見出し画像

#35 まずは共感する - 解決志向アプローチ -

ここでは、「解決志向アプローチ」の考え方について、一緒に学んでいきたいと思います。前回の記事では、なぜ「褒めること」は人を育てる上で、また、問題を抱えて悩んでいる人の相談にのる上で大切かということについてみていきました。

「褒めること」でポジティブな感情が誘発され、その感情が相手の視野や思考、行動を拡げてくれるというお話でしたね。今回の記事では、ネガティブな感情を持っている人に対して、どのようにマイナスからプラスの状態に導いていけるかについて、解決志向アプローチの考え方に従い、数回に分けて、一緒に学んでいきたいと思います。


無理やりポジティブにしようとしない

ポジティブ心理学や解決志向アプローチでは、問題を抱えて悩んでいる人に対して、ポジティブな感情を活用しながら、原因ではなく、望む未来にフォーカスして進めていくというアプローチなんですが、悩んでいるときに、ポジティブな気持ちになったり、望む未来を考えるって、難しいですよね。ネガティブな感情や思考が強いときに無理やりポジティブな気持ちや考え方にさせようとしても、うまくいくことはありませんし、「自分はネガティブだからダメなんです」と、かえって逆効果になることもあります。

そのため、相手がネガティブな気持ちや考え方が強いときは、まず、それらの感情や思考の強度を緩めていくことから始める必要があります。人のこころを「庭」で例えると、「雑草(ネガティブな感情)」が多すぎる場合は、「花(ポジティブな感情)」を育てることよりも、まずは「雑草」をならしていくことからはじめようといった感じです。

ネガティブな感情や思考が強いとき、望む未来は考えられない

プラスの会話に移行するための3つのステップ

ネガティブな感情や思考の強度を弱めて、望む未来などのプラスの会話にシフトしていくためには、3つのステップを進めていく必要があります。

  1. 共感すること

  2. ノーマライズすること

  3. 相手の「リソース」に目を向けること

各々のステップについて、詳しくは3回に分けて、みていきたいと思いますが、この3つのステップ、悩んでいる人の相談にのる際に、めちゃくちゃ役立ちますんで、ぜひ皆さんにも習得して、実践していただきたい内容です。ここでは、まず、1つ目のステップから、一緒にみていきましょう。

まずは相手のネガティブな感情や思考を認める

相手のネガティブな感情や思考の強度を緩めるための1つ目のステップは、「共感すること」です。これはポジティブ心理学や解決志向アプローチに限ったお話ではなく、まずは相手のネガティブな気持ちや考えを認めることからはじめていきます。この点に関しては色んな場所で見聞きすることだと思いますので、サラッといきますが、皆さんもご経験あると思うんです。悩んでいるときやイライラしているとき、誰かが「うんうん」と話を聴いてくれ、共感してくれたことで、気持ちが少し楽になったり、落ち着いた経験が。

まずは相手のネガティブな感情を受けとめて、感情の強度を緩めていく

まずは、相手のネガティブな気持ちや考えを受けとめることから始めましょう。その際、大事にしたいポイントが2点あります。

「同情」ではなく「共感」する

1点目は、共感(Empathy)と同情(sympathy)は異なるという点です。「共感」とは、自分の経験を介さずに、相手の立場に立って「ああ、それは悲しいよね」「ああ、それはイライラしますよね」と理解しようとする態度や行為を指します。一方、「同情」とは、自分の経験を介して、相手を理解しようとする態度や行為です。例えば、相手が失恋して悲しんでいるときに、自分の失恋経験を思い出して、「あ~、それは悲しいよね、だって自分も失恋したときに・・・」と、頭の中が自分の失恋経験になっちゃっているのが同情です。同情してしまうと、人それぞれ、感じ方や考え方が異なるため、相手が本当に感じていることや思っていることからズレちゃう恐れがあるんです。そのため、1つ目の「共感」するステップでは、ぜひ、自分自身の経験を介さずに、相手の置かれた状況の中で、相手はどう感じているのか、思っているのかに興味関心を持って、耳を傾けてほしいなと思います。

相手の「視点」を認める

2点目は、相手の視点を認めるという点です。例えば、同じ世代や同じ価値観の人だったら、相手の立場が想像しやすく共感しやすいと思うんですが、世代が離れていたり、価値観が違う人だったら、なかなか共感することって、難しいですよね。よく会社の上司が若手の育成で悩んでいるときなど、「いや~共感が大事だとはわかるんですが、”いやいや、そんなことで弱音吐くなよ” って、共感できないんですよ」と伺うことがあります。そんなときは、相手の気持ちに共感しようとするよりも「相手の視点を認めること」を優先されてみてください。相手が育った時代背景や置かれている状況を考慮しながら、その人の思考プロセスを辿ってみてほしいんです。そうすると、「ああ、そうやって考えたら、確かにこの状況、しんどいって感じるよね」「ああ、そうやって見たら、確かにこの状況、イライラするよね」など、その人なりの論理に気づけると思います。「(あっているかどうかはともかく)その論理に従えば、確かにそうだよね」という形にすると、以前よりも共感しやすくなります。相手の視点を認めていくこと、特に価値観が合わない人に対して、ぜひ、試しにやってみてください!

「そうなんです」は共感できている証拠

因みに、相手に共感できているかどうかは、相手の「そうなんです」という言葉が教えてくれます。逆に共感できていないときは、「でも」「というか」などの否定の言葉が返ってきます。

〇 共感できているとき
「ああ、(確かにそうやって見ると)しんどいですよね」(自分)
「そうなんですよ」(相手)

✕ 共感できていないとき
「ああ、しんどいですよね」(自分)
「はい、でも・・・」(相手)

もし「でも」などの否定が返ってきた場合は、焦らずに、相手の思考プロセスを辿りながら、また、再トライしてみてください!

さて、ここではネガティブな気持ちや考えが強い人に対して、まずはその強度を緩めるために「共感すること」について、一緒に学んできました。次回の記事では、次のステップ、「ノーマライズする」ということについて、一緒にみていきたいと思います。次のステップから、いよいよ解決志向アプローチらしさが出てきますんで、どうぞお楽しみに!(つづく)

【参考文献】
De Jong, P. and Berg, I. K. (2012). Interviewing for Solutions. 4nd Edition, Brooks Cole, Pacific Grove, CA, 152.

Warner, R. E. (2013). Solution-focused interviewing: Applying positive psychology: A manual for practitioners. University of Toronto Press.

大野裕・田中克俊 (2017). 『保健、医療、福祉、教育にいかす簡易型認知行動療法実践マニュアル』きずな出版.

フォローよろしくお願いします!また、自分自身のお悩みや人を育てる上でのお悩みやご質問などあれば、是非こちらにお寄せください。https://peing.net/ja/smatsuguma