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ポテサラの自由、行き着けのお蕎麦屋さんの温かさ

「お主、なかなかの使い手よのぅ」
僕がこう唸ってしまうのは、
居酒屋で出されたポテトサラダの、
ジャガイモの食感とほんのりとした旨味が
絶妙だったとき。

ポテサラを侮るなかれ。 
調理に手間暇かかるわりに、 
材料費が僅かだから
さほどの値段がつけられません。
にもかかわらず、
どこか懐かしい味を求めるお客さん向けに
お店の定番に置く大将の心意気が
なんとも嬉しいのです。 

僕の十数年の行きつけお店、
銀座2丁目にある蕎麦屋さん「道しるべ」の
特製ポテサラは一風も二風も変わっています。
温かなポテサラ。
しかもお客の目の前で調理するもの。

蒸した熱々のジャガイモを入れたボウルと、刻んだ胡瓜と玉葱、ハム、マヨネーズなどを乗せたお皿を店員さんが運んできます。
そして僕らの目の前で、ジャガイモに具材を混ぜて専用のシャモジでシャキシャキ潰して和えていく。そして小皿に平等に盛ってくれます。
これぞ店長自慢の一品。

ひと口食べて僕は囁きます
「お主、なかなかやるのう!」と。

温かなポテサラを邪道と言うなかれ。
ビールにも焼酎にも熱燗にも合います。
ポテサラはひんやりか、ほっかほっかの 
いずれかが良く、中途半端は違う、と思うのです。 

仲間たちと熱いうちに
ワイワイガヤガヤして食べるから
尚更に美味しい。

なんのことはない、 
簡単に作れるではないか、
とのご批判もあるでしょう。
その実、さにあらず。

ジャガイモや玉葱などの皮をむき、
蒸したり具材を適度に刻んだり、
美味しそうに盛り付けたりで
結構、手間暇かかるのです。 
作ってみればわかります。

コロナ禍で久しくあのお店に飲みに行ってません。いつもの指定席の、あのテーブルで、いつもの仲間たちとワイガヤしていません。

ところで数カ月前、スーパーの惣菜売り場でポテサラを手にした女性客に向かって、「ポテサラくらい自分で作れ」と、見ず知らずの男性が暴言を吐いたことがニュースになっていましたね。

ポテトサラダを侮るなかれ。 
調理に手間と時間がかかるのです。
「お主、なかなかの使い手よのぅ」
との褒め言葉よりも、作り手は
安らぎの時間がほしい場合もあります。
ポテサラを作ろうが買おうが自由。
温めるか、冷やすかが自由なように。

「宴の席友の笑顔とポテサラと」弥七

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