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[Food for Well-being Survey解説シリーズ] vol3. いま私たちのwell-beingに起きていること

Well-being =「健康」?

さて、本号より過去に実施したFood for Well-being Surveyの結果から見えてきたインサイトを、一部ではありますがご紹介していきましょう。
今回のテーマはまず「Well-being」です。これまで「Food for Well-being」という言葉をずっと使ってきましたが「Well-being」とはなんでしょうか。これには実は様々な定義があり、「幸せとは何か」に匹敵する哲学的な問いでもあります。先述した予防医学者の石川善樹氏によれば、「Well-beingとは調和である」ということもおっしゃっています。Well(善い)being(~である)という語源からも、「善くあること」とも解釈できます。

一方、「Well-being」と同じニュアンスで使われる概念に、「健康」があります。健康の定義は難しく、「どこにも悪いところがない状態」とされているようです。多くの方々は、「健康」と聞いて、身体的な健康を想起されると思いますが、WHOでは、健康の定義について、身体的な健康のほかに、精神的な健康と社会的健康にも言及しています。精神的な健康については近年意識が高まっているように思いますが、社会的健康とは何でしょうか。社会的健康も定義は難しいですが、他者との関わりの中で充実できているかどうかなど、「自身」を超えた概念も入ってきます。

Food for Well-being Surveyでは、幸福論やWell-beingについて先行研究を読み込んだ上で(注1)、次の8つの観点をWell-being、あるいは人生で大切な価値観であると仮定し、調査を行いました。

Learning(成長している)
Playing(楽しさに没頭する)
Relief(不安がない)
Health(身体と心の健康)
Autonomy(自分で決められる)
Relatedness(人間関係に満足している)
Engagement(自分の存在意義を感じる)
Sustainable(環境に対してケアがなされている)

人生において重要なことは心身の健康だけではない

上記チャートに示した項目について、人生においてどれほど大切であるかを聞いたところ、6か国について興味深い結果が出ました。このチャートは各項目について、5段階(非常に大切、まあまあ大切、どちらでもない、あまり大切ではない、全く大切ではない)のうち、まあまあ大切以上の回答をした人の割合を示しています。すると、からだの健康、こころの健康が大切だという割合と同じぐらい、例えば「自分でいられる時間を持つ」、「楽しい時間を持つ」ということも大切であることが分かります。海外においては「自分で意思決定」や「自然への感謝」、「学び成長する」といった項目も同程度の重要性があるのです。

実はこうした「楽しい時間」、「自然への感謝」、「学び成長する」といったことは、食に無関係ではありません。食を通じてこうした体験を提供していくことはとても重要です。食は身体の健康や精神の健康にも重要な役割を担っていますが、こうしたそれ以外の重要な価値観にも充分貢献することができることに注目していきたいと思います。

次号では、さらに細かく食のロングテールを見ていきましょう。

(Written by Akiko Okada)

注1:参考文献
Deci, E. L., & Ryan, R. M. (2008). Self-determination theory: A macrotheory of human motivation, development, and health. Canadian psychology/Psychologie canadienne, 49(3), 182.
Calvo, R. A., & Peters, D. (2014). Positive computing: technology for wellbeing and human potential. MIT press.他