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フードイノベーションの現在地とは。SKS JAPAN 2022から見える食の未来

地球環境問題や安全保障に伴う食糧危機の高まり、健康への影響、所得格差がもたらす栄養課題など、現在のフードシステムは様々な社会課題をはらんでおり、その深刻さは2022年になって一層強まっている。一方で食や料理は栄養面の充足にとどまらず、文化を育んだり、人を繋げ、生きがいまをも創る重要な存在として進化を続けている。

このような「食に関する社会課題の解決」と「食の多様な価値を開花させていくには?」2022年9月に開催したフードテックカンファレンスのSKS JAPAN 2022では、あるべきフードシステムの未来像、多様な食の価値の本質の理解、そして共創をベースにした事業開発アプローチをテーマに議論を進めた。現在YouTubeで配信中のダイジェストムービーをご覧いただくと、会場やプログラムの様子をはじめ、本編限定の登壇者からのメッセージから、いま既に動いているイノベーションの躍動感を感じていただけるだろう。

米国発のカンファレンス、SKS JAPANとは?

開催5回目を迎える米国発のフードテックカンファレンス日本版「SKS JAPAN 2022」は「食xテクノロジー&サイエンス」をテーマに、産業を超えて食の未来を描くことを目指して2017年にスタートした。
2015年、スマートキッチンやフードテック領域の急速な盛り上がりと成長に気づいたMichael WolfがSmart Kitchen Summit(SKS)を米国シアトルで初開催。これに2016年に参加し、「食xテクノロジー&サイエンス」というテーマが持つ日本の食・技術産業への可能性を感じた田中宏隆が、日本での開催についてMichael Wolf氏とタッグを組んだ。このアイデアに、家電メーカーや食品流通、食品メーカーやキッチンメーカー、レシピサービスなど、数多くの業界から応援、共感が集まり、2017年に第1回SKS JAPANを初開催。これ以来、多様な領域で活躍する国内外のイノベーターや専門家が世界のフードイノベーション、フードテックの最先端トレンドを発信し、参加者とともに日本の食の未来づくりを前進させていくことを目指すアクション創出の場として開催を重ねてきた。
2022年は「Creating new industry through collective wisdom ~SHIFT~」をテーマに食品メーカーや流通、テックプレーヤー、投資家などの多領域から、総勢80名超の食のイノベーターが登壇。約900名、企業数にして約250社あまりがリアル会場、オンラインから議論に参加した。

全3日間、32セッションのプログラムをご紹介

SKS JAPAN 2022の3日間はフードシステムの課題から、Future Food、家電の進化、外食やスタートアップのピッチまで、国内外のフードイノベーションの現在地を多方面から理解し、ご自身の取組みへのインプット、次へ踏み出す仲間と出会える構成となっていた。もしまだ全部見切れていない、見たことがないという方は、ぜひアーカイブをチェックしていただきたい。チケット購入者はすべてのコンテンツにアクセスできる他、アーカイブチケットの購入も可能だ(後段に説明がある)。

さて、32セッション約80名の登壇者で構成された濃密なアジェンダについて、どこから見ていくべきなのか? ご自身の取組みのテーマもさることながら、食は生産から喫食、そして循環型というところまでシステムとして捉えることが重要で、是非全体像をつかむことをお勧めしたい。ここではどんなセッションが繰り広げられたのか、一部ではあるがご紹介しよう。

フードイノベーション・フードテック最先端トレンド全体像
「世界のフードイノベーション、フードテックの最先端で一体何が起きているのか。各領域の視点を交えて全体像を描くべく、Day1「フードテックトレンドの全体像」では、シグマクシスの田中宏隆から「Food Innovation MAP ver3.0」を正式発表・解説。The SpoonのMichael Wolf氏、宮城大学の石川伸一氏とともに、ビジネスとアカデミアの両視点から国内外の注目すべき領域とキーワードを体系化するという試みが行われた。また「世界のフードテック投資家の注目ポイントとは?」のセッションでは、海外の投資家にオンラインから登壇いただき、フードテック領域の最新の投資状況から最先端トレンドについて語られた。

