看護師さん。
春の移り変わり。
新しい看護師さんが来た。
若い…。
これは…つまり…看護師なりたて?
後ろに目を光らせた、ベテラン看護師さん。
採血しますね!
マジか!?新人看護師さんが!?
手が震えてるじゃないか!
チューブうまく巻けてないって!
おーいベテランさん、注意して!
手を握って下さいね!
いつもより手汗を握って目をそらす。
私はガリガリなので血管は普通でも浮き出る。
なのに…なのに…。
血管をうまく避けて針を刺しまくる…。
うおー!いってーよー!
こんなの…こんなの…私…初めて…。
やっと、血管に針が刺さって血を抜かれる。
手を楽にして下さーい!
手を広げ、もう…身を任せるしかない…。
筒をトントンするな!針から振動がきて、
刺さっている所がドン!ドン!と痛むわ!
なんとか3本抜かれた。
恐るべし新人ドラキュラめ!
注射跡がアザになって青く腫れたぞ!
血の色ってなんか神秘的だよな…。
よく、ケチャップとかワインとか、
血を連想されるけど、全く違うんだよな…。
濃厚ブドウジュース…なんか違う。
人によって濃さや、濁りが違ってて、
あー人間って血液にも個人差があって、
この血の中に、色んな情報が隠れてんだ。
血液ってすげーな!
なんでも、お見通しなんだもん。
ここ最近、午前のリハビリ終わりに、
老体にムチを打ち、リハビリかねて、
病院の一階にある売店に行く。
今の病院っコンビニが入ってるんだ。
売店なんだけど、コンビニなのである。
遠くて、遠くて、辛くて、辛くて、ヤダ。
かあちゃんの声が聞こえる。
根性が足りないんだよ!みっともないね!
ふん!負けないぞ!弱音吐いたけど…。
かあちゃんゆずりの負けず嫌いが働く。
病院って、手すりがあるから、助かる。
売店で、何を買うかと言うと、
おにぎりを買うのだ。今は種類がたくさん。
私は欲がないのだ…これが食べたい!と、
思う事がない…なのでランダム形式です。
先ほど、ガリガリと言っていたが、
リハビリするのも、なにするのも、
食べないと力が出ないし、肉が付かない。
筋肉がないと血液すらも、運んでくれない。
だから、すぐ頭がふらつくのだ。
血液が脳に行くまでのポンプが不足してる。
だから、文章も書けなくなっちゃう…。
本末転倒に何度なった事か…。
失敗して、やっと学びました。
あっ!栄養考えて、青汁買いました。
青汁って不味いイメージだったけど、
意外に抹茶味で美味しいのだ。
乳酸菌が入ってて、お通じにもいい。
これ、重要です‼︎
これが、おにぎりと合うんだな…。
病室で、食べても美味しくない。
とりあえず、青汁を作っておにぎり持って、
とある場所に向かう。
私は、穴場を知っているのだ。
一番見晴らしが良く、春風を感じる場所。
そこに行って、おにぎりを頬張って、
青汁を飲むのだ。
今さら気付いたけど、海苔の匂いと、
外気の空気がいいと、より気分がいいし、
気持ちがいいものだ。
病院は消毒なのか、わからんが、変な匂い。
これが、私はどうも好きになれない。
息が詰まりそうになる。
軽い病気でも、重い病気にかかった様な、
そんな気持ちにさせる病院の独特の匂い。
回転率の高い病院の病棟の中、
この場所だけは、変わらずにいてくれる。
そして、私を病院から抜け出してくれる。
四季を感じ、時の流れを教えてくれる。
そんな、妄想を拗らせてながら、完食。
やれやれ…病室に帰ろう。
帰る場所が病室って!今文字打ってて、
麻痺してた…帰る場所は…病室ではない!
優しい大家が部屋をそのままにしてくれて、
待っててくれている、我が家である。
この優しい大家さんは、
勝手に我が家に入って換気してくれるのだ。
いつでも、帰ってこれる様にとしてくれる。
私は、物をあまり持たない。
部屋もほとんど人の住んでる気配すらない、
殺風景な部屋である。
大家はいつも、かあちゃんの仏壇に、
花やお供えを持って、線香をあげてくれる。
大家とは、よくかあちゃんの話をしていた。
ここに記事にしていた様な出来事を話す。
だからか、大家さんも、
かあちゃんが大好きで、世話してくれる。
あっ!大家さんに電話したくなってきた。
後で、電話しよう…。
話がそれた様な気がする…。
病室に戻る!戻るだ!帰るではない!
