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手心手背と口鼻を弁ずる(『内外傷弁惑論』)

手の触診と口鼻の状態から内傷と外感を鑑別を行う方法が書かれている。ここでいう内傷と外感はあくまで感染症という前提があることも押さえておきたい。

分類があまりにもクリアカットすぎるという印象があり、この内容が慢性疾患でどれぐらい応用できるのか、また実際にこの内容が現代でも有用かどうかは検証が必要だろう。


手心手背を弁ずる

原文

内傷及労役飲食不節病、手心熱、手背不熱。外傷風寒、則手背熱、手心不熱。此弁至甚皎然。

『内外傷弁惑論』李東垣

翻訳

内傷や労役、飲食不節によって起こる病では、(患者の)手のひらが熱く(感じられ)、手の甲は熱くない。外から受ける風寒の病の場合には、手の甲が熱く、手のひらは熱くない。こうした鑑別法はきわめて明快である。


口鼻を弁ずる


原文

若飲食労役所傷、其外証必顕在口、必口失谷味、必腹中不和、必不欲言、縦勉強対答、声必怯弱、口沃沫多睡、鼻中清涕或有或無、即陰証也。外傷風寒、則其外証必顕在鼻、鼻気不利、声重濁不清利、其言壅塞盛有力、而口中必和。傷寒則面赤、鼻壅塞而乾;傷風則鼻流清涕而已。《内経》云:鼻者肺之候、肺気通于天。外傷風寒、則鼻為之不利。口者、坤土也、脾気通于口、飲食失節、労役所傷、口不知谷味、亦不知五味。又云:傷食悪食、傷食明矣。

『内外傷弁惑論』李東垣

翻訳

もし飲食や労役によって(脾胃が)傷つけられた病の場合、その外証(外部に現れる徴候)は必ず口に現れる。具体的には、穀物の味がわからなくなり(口失谷味)、腹部も調子が悪く、言葉を発したくなくなる。たとえ無理に受け答えしても、その声は必ず力なく弱々しい。口に唾液があふれ、眠気が強く、鼻から清い鼻水が出たり出なかったりする――このようなときは(身体内側が虚して生じる)陰証である。
一方、外から風寒を受けた場合、その外証は必ず鼻に現れる。鼻の通りが悪く、声は重く濁ってはっきりせず、話すときは鼻が詰まったような強い声だが、口の中はとくに異常がない。もし傷寒であれば、顔が赤くなり、鼻は詰まって乾く。傷風の場合なら、鼻からは清い涕(はな)だけが流れる。
『内経』にはこうある――『鼻は肺の徴候であり、肺気は天と通じている。故に、外から風寒を受ければ鼻の働きが悪くなる』と。
口とは坤土に相当し、脾気は口と通じている。だから、飲食の節度を失い、労役によって傷を受けると、口が穀物の味を知らず、五味をも知らなくなる。さらに『傷食悪食(食に傷を受ければ、食を嫌う)とは、まさに飲食の損傷を意味する』とも述べられているのだ。

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るかりん
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