『学びの質を高める!ICTで変える国語授業3』の楽しみ方
Google for Education認定トレーナーの笠原です。
先日、発売になった『学びの質を高める!ICTで変える国語授業3 Google Workspace for Education編』の(自称)世界最速レビューです!
※Amazonだとまだ「予約受付中」で手元に届かないようですね。明治図書で購入しても送料無料ですから、気になる方は明治図書からぜひ!
SAMRモデルでいうと…
よく教育のICT化について論じるときに用いられる言葉としてSAMRモデルというものがあります。
SAMRモデルについての説明としては、「先端教育」の記事の中の豊福晋平先生の次の説明が分かりやすいので引用して紹介します。
『学びの質を高める!ICTで変える国語授業3 Google Workspace for Education編』(以下「ICTで変える国語授業3」)で紹介される実践をこのSAMRモデルに当てはめて考えてみると、「ついに『R』や『M』のレベルの実践が見えたぞ!」と感じます。
「ICTで変える国語授業3」を読み終えて最初に思いついたことが、次の豊福晋平先生の記事です。
コロナ禍の前から少しずつ実践が始まり、一斉休校の影響もあってGIGAスクール構想が一気に展開したことで、にわかに「S」や「A」レベルの実践が必要とされ、また、それに応えるための色々な情報発信も継続的に行われてきたように感じます(実際、このシリーズが「ICTで変える国語授業―基礎スキル&活用ガイドブック―」、「学びの質を高める!ICTで変える国語授業2―応用スキル&実践事例集―」と進展してきたことにも一致しますね。視点を変えてみると、常に「必要になるタイミング」の一歩手前にこの「ICTで変える国語授業」シリーズが出版され続けているという奇跡…!)。
本書はこれまでの入門編、基礎編から一気に違うステージに挑戦した一冊であるように感じます。
実際、本書の紹介も明治図書のサイトでは以下のようにされています。
「1人1台端末環境を最大限に活用」、「クラウド・バイ・デフォルト」など、本気で「変える!」という決意を強く感じます。
本書の楽しみ方
さて、そのような「ICTで変える国語授業3」ですが、全編通じてかなり刺激的な実践例が紹介されているため、どこから読んでも面白く読むことが出来るのですが、個人的な楽しみ方を紹介しようと思います。
自分の「やりたい」を問い直す
「ICTで変える国語授業3」を読む上で、もっとも大切なことは、「自分がどんな授業を創ってみたいのだろう?」ということを問いながら読むことです。
本書の「まえがき」の部分で、野中潤先生が以下のようなことを書いていますが、まさにこのマインドセットが重要だと思います。
「既存の枠組にとらわれず,可能性にまなざしを注ぎ,どうしたらできるようになるかを考える」ために実践を読もう!と考えていないと、本書で紹介される実践はどれも「超一流」の腕利きの授業名人たちの授業なので、「自分には無理だ…」となってしまいかねません。
しかし、「可能性」を知りたい、自分も挑戦したいという気持ちがあれば、どの実践もワクワク読むことができ、自分の授業で何ができるかという視点から多くのヒントと挑戦の種を得ることが出来ると思います。
何を大切にしたいのかを考える
ICTを使った実践は、一見すると非常に派手に見え、イベント的な授業のように思われがちです。
「ICTで変える国語授業3」の実践も例えば「オンライン会議システムで他の学校と共同授業をする」ような事例や情報発信を積極的に行うような事例も紹介されています。このような実践は現状の一般的な学校の価値観からすれば「イベントとして年に1度やる」だとか「研究授業としてやる内容」だとか、自分自身の日常の授業とは関係ないと思われがちです。
しかし、「ICTで変える国語授業3」の実践の紹介は決して「イベント的な授業としてこういうことが成功した!」という自慢話の羅列ではないのです。
先に引用したように「「クラウド・バイ・デフォルト」の学び」のあり方を提案しているのが本書だと考えた方がよいと思います。
つまり、ツールがあるから、使うのが上手な人だから、研究授業だから、本に載せるような実践だから、こういう実践が実践ができるのではなく、ICTが本格的に使える環境が整い、「授業でこういうことをやりたい」というイメージを持てるようになれば、日常の授業がここまでたどり着くことができるのだという未来図が紹介されているのだと思います。
見た目のインパクトが非常に強いのも事実です。しかし、本質は「今の子どもたちが未来を生きていくためにどのような力が必要か」という問いから創られている授業です。
授業づくりの観点として「子どもたちに何が必要か」を自問自答し続けることは、教育ICTに限らず重要なことですよね。本書の行間から「何を大切にしているのか」ということをちゃんと読み取り、その「ねがい」の価値を吟味しながら読むのがよいでしょう。
国語の授業なのか?という疑問へ
「ICTで変える国語授業3」は「国語授業」と銘打っている通り、国語科の授業実践の提案の本である。しかし、他の「国語科」の本とは全く雰囲気が異なる。
例えば、授業実践系の国語科の本と言えば、「定番教材」をどのように授業するかということが解説されているようなパターンが多く、目次を見ると定番教材が章ごとに羅列されているような場合が多いように思います。
しかし、本書は目次を見てもほとんど定番教材の名前はないし、むしろツールの名称や「こういう活動をする!」ということがズラッと並んでいます。
だから、「今度やる〇〇の単元の授業案がないかなあ」という探し方をしてしまうと、全く参考になるものを見つけられない怖れがあります。
高校の授業、特に文学教材となると「何を教えるのか」ということをかなり重視する人は多くいるように感じます(例えば、「羅生門」を高1でやるべきだとか、古文の最初は「児のそら寝」だとか…主張される方は一定数いるように体感として感じます)。
しかし、そのような発想と「ICTで変える国語授業3」はすこぶる相性が悪いということは指摘しておきます。
「ぜんぜん、教材についてどのような内容を教えるかが説明されていない」という批判が出てくる可能性がありますが、それは授業観の違いだろうと思います。
「ICTで変える国語授業3」の中で描き出される子どもたちの活動の活き活きした様子を読み、それぞれの活動でどのような成長があるのかということを読んでいかないと、「コンテンツとしてこれを教える」という観点では得られるものは何もないと思います。
国語科の授業はコンテンツを教えることなのか?という議論は根深くあります。ここではその是非は置いておきますが、自分の立場としては「ICTで変える国語授業3」の中の授業は「子どもたちの成長を願い、教室にいる子どもたちが活き活きとする姿」を目指した授業であり、そういう授業に価値があると考えています。
憧れを持ちましょう
「ICTで変える国語授業3」の実践は決して今の学校文化には身近な授業ではないと思われます。
しかし、「やってみたい」という憧れがなければ、自分の授業を変えていこうとするモチベーションや探究心は湧き上がってきません。
「ICTで変える国語授業3」は授業づくりの価値観やこれからの教室のあり方として何を目指したいのかということを自問自答するために最適な一冊です。
自分のやってみたい憧れましょう。
紹介
「ICTで変える国語授業3」は授業観を知り、掘り下げることが大切な本だと考えますが、実はこの本の執筆陣の先生方の授業に直接触れるチャンスが用意されています!
お時間のある方はぜひこの出版記念イベントに参加されてみてはいかがでしょうか?
授業づくりの観点がきっと深まるはずです。
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