病室に戻って、何をするか…。
瞑想である。
最近、お気に入りのYouTubeで、
自然の音をイヤホンで聴きながら。
目を閉じて瞑想するのである。
そんな中、新人看護師が…。
お変わりないですかー!
と急に大声でやってきた。
イヤホンを耳に押し込んで無視しました。
しばらくすると、独特の匂いがしてくる。
病院食である。
おにぎり食べてるのに、お粥を食べる。
味もないおかずを口に運ぶのだ。
この味もない薄味から、
神経を研ぎ澄まし、味覚を呼び覚ます。
瞑想に神経研ぎ澄まして食す。
まるで、寺で修行している様な日々だな。
大家さんに電話してきた。
元気そうな声で、安心した。
私の部屋の布団を干してくれたらしい…。
何から何まで、すみません…。
日が長くなったものだ。
日が沈んで、薄暗い空が好き。
うっすら月が見えてくる瞬間。
写真撮ってみました。
この瞬間が大好きなのだ。
たそがれてしまいます。
はぁ…とため息ついて、見惚れてます。
夜になる前のこの時が、なんだか切ない。
お変わりないですかー!
新人看護師め…ことごとくムード壊す。
私は振り向き、
深刻な顔で、コクリとうなずく。
夜になれば、月と会話するのである。
お得意の、かあちゃんから受け継いだ手話で、
サンタマリアと言う名の月と会話するのだ。
時々、雲とも星とも会話する。
みんな寝静まった空間で、
サンタマリアと楽しく手話を使い、
あーだこーだと会話していると…。
戸が開く音と共に変な動きの懐中電灯の光。
また、来たな、新人看護師!
私は、サンタマリアとの会話をやめて、
ぼーっと外を眺めていた。
近づいてくる新人看護師…。
私は変わらず、窓をずっと眺めていた。
すると、新人看護師は、笑っていた。
どうやら、私のサンタマリアの密会は、
看護師の間で、ちゃんと情報共有されていた。
月…見えましたか?
いつも、何を話されてるんですか?
新人看護師は、結構根性あるな。
こんな、不審者の私に話しかけてくるとは。
だが、私の心はまだ開かない。
こんな短時間で、仲良くなんて出来ない。
私は、軽く会釈して、布団にもぐった。
新人看護師さんは、諦めたのか、
静かに、いなくなった。
あっ!この際だから、
いやー新人看護師が採血下手くそだって、
言ってやったんですよ!ニヤ!
といやみでも言えば良かったかもな…。
新人看護師さんの距離感が近すぎて、
逆に身構えてしまうんだよな…。
新人看護師さん、夜勤入って大変だな。
って事は、明日はいないかもな。
看護師さんってすごく気を使う仕事だな。
結構肉体労働だし、夜勤もあるし、
患者一人一人に、付き添ってくれて、
時に優しく、時に厳しく、側にいてくれる。
あの、新人看護師さん…
早く慣れればいいけど、覚える事多いよな。
いつもの看護師さん達もすごいよな…。
あのベテラン看護師さんなんか、
ひと目で、変化に気付くもんなー。
自分の担当でもないのに、
名前とか、なんの病気か、わかってて、
何か変化あれば、すぐ行動にうつせるなんて。
あー私は、あなた達のおかげで、日々を、
過ごせてます…ありがとうございます。
たくさんの人達を助けて、手当てして。
近くにいすぎて、その偉大さを今さら、
深く痛感しております。
心から感謝します…。
あの…ひねくれ者でごめんなさい。
ちょっと心開いて、なるべく、
新人看護師さんに対して優しくしよう…。
アザのついた腕を撫でて、しみじみ思う。
とりあえず、
看護師さん達、これからも、
こんな私ですが、よろしくお願いします。
なぁ…サンタマリア、
今日は、感謝の気持ちや、いろんな事に、
気付けて、とてもいい一日だったよ。