乳がん経験者として読んでみた、西加奈子『くもをさがす』
なんか急に読書感想文です。苦笑。
インサート感想文。なんだそれは。
西加奈子というと、後悔があります。
出産の入院時の荷物に、本を持って行ったものの、出産を完全になめていたためにもろもろ疲れてしまって、すんなりと文字が頭に入らないために読破できず。
それが、『きいろいゾウ』でした。
その後読めないまま年月が経ち、今に至っております。
我が家は読まずに積まれた本の多いこと。
読みたいので売ることもできない。
積読とはよく言ったもの。
そして西先生がトリプルネガティブの乳がんになった、そしてその話をエッセイにしたというニュースを知りました。
これは読破できていない『きいろいゾウ』を差し置いても、「これは読まなあかんわ。絶対読むべきやで、あんた」と、西先生リスペクトで、エセ関西弁のおばちゃんが、私の脳内でささやきました。
仕事したり家事をしたり、ギャルの相手をしていると満足に本を読む時間もないけど、と思いながら本屋で久しぶりに文藝本を買いました。
図書館じゃなく。
買ったったぞ。
『くもをさがす』。
ふん(鼻息)。
(いや鼻息荒くして言うほどのことじゃないし)
で、読了。
内容はヘビーでしたが、結構すんなり読めました。
そこはさすがの西先生。
カナダ人の登場人物たちが関西弁でフレンドリーに出てくるので、深刻度もライトに伝わってきました。
でもトリプルネガティブ乳がんなので、描かれる状況は割と辛いものでした。
よく書き残せたな、職業魂か、と。
とにかく、西先生を取り囲む人々は色彩豊かですばらしかったです。
ジェラシーにも似たうらやましさを感じざるを得ません。
特に、ミールトレインを提案され、体調の良いときでも、彼女が(自分だけじゃなく家族も含めた)食事作りなどを忘れ、彼女が今やりたいことを優先させた、そうしろと勧めた周囲の理解は、本当にうらやましい。
そして自分も、近しい人がそういう状況になったとき、何かをしてあげられるのか? と考えると、できていなかったし、これからもできないかもしれない、という反省も感じました。
そういうことが、さらりと難なくできるひとになりたいです。
コロナ禍での闘病、トリプルネガティブの乳がんは、ワタシには想像を絶します。
こんなのに比べればワタシの乳がん闘病記からの出産記(ってほどのもんじゃないんだが他にどういえばいいのか)なんて、本当に塵のようなもんだなと。
そういう人が他にもこの世の中にたくさんいると、思いをはせては、少し途方に暮れつつ、みんな今幸せだといいなと願わずにはいられなくなりました。
途中、本当に辛くてベッドから起き上がれないような描写もあり、心を痛めながら読み進めました。
ワタシには抗がん剤での治療の経験が、幸いなことになかったので、想像ができないです。
壮絶な経験ですが、しかし非常にライトにつづっているのはやはり、さすが直木賞作家。
まあ、下衆な言い方をすると「転んでもそのままタダじゃ起きない」といったところでしょうか。
ただ、先生もインタビューなどで語っておられますが、「自分のために書いていた」とのこと(ソースがなくてすみません)。
文章になると整理もつくし、言語化して吐き出すことによって癒される、という面では、ワタシも自分の経験をnoteにまとめようと思ったきっかけなので、非常に共感できます。
(って、天下の直木賞作家に共感って、マジおこがましいなワレ)
ワタシは出産後視力がすこぶる悪くなり、というか老眼がモーレツに進んだので、気力もなく、本を読む気になれずにいました。
なので、この本を機に、メガネを新調して読みました。
『くもをさがす』は、がんばって読むつもりが、ほぼ苦労なく(途中気持ちが沈んで止まったけど)読み進められたのはさすが直木賞作家。
そしてさすがの遠近両用メガネ。
いままではこどもが保育園や学校、図書館から借りてくる絵本で、本を読みたい気分を晴らしていたのですが(そしてあれらはありがたいことに文字が大きい、字間が広い)、やっと本を読む気持ちがよみがえりました。
出産後「合間に本を読みたい」と母に伝えたら、「本読んで目を使うなんてダメ、休みなさい」と、母に咎められました。
どうやら理にかなっているらしく、中医学では血が足りなくなると目が悪くなる、また逆に目を酷使すると血を使って足りなくなる、と言われるそうな。
そんなことは知らなかった不惑過ぎは、まんまとやられてしまいました。
母はとにかく「寝ろ」と言いましたが、でも真昼間に寝れず、産後の肥立ちはイマイチでした。トホホ。
なんとか今は鉄分や血を増やすと言われる食材を取り、メガネをちゃんと使うことで本を読むことが出来ています。
あと、なんとウェブで公開されている小説(「青空文庫」や「小説家になろう」とか)を、iPhoneのSiriに読み上げさせるという荒業も覚えました…!
目を使わないので、めちゃくちゃ快適です。
「なろう」では、選んだのが『薬屋のひとりごと』…。
アニメ化されて、気になっていたのですが、ドはまりしました。
漢字が難しい&人名が難解で、Kyokoさん(Siriの音声設定です)はとてもオモシロく読み上げてくれます。
主人公の猫猫(まおまお)はそのまま「ねこねこ」。
ルビまで読み上げてくれるので、時に「ねこねこまおまお」。
そのお相手の壬氏(じんし)は「みずのえし」。
ほかにも挙げたらきりがありませんが、それも楽しみつつ、画面で確認しながら読み進めています。
おかげで最近はめっきりSiriやアレクサのものまねがうまくなり、こんな感じでギャルとアレクサごっこして遊んでいます。
ギャル「アレクサ、アレとって」
偽アレクサ「すみません、それはできません」
ギャル「アレクサ、YouTubeをかけて」
偽アレクサ「すみません、それはできません(てか宿題せえよ)」
できねえしか言わねえじゃんこのアレクサw
アレクサだけに草生える、的な。
…失礼いたしました。
次は『薬屋~』の文庫版(ネット版とちょっと違うらしいので、文庫版に沿っているアニメを見て内容違ってて驚愕したり喜んだりラジバンダリ)と京極堂シリーズの新刊を読まなきゃなー、と考えています。
あ、西先生の新刊も。
いやまて、まだ『きいろいゾウ』が待ってたのを忘れるな。
なんなら、直木賞の『サラバ!』も読んどけ。
なんだか著しく脱線しました。
感想文なのかこれは?
本を読む気にさせてくれた一冊でした。
ありがとうございました。