

          見つけたのはメンダコだった。 ヒメコンニャクウオがひらりと寄ってきた。 何これ。 落とし物だ。ニンゲンの。 深く冷たい海の底。砂に埋もれてそれはあった。 ながぬま、と書いているな。 読めるの。 文字くらい読める。 メンダコはプランクトンのぼんやりした光を頼りに、案内板を読んだ。 「ながは永、かぎりないとき。ぬまは沼」 「淡水か。やばいな」 それどころではない。この海を陸の方面に浮上し川を遡り辿り着く沼の深く深く、地面をどこまでも深く潜った先の裏側に、 「違いない」 「きっ

          「ユニコーンに卵焼き」

          たいへん。 あおちゃんは立ち上がった。おにいちゃんお弁当忘れてる。 今日打ち上げのロケットでおにいちゃんは飛び立ったばかりだった。ボボボボと輝いて小さくなっていくロケットを工房のお庭から見送ったばかりだ。こんどは火星行くんだって。すごいねえ。 だが。机の上にそれはあった。おにいちゃんのおべんとぶくろ。 最初にあおちゃんはさっと紐を解いて中を確認した。お箸良し、スプーン良し。ちゃんと入ってる。いい匂いがする。唐揚げおいしそう。卵焼きも入ってた。ひとくち味見して、結局食べた。ちょ

          「ユニコーンに卵焼き」

          6Bダイヤモンド

          鉛筆の芯を、それも芯が柔らかいほど炭素の割合が多いであろう、と6Bを選んで、集めてそれを土に埋める。ひなたを選んで。 鉛筆の芯を舐めると鉛が体に毒だと古い本で読んだことがあった。 鉛を含むガラスは屈折率が高く、きらきらしていると読んだこともあった。 故に三段論法だ、而るに、鉛筆の芯に含まれる炭素がダイヤモンドとなるとき、鉛は輝きを増す手助けをするだろうと。 途方もない圧力と熱を加えられ続けると炭素はダイヤモンドになるのだそうだ。 日射しの中、繰り返し踏めばちょっとくらい変化が

          6Bダイヤモンド

          東京より愛と密を込めて

          今、檸檬と漢字で書けばあの歌の事だろう。 十余年前の私にとって檸檬は梶井基次郎の著作であり、自分と仲間が作るZINEの名前だった。 並ぶ本の上にそっと檸檬を置くみたいな過激に憧れたし、今もちょっとある。 (勿論、本は大切にしましょう) さて2020年。今回のABTTは東京もんのやばい密を送り込むというミッションとして取り組んだ。紙を縫うという表現で絶対伝わってない自信があるけど自分の中では時事ネタである。(ちなみに密なのは表紙と裏表紙で、中はさっぱりしたもんだ)会期中に観に行

          東京より愛と密を込めて