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中学一年生の春。約4,000文字にのぼる手紙を親友から貰った話。

小学校を卒業して、中学校に上がった春。
小学生の時にできた生まれて初めての親友から、A4の紙ぎっっちりに書かれた18枚の、約4,000文字にのぼる手紙を貰いました。

手紙の入った大きな茶封筒には、2007.4.14かきはじめ、2007.5.2かきおわりと書かれていました。
つまり2週間もの時間を割いて、私に手紙を書いてくれたということです。

その親友(以下まりこ)は中学受験をしたので、中学校はバラバラに進学しました。
小学2年生の時に私のクラスに転校生として入ってきたまりこは、両親が東大卒で見事にそのDNAを引継ぎ、小学2年生の私でも分かってしまうくらい、学年の中で群を抜いて最強の学力を持った女の子でした。

出会った小学2年生の時から既に親と同じ東大を目指し、小学生ながらに毎日夜中の12時まで勉強しているような人で、当時毎日9時には寝ていた私からすると、なにをそんなに勉強することがあるんだろう?と、不思議でたまらなく変な人だなと思っていました。

けれどそんな9時にはスヤスヤ寝る私と、夜中の12時まで勉強していたまりこは、なぜだかすぐに意気投合して、クラスでいつも一緒にいる親友になりました。

私からみて変人だったまりこは、逆に私のことを変人だといつも言っていました。
お互いに、人生で出会ったことないような全くタイプの違う人間だったので、お互いの存在が面白くてたまらなかったのかもしれないです。

いつも授業中先生の目を盗んで、塾の宿題をコソコソやっている姿が印象的でした。
親友とはいえまりこは週末も勉強が忙しく、結局小学校を卒業するまでまりこと休みの日に遊んだことはなかったです。

それでも放課後は、塾が始まるまでの時間をずっと私と過ごしていました。
本当にまりことのお喋りが至福の時間で、2人のバイバイする別れ道で毎日2時間、時限爆弾でも抱えているのか?という勢いでお喋りしをていました。

小学生の私は超テレビっ子で、勉強が忙しくてテレビを見れないまりこに、前日みたバラエティー番組の面白かったシーンを熱弁したり、毎日朝から夕方までずっと一緒なのによくそんな話すことがあったな!と感心するほどに夢中でお喋りをしました。

結局まりことは小学3年生を除いて、2、4、5、6年生の4年間も同じクラスで、本当に濃いすばらしく楽しい時間を過ごしました。

小学校を卒業して中学校に上がったばかりの5月。
まりこに再会し、冒頭にも書いた例のA4の紙18枚、約4,000文字にものぼる手紙を貰いました。
そんな手紙を貰った当時13歳から17年の時が経ち、今私は30歳になりましたが、4,000文字の手紙だなんて恋人にですら貰ったことはありません。
この先も死ぬまそんな分厚く、熱く、熱心な手紙を人から貰うことはないだろうなと思います。

4,000文字にもわたり何が書いてあったかというと、中学生に上がり学校に君がいないことにまだ慣れなくて本当に寂しいという冒頭から始まり、私に出会って驚いたこと、感動したこと、尊敬するところ、楽しかったことがこれでもかと箇条書きで理由を添えて書いてありました。

もしかして先生より勉強できるんじゃないかと思わず思ってしまうほどの学力を引っさげて、突如学校に現れたまりこ。
曲がったことや納得できないことが大嫌いで、真冬の体育の授業に半袖短パンの体操着を着なくてはいけないルールを飲み込めずに、校長先生にまで話をつけにいって見事ルールを壊し、冬の体育で長袖長ズボンの自前のジャージを着ていたまりこ。
そんなまりこは先生の言うことはなんでも聞かなくちゃ!なんて風習のあった小学生時代、クラスのみんなから良くも悪くも一目置かれる存在で、悪口を言われてしまったり、キツく当たられてしまうこともありました。
時に友達から嫌われてしまう現実とも向き合いながら、それでもどんな時も自分が正しいと思うことに真っ直ぐ進む姿を見せ続けてくれたまりこ。

そんなまりこは小学生だった私から見て(今でも!)スーパースターみたいな存在で、到底追いつかないような偉大な人間だったので、素直にそんな人から自分のことを尊敬していると書かれた手紙は嬉しくて、嬉しくて、大人になった今でも時々読んでしまうのです。

