個人的部門賞!これぞエンタメ本屋大賞(本屋大賞アレコレ④)
HONYA AWARD Ⅳ
さて、「2021年本屋大賞」に向けて、過去の「本屋大賞」を振り返っています。前回のお仕事小説大賞に続いて、今回は、エンターテイメントに徹して、これまでの大賞17作品から個人的なエンタメ大賞について "note" してみようと思います。
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まずは、お馴染みの過去の大賞作品。
この中から、個人的にエンターテイメントを感じさせてくれた作品を、受賞年順にノミネートしていきたいと思います。
佐藤多佳子さんの 「一瞬の風になれ」
中身はジュブナイルといってもいいような感じなのですが、タイトル通り爽やかな物語です。
文庫本で3冊、925ページの長編なのですが、読み始めてしまえば、あっという間の作品なのです。
内容としては、春野台高校陸上部の三年間の歩み、短距離走者の主人公が400mリレーでインターハイを目指す物語で、青春100%のスポ根ストーリーなのです。ちょっとベタで懐かしい雰囲気なのですが、それでもエンタメなのは間違いなく、風を感じられる作品なのです。
伊坂幸太郎さんの 「ゴールデンスランバー」
当時、乗りに乗っていた伊坂幸太郎さんの集大成と言われたサスペンス大作で、首相暗殺の濡れ衣を着せられた男の逃亡ストーリーです。国家的陰謀はこの後の「モダンタイムス」にも見られたテーマで、ただの男が、いろんな人たちの手を借りながら立ち向かっていく姿が、ホント、エンタメなのです。
堺雅人さん主演で映画化もされているのですが、映画で見るとかなり都合がいい感じなのですが、小説で読むと無類の面白さです。
取りあえず「痴漢は死ね」という言葉は憶えておきましょう!
湊かなえさんの 「告白」
湊かなえさんのデビュー作なんですが、いきなり本屋大賞になってビックリ!、そして読んでみて、また、ビックリ!
それぐらいインパクトがあったのです。
「このクラスの生徒に殺されたのです。」という教師の告白から始まる物語は、緊張感を保ったままエンディングに向かっていくのです。
後に、イヤミスの女王と呼ばれる湊かなえさんの全てがつまったクライムエンターテイメント、読んでイヤな気分になること間違いないのです。
和田竜さんの 「村上海賊の娘」
これまで発表した作品が4作しかない和田竜さんの傑作時代劇エンターテイメント。
文庫本4冊1136ページの大作なのですが、潮目に乗ってしまえば、あれよあれよとクライマックスまで運ばれてしまうのです。
史実に基づいて描かれているものの、キャラクターたちが皆、明るく魅力的なので、時代劇の読みにくさは、ほとんど感じられないのが和田先生の手腕なのです。
恩田陸さんの 「蜜蜂と遠雷」
恩田陸さん2冊目の「本屋大賞」作品。
ピアノコンクールを舞台にした青春小説と言っていいのでしょうが、ピアノを弾く場面では、なんかホントに音楽が聴こえてくるような感じがして素晴らしいのです。
1次予選、2次、3次、そして本選と、コンテスタントたちが数を減らしながらしのぎを削る様子は、まさにエンターテイメントそのものでした。
恩田陸さんの作品の中では、珍しくモヤモヤしない作品で、最後の順位結果ページを見ないようにするのが大変だったのです。
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以上の5作品なんですが、エンタメ部門は傑作ばかりで、選考は困難を極めますが、私が選ぶエンタメ大賞は
和田竜さんの「村上海賊の娘」✨
いやー、難しかったのですが、ホント、ぐいぐいって読まされた本書にしたいと思います。
現代風のセリフになっているのだけど、当時の戦の価値観みたいなものを感じさせてくれるのです。
戦う同士のどちらも魅力的で、誰にも死んでほしくないなあと思ってしまったんですよね。
それでも戦うことを選んでいく主人公が、悲しくもあり、クライマックスの激闘にページをめくる手が止まらないのです。
普段、時代劇小説を読まない自分であっても、教科書には出てこない武将たちや、この村上海賊に魅力を感じてしまった傑作なのです。
渾身の大作だったせいか、この作品の後、和田先生は新作を発表していないのですが、再び、時代劇エンターテイメントで楽しませてくれることを期待しているのです。
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さて、このシリーズ記事も4回を数えていますが、実は、もう一つだけ部門賞を用意しています。
これだけ語っても、まだネタがあるのが、この「本屋大賞」の凄さですね。
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