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キュレーター原田マハの描くアートの楽園②

curator Maha


 原田マハさんのアート小説に出てくる作品や画家を追いかけて記事を書いているのですが、その続きです。

(ちなみに前回の記事はこちら)


 今回は、『暗幕のゲルニカ』からスタートです。


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『暗幕のゲルニカ』

 ニューヨーク、国連本部。イラク攻撃を宣言する米国務長官の背後から、「ゲルニカ」のタペストリーが消えた。MoMAのキュレーター八神瑶子はピカソの名画を巡る陰謀に巻き込まれていく。故国スペイン内戦下に創造した衝撃作に、世紀の画家は何を託したか。ピカソの恋人で写真家のドラ・マールが生きた過去と、瑶子が生きる現代との交錯の中で辿り着く一つの真実。

 『楽園のカンヴァス』と同じく、現代パートと過去パートの交錯するタイムマシーンタイプの話です。
 テロ組織なんかも登場するのはアレなんですが、ピカソの大作「ゲルニカ」に相応しい物語でした。
 イラク戦争前にパウエル国務長官が理事会に出席した際に「ゲルニカ」に暗幕がかかっていたエピソードを基にしたと思われるのですが、たしかに、現代には再び「ゲルニカ」のメッセージが必要なのかもしれません。


◎パブロ・ピカソ 1881-1973

「ゲルニカ」

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 あまりにも有名なピカソの作品です。
 ちなみに、国連本部にかかっているレプリカのタペストリーは、かのロックフェラー一族が、1984年から貸し出していたもので、先日、一族に返却する旨のニュースが報じられてましたね。

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 このニュースを聞いた時に『暗幕のゲルニカ』を思い出した人はたくさんいたと思うんです。



『アノニム』

 オークションの裏側で盗難にあった美術作品を取り戻す義賊集団「アノニム」の活躍を描いた作品です。
 オーシャンズ11みたいなエンタメ系で、いつものアート小説とは、かなり印象が違いますのでご注意を!
 そして「アノニム」の追いかけるのがポロックの幻の作品なのです。


◎ジャクソン・ポロック    
1912 - 1956
 アクション・ペインティングと呼ばれるドリッピングの手法で、抽象表現主義の代表的な画家とされている。

「Number 1A,1948」

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 迫力はあるけれど、自分にとっては今ひとつ魅力に欠けるポロックだったりするのですが、けっこうな高額でオークションされてたりするんです。

「Number 17A」

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 あ、あまり印象は変わらないんですよね...
 抽象表現でも好きな作家さんもいるんですが、ポロックはそれほど得意じゃないのです。(すみません💦)



『たゆたえども沈まず』

19世紀後半、栄華を極めるパリの美術界。画商・林忠正は助手の重吉と共に流暢な仏語で浮世絵を売り込んでいた。野心溢れる彼らの前に現れたのは日本に憧れる無名画家ゴッホと、兄を献身的に支える画商のテオ。その奇跡の出会いが“世界を変える一枚”を生んだ。

 史実をもとに書かれたフィクションと分かっていても、なんだか本当の話なんじゃないかと感じちゃうんですよね。
 日本の画商とゴッホが出会っていたなんて素敵じゃないですか。
 ただ、ゴッホの生涯は、かなりドラマチックな感じに広まっているので、小説になると穏やかに感じてしまいました。


◎フィンセント・ファン・ゴッホ
 1853 - 1890
 感情の率直な表現、大胆な色使いで知られ、ポスト印象派を代表する画家

「星月夜」

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 多分、ピカソと並び、もっとも著名な画家であるゴッホ。
 短いキャリアの中で、たくさんの名作を描いてますが、個人的には、キャリア晩年になって、度々現れるようになった”糸杉”のある作品が好きだったりします。
 暗い炎のように見える糸杉からは、不穏な死の匂いが漂ってくるのです。


「糸杉のある麦畑」

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「糸杉と星の見える道」

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『常設展示室』

 画家の物語というわけではなく、現代で、1枚の絵にまつわる人間模様を描いた短編集です。

パブロ・ピカソ「盲人の食事」

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フェルメール「デルフトの眺望 」

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ラファエロ「大公の聖母」

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ゴッホ「ばら」

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アンリ・マティス「豪奢」

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東山魁夷「道」

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 などの絵が出てきます。
 最後の東山魁夷の「道」にまつわる話が好きでした。


『風神雷神 Juppiter,Aeolus』

 京都国立博物館研究員の望月彩のもとに、マカオ博物館の学芸員、レイモンド・ウォンと名乗る男が現れた。彼に導かれ、マカオを訪れた彩が目にしたものは、「風神雷神」が描かれた西洋絵画と、天正遣欧少年使節の一員・原マルティノの署名が残る古文書、そしてその中に記された「俵…屋…宗…達」の四文字だった――。

 ついに日本人絵師が主人公に....と思ったら、上下巻の大作でした。
 現代パートと過去パートがあるのですが、ほとんどが過去パートです。

 俵屋宗達を主人公に据え、少年時代に天正使節団に加わっていたというフィクションが描かれるわけなのですが、それが「風神雷神」の風神は、なぜ白鬼なのか.... という問いから広がっていく様が楽しいのです。
 これで、現代パートがもう少し分量があってバランスが良ければ、まだまだ面白くなったと思うのですが....


◎俵屋宗達
 生年不詳・没年1640年頃
 尾形光琳と並び称せられる近世初期の大画家であるが、その生涯には不明な点が多い人物。

「風神雷神図屏風」 

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 鬼と言えば、赤鬼、青鬼のはずなのに、なんで雷神は白鬼なんでしょうね.... 言われてみると、確かに不思議なのです。
 そこに西洋絵画とのつながりを見出すなんて、美術に関する幅広い知識を持った原田マハさんにしか出来ない芸当ですよね。


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 原田マハさんのアート小説は、他にも『太陽の棘』や『異邦人(いりびと)』、『デトロイト美術館の奇跡』、『美しき愚かものたちのタブロー』などがあります。

 私的には、やはり史実もふまえたタイムマシーン的な作品が好みなんですが、そのうち『楽園のカンヴァス』を超える作品と出会いたいところです。

 今後、マハさんの小説に登場がするとするならば誰だろう、と、考えてみるのが楽しいんですよね。
 近代でいえばゴーギャンやルノアール、クリムトなんかドラマがありそうだし、ぐっと遡って、バロック期のベラスケスやフェルメールあたりも読んでみたい気がします。
 でも、本命は、今回タイトル画像としている2枚の絵「着衣のマハ」と「裸のマハ」の作者、ゴヤが有力かも.... と考えています。

◎フランシスコ・デ・ゴヤ 1746年3月30日 - 1828
 宮廷画家として、スペイン最高の画家の地位を得た人物。代表作と呼ばれる作品は、後年、聴力を失ってから描かれたものが多い。

「裸のマハ」と「着衣のマハ」

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 タイトルを見て分かるように、”原田マハ”さんのペンネームの由来となった作品です。

 なぜ、裸と着衣の作品があるのか....  そのあたりの事情を描いてもらいたいものです。(家庭の都合なのかもしれませんが...w)




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