短歌 #4


キッチンはいつも君が居たからさ 僕が入っちゃいけない気がする



もうにどと はなせないんだね わたしたち あの日のごめんね 言えないままで



「やさしさを履き違えたらいけないよ」 分からないけど 抱き締めていい?



一緒に飲もうって言ったビールだけひとりで冷やされてて かなしい



頬つつく 起きるな起きろ やすらかに 夢で会ってて せめて祈らせて



朝よりもきみの輪郭が見えやすいから今は昼 もう眠ろう



「また明日」 ひるがえした爪先は 目を合わせなかった僕らの祈り



自転車も 動きたがらない こんな日は こたつのうえの みかんになろう



雨音がしたたかに鳴る欄干で てるてる坊主が首を吊ってた



教室に詰まった悪意 涼しげな カーテンのなか息を止めてた



満ち足りていたら欠けを望むのに 欠けていたらば満ち足りたくなる



もう夜が深すぎるからふたりして まいごセンターにすら行けない



透き通る 陽光になり 君の目の 涙を虹にする職に就く



イヤホンが絡むことすらなくなって また生きづらさが息を潜めて



すきま風の形が分かるほど傍にいられてよかった それじゃあね



もう見たくないから浸す あの日から 紡いだ僕らの歴史辞典



おなじこと 何回だって聞くからさ おんなじように となりにいてね



ひとりより ふたりのほうが さみしくて ごめんね変わって、変われなくって



::::::::::::::


「祈り」とは一体何なのかについて最近よく考えます。両手を合わせることだけが、十字を切ることだけが、ひとつの方角に向かって思いを捧げることだけが祈りでしょうか。繰り返す毎日のそのしぐさ一つ一つに、「祈り」、ありませんか。

いいなと思ったら応援しよう!