リジェネラティブ フードシステム
SDGs(持続可能な開発目標)が日本でようやく浸透しつつある中、欧米では既にサステナブル・フードシステム(持続可能型)からリジェネラティブ・フードシステム(再生可能・価値創出型)構築へと議論の舵を切っている。そうした中、フードテックは世界のフードシステムの課題を解く手段として、様々な業種から注目を集めている。伊Future Food Institute、DSM、Googleといったグローバル組織のリーダーからフードシステム改革に向けた重要なインサイトが共有された他、Food Tech Studio - Bites!の外村仁氏をモデレーターに元不二製油の清水洋史氏と相模屋食料の鳥越淳司氏、稲とアガベの岡住修兵氏とのセッションや、トルコを拠点に中東から北アフリカでのフードイノベーションを促進するKok Projektの創設者Semi Hakim氏といった国内外のオピニオンリーダーと共に議論を重ねた。

食の価値の多様性の開放
SKS JAPAN 2017で予防医学者の石川善樹氏が提唱した「Food for Well-being(ウェルビーイングを実現する食)」。今、ウェルビーイングが包含する要素は身体的な健康だけでなく、こころの健康、そして社会的健康と幅広く捉えるべきだと、SKS JAPAN 2022では捉えた。人文知が食ビジネスにもたらすインパクトを「たべものラジオ」を配信する武藤太郎氏と武藤拓郎氏と議論したほか、ベースフードからは「完全食」を通じた新しい食の世界を、サントリーからは「トランステック」「パーソナライゼーション」など食のロングテールニーズに焦点をあて、事業開発に活かすヒントについて様々な登壇者とともに語り合った。

注目アプリケーション領域
幅広いフードテックの領域の中でも、最も注目される領域とは?SKS JAPAN 2022ではキープレーヤーや専門家を交えたセッションに加え、展示での体験も提供。『WIRED』日本版の松島倫明氏によるWeb3×食の解説、メタバース×食体験はOneRareのSupreetRaju氏、フードロボティクスはYo-Kai ExpressのAndyLin氏やTechMagicの白木裕士氏によって、最先端の情報とともに本質を捉える貴重な時間となった。展示やセッションを踏まえ、Future Food、代替プロテイン、スマートキッチン、サステナビリティ、パーソナライゼーション、Web3、流通の未来、レストランテックなど、今おさえておくべき領域を掘り下げた。

共創型事業開発モデルの進化とエコシステム構築
事業開発の在り方が変わろうとしている。世界のフードシステムの課題解決と再構築、生活者の価値観の多様化、これらの課題に迅速に対応していくには、企業や組織の枠を超えてエコシステムを構築し、共創型の事業開発モデルを構築することが重要だ。本イベントでは、佐賀県嬉野地域で「茶」の新たな価値創造に取り組むプレイヤーのセッションや、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス×Beyond Meatとの協業発表、味の素×おいしい健康の協業への想い、TOKYO FOOD INSTITUTE×東京大学の取組みなど、業種横断の共創を生み出すヒントに溢れたセッションが続いた。また、一般社団法人 SPACE FOODSPHEREやNTTデータからは、レジリエンスやパーソナライゼーションをテーマとした参加可能な共創エコシステムの実装モデルが紹介された。

次のパイオニア企業との繋がり
フードテック領域のスタートアップによるピッチセッション「Foodtech Venture Day」を、リバネスとともに同時開催。「フードテックで世界を変える」という熱いパッションを持つスタートアップ16社が登壇した。これを受け、スタートアップたちのイノベーションを産業エコシステムとして発展させるためにどうするべきかをリバネス塚田周平氏とともに議論した。シグマクシス住朋享からは「Food Innovation journey」を紹介、共創を加速化し「日本から世界に出ていくために必要なことは何か?」の議論を重ねた。

詳細なアジェンダは是非こちらから確認いただきたい。来たる2023年、日本が世界と共に食の未来をどう構築していくのか。気になるセッションをチェックしてみていただきたい。

Day1

Day2

Day3

最後に、このSKS JAPAN2022のミッションに共感し、たくさんの知見やご支援をいただいた関係者の皆様にはこの場を借りて、心から御礼を申し上げたい。

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