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B2Bマーケティングで売るのは商品でなく価値

こんにちは!米田 @ マーケティング変革実行中です。

最近、よく「市場投入前の新製品・新サービスのコンテンツの作り方がよく分からない」という声を聞きます。このような場合にはどうすればいいのか、この記事で解説していきます。

商品の詳細がまだ決まっていない

新商品のマーケティングを始める際には、既存商品と違って、既存コンテンツや情報が何もないところからスタートします。そのため、既存商品のマーケティングよりも難易度が高いです。特に最近では、商品の詳細がまだ決まっていなくて、開発部門ではMVP (実用最小限の商品)の作成をこれから行っていく段階で、マーケティングも始めていくというケースが出てきています。

この手のマーケティング手法は、外資系企業では昔から行われていましたが、日本企業は割と慎重で商品が完成して世に出せるようになってからマーケティングを考え始めることが多かったようです。最近は市場が動くスピードも早いのと、海外の企業とも競合していく必要があるため、日本企業でも商品完成前からマーケティングを始めるケースが増えてきています。

ただ、商品の詳細がまだ決まっていないために、ウェブページや提案書などのコンテンツに何をどう書いていけばいいのか悩んでいる担当者を見かけます。商品の仕様や機能は、まだコンテンツに載せることができないのです。このような場合はどうすればいいのでしょうか?

B2Bにおける「商品」の位置づけ

新商品のマーケティングプランを作るにあたって、「商品」というものについて改めてどういうものかを考えてみることにしましょう。商品とは、簡単に言うと「金銭による売買で取引される物財」のことです。目に見える「物」だけでなく、「サービス」「権利」「情報」等も含まれます。

B2C (企業と一般消費者との取引)では、対象顧客の数が多く、かつ意思決定の構造が単純、短期的で感情的な要素で購入が決まる、といったことから、具体的な「商品」そのものの影響がより大きいと言えるでしょう。また、コモディティ (代替可能な商品)であれば価格勝負になりがちです。

一方、B2B (企業間取引)では、対象顧客数はB2Cと比べるとかなり少なくなり、かつ顧客企業はそれぞれ固有の目的のために計画的に経済活動を営んでいます。そのため、コモディティについては商品や価格の影響が大きいのはB2Cと同じですが、それ以外については、ひとつひとつの企業固有の中長期的な経営課題を解決してくれるための「物」「サービス」「権利」「情報」をB2Bの商品の位置づけであると考えることが出来ます。

この場合、B2Bにおける商品とは、企業の課題を解決してくれることに「価値」があり、商品を提供することは単純に「物」「サービス」「権利」「情報」を提供することではなく、これらは手段であり、課題解決を行うことが顧客にとっての「価値」であり、最終目的であることになります。

そうすると、B2B商品では、商品の具体的な仕様や機能を説明するだけでなく、商品の提供価値、解決される課題に的を絞ったコンテンツやメッセージを作ることもできることに気づくでしょう。

市場動向と提供価値からメッセージを創る

商品により解決される課題に的を絞ったコンテンツやメッセージは、以下の2つの要素を集めることで作ることが出来ます。これらは、いずれも商品の詳細が完成しているかどうかには寄りません。商品のコンセプトやビジョンが決まっていれば、決めることが出来ます。

商品が含まれる市場の動向 - 世の中の企業はどのような市場動向に関心を持つべきなのか。その中でどのような課題があるのか。
自社が提供できる価値 - 市場動向の中で存在する課題について、自社がどのように解決できるのか、実績や他社との差別化は何か。

市場動向については、その分野をカバーしている調査会社にお金を払えば情報を得ることが出来ます。自社が提供価値については、既存商品で同様の分野、もしくは近い分野の過去の実績・事例を分析することで得られる「自社の強み・差別化要素」から作ることが出来ます。そのため、この2つの情報さえ入手すれば、商品がまだ出来ていなくても、顧客に対するきちんとした初期提案を行い「価値」を売り込むことが可能となります。

「ビジョン売り」という手法

この手法は前にも述べた通り、外資系企業では昔から行われている手法で、商品のコンセプトやビジョンが決まった時点で顧客への売り込みを早期に開始するもので、通称「ビジョン売り」と呼ばれる手法です。これに対して、商品の仕様や機能の詳細を説明する従来の手法は「スペック売り」と呼ばれることがあります。

この「ビジョン売り」では、商品開発の段階から顧客に商品ビジョン・コンセプトとその価値に共感してもらい、早期から商品を共創していきます。この手法は、コモディティ商品との差別化を行い、商品の価値を高め、売上をより早く、より大きく上げるために必要なテクニックであると言われています。裏方から見ると "豊臣秀吉の一夜城" のようで気持ち悪さを感じる場合もあるかもしれませんが、このような営業手法もどんどん取り入れていくことがこれからの日本企業には求められます。ある意味、企業が投資家に出資をお願いするときの売り込みに近い手法とも言えます。そして、その提案を支えるメッセージング、コンテンツをマーケティング部門がしっかり作っていく必要があるということになります。

最後までお読みいただきありがとうございました。それでは、また!


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