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[Food for Well-being Survey解説シリーズ] vol2. Food for Well-being Surveyとは?

ロングテールニーズに見る事業開発のヒント 

前回の記事では、Food for Well-being Surveyを実施している目的は、食がいかに多面的な価値を持つものであるのか、Well-beingに繋がるためにフードテックはどう進化すべきなのかを解明することであるとお話ししてきました。本記事では、この食の多様な価値についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

私たちはこの食の多様な価値を「食のロングテールニーズ」という形で表現しています。

食に関わるロングテールニーズのチャート(フードテック革命より)

これまでの食産業は、上記チャートで「現在のターゲット」(青色のエリア)の「安い、美味しい、高栄養、安全安心、時短、便利」といった価値を提供してきました。このニーズは誰もが持っていて、不要という人はいないでしょう。このニーズは特に戦後飢餓の解決や、雇用機会均等法による女性の社会進出、何よりも身体的な健康が第一とされた時代に、満たされるべきニーズでした。

そうしたニーズが存在し続けながらも、現代においては、身体的な健康だけではなく、精神的な健康、社会的健康も重要ですし、モノ消費からコト消費、さらには環境問題への意識にいたるまで、様々な価値観が重要視されるようになってきました。
食においても「もっと楽しく料理をしたい」とか、「フードロスをなくしたい」とか「人と繋がりたい」など、じつは様々なニーズがあります。これまでにもあったのですが、こうしたニーズは誰がどういうタイミングで持つニーズなのか見極めるのは困難でした。

今こうしたニーズが、テクノロジーやサイエンスで可視化され始めています。たとえば、腸内細菌の検査をする、フードロスを解決するためにフードシェアリングアプリを使う、レシピサービスを使って料理を習うなど、人々の様々な食に関わる行動が、デジタル上で行われるようになってきているのです。スマートウォッチやスマートフォンで、毎日どれほど歩いたのか、体重はどれくらいか、など、生体データも分かるようになってきています。様々なデータが可視化されるようになってくると、ロングテールニーズのチャートでの右側の細かいニーズに合わせたサービス開発も可能になってきます。つまり、右側は、食の価値を再定義することによって生まれる新しいターゲット領域と考えることができます。

Food for Well-being Surveyで食のロングテールを徹底解剖

Food for Well-being Surveyは、この食のロングテールに注目した調査になっています。Well-beingをどう捉えるのか、このロングテールニーズを定量化するとどれほどのニーズがあるのか、どんなセグメントがこれらのニーズを持っているのか、どんなサービスが使われているのか、こうしたことを徹底的に分析したいという意図で設計されています。

通常であれば、top5のニーズを洗い出して集中してその市場を狙いにいくのが王道です。もちろんそのような活用をすることもできます。一方で、上記チャートの右側がどういう状況になっているのか、次世代の新たな市場が生まれる兆しはどこにあるのか、そんなことも分析していくことができます。

次回はこれまでのFood for Well-being Surveyの結果から分かってきたことについて解説していきたいと思います。

(Written by Akiko Okada)

参考リンク

フードテック革命(日経BP)