何もかも憂鬱な夜に
殺人と死刑制度に向き合った、中村文則氏の作品です。本作品は刑務官の主人公と、未決死刑囚の青年を中心にした物語ですが、今回はここに登場する児童施設長が幼少期の主人公に向けて放った言葉から2つ抜粋します。
理解できないものや考えに遭遇した時、すぐにそれを否定する幼稚な精神のまま大人になってはいけない
この本、とても強いメッセージが込められていそうで、それがよくわからないんですよね…。実際、解釈に悩む言詞にぶつかることが多々ありました。その度に何度も読み返しながら、少しずつ自分の感性に溶かしていくのですが、次に紹介する言葉もその1つです。
主人公が自殺を図った際に施設長から言われた言葉です。
「命は尊い」という言葉の意味
「命(魂)の価値」とは何か。「優しい」「暗い」「かわいい」「つまらない」。施設長はそういった人間が設けた不明瞭な基準に基づいたものではなく、「40億年前にたった1つの微生物から始まり、枝分かれしながら連綿と続いてきた命の営みの一端に確かに貴方がいる」という事実に基づく普遍的なものだと考えているようです。その上で、「過去の営みの全ての意味は、今を生きている貴方に収束している」と言うことで主人公の命を肯定しています。
決して易しい本ではありませんが、ここだけでなく、主人公と未決死刑囚の青年が交わす会話も見どころになっており、是非手にとって欲しい本の1つです。すごくもやもやします。
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