知らない作家との出会い(ジェローム・ルブリの『魔王の島』)
Les refuges
皆さんも同じだと思いますが、まったく知らない作家さんの小説を読む時は、いつもワクワク半分、不安半分だったりします。
それが海外作家さんの場合は尚更なんですよね。
ただ、邦訳されてるということは、好き嫌いはあったとしても、一定の水準はクリアされてるってことでもあるんですよね。
近年、そういう知らない海外作家さんの作品を読むのが楽しみのひとつなのですが、今回手に取ったのはフランスの新鋭ミステリー作家:ジェローム・ルブリの『魔王の島』という本です。
昨年末に、文藝春秋の翻訳ミステリの ”隠し玉” として、『Les refuges』という原題のみ紹介されてた作品なんです。
今年、楽しみにしていた一冊で、早速、読んでみたのですが、なかなか自分好みの作品でした。
ただし…
結末については ”好き嫌いが分かれる” と思いました!
途中までは、「なるほど~」って感じだったのですが、最後は「そう来るのか~」と、なってしまいました。
こういう狙った仕掛けは、それが、読者側の "好みの範囲" に着地するかどうか… ってとこは、ちょっと ”ギャンブル” なんですよね。
ただ、私にとっては、こういう「好き嫌いが分かれる本」こそ、読むのが楽しかったりするんです。
やっぱり、ミステリーでは、作家さん自身が冒険してこそ、読む側も楽しめるというものなのです。
多分、この本の結末は、"問題作!"や"反則!"と呼ばれる類のものかもしれませんが、そういう仕掛けが好きな者にとっては、ふむふむって感じで楽しめちゃう本なのです。
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ここからは本の内容についてです。
ネタバレがないよう、発行元の《作品紹介》について解説していきます!
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なんだよ、それは
本邦初紹介の作家さんということもあって、《作品紹介》は、けっこう丁寧に書かれています。
いや~、不穏な感じを煽りに煽ってますね~
まあ、煽りについては3割増しぐらいに考えてください!
でも、謎が積み重なっていく部分に誇張はありません!
この本は、4章で構成されているんですが、この《作品紹介》で触れられているのは、主に第1章の内容です。
邦題が『魔王の島』ですから、当然、「魔王」が誰なのかは、物語中の謎の一つです。
ただ、核心となるのは《作品紹介》にも書かれている ”「サンドリーヌの避難所」事件” で、この事件が語られていくのが第1章なのです。
この第1章では、随所に ”意味深” で ”微妙な違和感” を感じさせるエピソードが出てくるので、ちょっとまどろっこしいのですが、そこは我慢して注意深く読んでいただければと思います!
第2章からは、視点がガラリと変わって、ページをめくる手がだんだんと止まらなくなっていくと思います。
さて、読了した後に、この《作品紹介》を改めて読むと、細心の注意をはらって言葉が選ばれてるのが分かります。
よく練られてるんです!
例えば、《作品紹介》の最初の方(下線部)に「真のサイコ・ミステリー」という言葉が出てきます。
通常、”サイコ” とつけば、 ”サイコ・ホラー” や ”サイコ・スリラー”、 ”サイコ・サスペンス” と続くのが定番ですが、この本では「真のサイコ・ミステリー」と銘打たれています。
自分なんかは ”サイコ・スリラー” として読んでたんですが、ちょっと違うんですよね。でも、読み終わった後だと、「”サイコ・ミステリー”って、そういうことだったのか」と、妙に納得しちゃうんです。
また、帯にも使われている「―― 彼女のはなしは信じるな。」という文句も意味あり気ですよね~。
この言葉自体に嘘はないんです!
彼女のはなしは信じちゃいけないんです!、でも、この惹句を鵜呑みにしてもいけないんです…(どっちやねん)
私的に言えば、「―― 彼女のはなしは信じるな。」.. という言葉を信じすぎてはならない!っていうのが正しい感想なのです。
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結局、どういう本なのか伝わりにくかったらスミマセン💦
最初の方で触れたように、この本の結末については ”好き嫌いが分かれる” と思います。
最後まで読んでみて、この結末を面白いと思うかどうか、どうか試してみてもらえればと思います。
読んでみた方も、そうでない方も、この本について考察をしてくれている、タカミハルカさんのこちらの記事をどうぞ