手紙の中でまりこは私のことを君、自分自身のことを俺と表現していました。

まりこは私の話し方が好きだったという。
いつも伝えたいことを、まるでその場にいるかのような臨場感を感じさせる迫真の演技も添えて、熱心に伝えてくる姿に感動し、地味にずっと真似していたという。
中学生に上がってみんなから話し方が上手だね!と褒められことを、君から話し方を勉強したおかげだよ。と綴っていました。

小学生の時に書いていた私の文集や詩集を実は熱心に読んでいたという。
君の想像力は本当に素晴らしくて、いつも家に帰って親にも君の書いた文章を見せていたよ!と綴っていました。

まりこは私のノートの取り方が好きだったという。
先生のちょっとした雑談までもノートに書き込む君のスタイルに影響を受けて、俺も今では真似するようになったよ。君は本当はもっともっと勉強ができる人間だと思う。中学生になったらきっと全員抜かせるよ。と綴っていました。

他にも一緒に時間を過ごす中で見つけた私のいいところを、惜しみなく書いてくれました。
いい思い出だけじゃなくて、辛かったことも告白してくれました。

6年生になり、中学受験のために学校を休む日が多くなって、君が他の友達と仲良く過ごすようになって、君の世界から俺が忘れ去られたんじゃないかと不安で悲しくて家でよく泣いていたんだよ。と綴っていました。
けれどそれ以上に、私と過ごした楽しかった時間について何度も綴っていました。

君に出会えてよかった。
君に学べてよかった。
君は俺の人生を変えた。
君に出会えたから、俺はモット面白い人間になれた。
君に出会えたから、俺は明るくなれた。
君に出会えたから、俺の心は大きくなれた。
君に出会えて本当によかった。
神様に、君に感謝。
と、手紙の最後を綴っていました。

「惜しみなく」という言葉以外見つけられないほど、ほんとうに惜しみなく私への愛が、手紙には書き綴られていました。
実はその手紙を貰ったあの日から今日まで、まりこに会ったことがありません。
別に特別に会わない・会えない理由があるわけでもないです。
元々一緒にいた小学生の時から2人の間には、まりこの勉強が理由で学校以外で会う文化がなかったことと、当時私はまだ携帯電話なんて持っていなかったので、離れた友達と連絡を取ることも難しかったのです。

もちろん今でもまりこの連絡先も知らず、どこで何をしているかも全く分かりません。
けれど手紙を読むたびに、まりこの声を鮮明に思い出します。
人生で何度もまりこが私に自信をくれて、元気をくれて、誰かに愛されている自覚をくれるのです。
17年という長い時間会っていなくても、小学生の時と同じ温度で今でもまりこのことを自分の親友だと思っています。
生まれて初めての親友がまりこだなんて、いつまでも私の自慢です。
そして改めて、2週間の時間を費やしてまで私に想いの全てを届けようとしてくれた、その気持ちが嬉しいのです。
寝る暇もないほど勉強していたまりこの生活を知っていたので、毎日少しずつ時間を使って手紙を書いてくれたんだろうなと思うと、手紙の重さが増します。

30歳になった私から見ても、こんなにも一生懸命に人に気持ちを伝えようとする小学生だったまりこは、本当にかっこいいと思います。

まりこが何度も繰り返し私に出会えてよかったと綴っていたけれど、私こそです。
今でも小学生時代を思い出すと、1番にまりこが浮かびます。
放課後2人の別れ道でいっぱい、いっぱい、いっぱい、一生分の面白い話をしたこと。
いつ何時も君は天才だよ!すごいよ!って担任の先生より私のことを褒め続けてくれこと。
ずっと忘れません。

手紙のパワーって本当にすごいな。
そして人からもらった褒め言葉のパワーは凄すぎる。
いつまでも色褪せず、私の人生をそっと支え続けてくれます。

全然大袈裟じゃなくて、この先誰も私のことを褒めてくれなくても、まりこから貰った手紙の言葉たちだけで、これからも元気に生きていける気がします。

ありがとう、まりこ。
私もまりこにそうされたように、これからも人のことを素直に褒めるし、素直に手紙を書く人生にするよ。

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