【book】街灯りとしての本屋
2011年に代官山に蔦屋書店が出来たとき、
『あ〜、こんな時代が来たんだ〜』
と何かイノベーションが本屋という業態におきたように感じた
そして、2015年に二子玉川に蔦屋家電か出来たときには
『あ〜、ここまで来たか〜』
と更に進化した本屋の姿に愕然としたのを覚えている
まず、今では見慣れた形だが、新刊を扱う本屋の傍らでコーヒーを飲みながら立ち読みならぬ座り読みが出来るという今まででは信じられないようなシステムが生まれた
そして、専門的な書籍を圧倒的な量で取り揃えたコーナーには、それを実際に体験するための最新の商品も購入することが出来る
暮らしと本が一体となった空間はまさしく体感する本屋である
また蔦屋書店はさらにグレードアップされ、電化製品や、家具、お酒などなどあらゆる暮らしを体感することが出来る
一日いても飽きることのないテーマパークのような本屋である
近年では本屋と図書館とカフェまで一緒になっており、本を取り巻く世界の垣根が限りなくなくなりつつあるように感じる
一方、私が最近読んだ
『街灯りとしての本屋ー11書店に聞く、お店のはじめ方・つづけ方』(雷鳥社)
では小さな街の本屋の魅力が紹介されている本だ
薄い半透明な紙で装丁された本書は、古本のように懐かしい雰囲気を醸している
11店の街の本屋が紹介されているのだが、どの本屋も個性ある店主による不思議な世界観を感じることが出来る
電子化などにより、本屋が次々になくなっている昨今において、ここに出てくる本屋の店主さんは、めちゃくちゃ表立ってポジティブではないけれど、内に秘めた熱い想いと現実のリアルな厳しさの狭間でもがきながらも楽しみながら営んでいる方が多いように感じた
また本屋ははじめたい人向けのアドバイスも最後に記されており、本屋をやりたい人にはオススメの一冊である
本屋と一言で言っても様々な形があるようだ
先の蔦屋書店のような本屋なのかカフェなのか何なのか定義は曖昧だけど大規模な本屋さんもあれば、小さな街の本屋もある
また新刊を扱う本屋もあれば古本を扱う本屋もある
絵本に特化したり、動物に特化したような専門性の強さで勝負する本屋もある
表現が合っているか分からないが鉄道オタクの世界に列車好きもいれば時刻表好きな人もいたり、写真を撮ることが好きな人もいるように、本屋と言っても個性の幅は非常に広いようだ
街の本屋に絞って考えてみると
私は建築を本業にしているが、具体的に自宅に美容院や整体、エステ、パン屋、カフェ、花屋などを併設した事例はいくつか設計してきたが
本屋を併設する事例は私は経験がない
これは本屋をはじめるには、新書をどうやって入手するか、また古書の場合権利関係や入手方法、値付けに至るまでの専門知識が必要とされること、在庫を抱えることなどのステップのハードルが少し高く感じてしまうこともあるのかもしれない
素人なので詳しくは分からないが苦労して初期投資をしたとしても、どのくらい儲けを生むことが出来るかが未知である
美容院であれば、通常のカットで4000円から5000円だとして、一日にできる客数から逆算すればある程度売り上げが見込めそうなことは想定することは出来るが、本屋となると在庫をどれだけ捌ききれるか不安があるのと、一冊あたりの利益が大きくないので売り上げの予測が難しそうである
本書でも個人で本屋を営むことの難しさを感じた。どちらかと言うと、儲けよりも好きなことをやれる喜びが強い人でないと出来ないような印象を受けた。
私自身、神保町の本屋街に通っていたり、街で見かける小さな本屋が醸し出す独特の世界観が好きである
しかし、なんだか現実的に経営を考えると苦しい業態のようにも感じる
求めている人はきっとたくさんいるのだろうが、何か小さな本屋さんにイノベーションが起きることで業界が変わるチャンスを孕んでいるような気もしている
それが昔から決められた慣習を打ち破ることなのか、最新のITシステムなのかは分からないが、業界自体を俯瞰して当たり前を疑うことで起こる変化があるのではないだろうか
私としては素人だからこそ疑問に思う業界の不思議にメスを入れることが出来ればチャンスが生まれると信じている