虫さんたち、誰にも言わないで!
冷房の使い過ぎなのか、水のやり過ぎなのかは分からない。
僕の部屋にいるハイドロカルチャー(観葉植物)くんたちの元気がない。
パソコンをしている時も、本を読んでいる時もどうしても気になって仕方がない。一先ず冷房を弱めておこう。
妻は妻で今朝から何やらご機嫌斜めである。
どうしたんだろうと思い、近くにいた息子にそっと聞いてみた。
どうやら夕べのうちに洗濯物の取り込みを忘れていたようで、朝から降り続いている雨の餌食になっているらしい。
洗濯のやり直し。それが原因だ。
だから虫の居所が悪いんだな。
「あまり近づかない方が良いよ」
と、息子からありがたい忠告を頂いた。
今朝から夫婦揃って虫の居所が悪い。
でも、僕の虫は元来大人しい。一方、妻の虫はタチが悪くて大変だ。
「虫の居所が悪い」の虫ってなんだろう。
中学生の頃、この『虫』について調べたことを思い出した。
息子にも質問してみたが、全く興味すらないようだ。
妻の「虫」の原因を教えてくれたお礼として、ありがたい「虫」に関する講義をしてやろうとしたら、
「面倒だからいいよぉ、興味ねーし、昆虫なら好きだけど、その虫はいらん」と一蹴。
あからさまに嫌な顔をされたので、余計にムッとしてやった。
洗面台で息子と押し問答していたら、不幸にも妻が「私に教えて」と近寄ってきた。
嫌な展開だ。
さっさと歯磨きして自室へ引きこもっておけば良かった。
この「虫」は元々中国の道教の話。
人は生まれながらに身体の中に「虫」がいると考えられている。
その虫は「三尸(さんし)」と呼ばれる3匹の虫のことです。
✅ 上尸(じょうし):頭の中にいて首から上の病気を引き起こす
✅ 中尸(ちゅうし):腹の中にいて臓器の病気を引き起こす
✅ 下尸(げし):足の中にいて腰から上の病気を引き起こす
三尸は人の心の中や意識の中に居るので感情を呼び起こすんだ。つまり、人の感情は三尸(虫)が引き起こすとされています。更に、上尸はお金、中尸は大食い、下尸は淫欲を表すと言います。
「虫の居所が悪い」とは、身体の中の三尸の居場所が悪いため、ちょっとしたことでも不機嫌になったりする、そんな考えが由来になっているのです。
この三尸は60日に一度、庚申の日に寝ている人間の身体から抜け出して神様の所に行くのです。そして住み着いている人間の悪事を密告するのだと言う。最悪なのは、告げ口されると寿命が縮んでしまうと言うこと。
「三尸? 四尸の間違いでは。私には4番目の虫がいる。あなたよ」
厳しい妻の一言。
「いつも私をイライラさせる虫ね、密告も許さないからね」
どう言うつもりなんだろう。
少なくとも、洗濯物のやり直しに僕は何も関わっていない。
気がつけば息子の姿がない。既に自室へ避難しているようだ。
僕が講釈を垂れている間に逃げ帰ったのだろう。
少し時間が経った頃、息子がリビングに降りてきた。
様子を見ていたに違いない。
僕たちの不穏の空気を察したのか、息子から珍しく外食の提案があった。
「バイト休みだからさぁ、お昼ご飯は例の鳥料理店に行かないか」
妻の大好きなお店である。「いいわね!」と即反応の妻。
どうやら妻の「虫」は食べ物には、てんで弱いようだ。
まだ夏だと言うのに、僕の財布は既に冬支度。
窓の外には今日もセミが勢いよく鳴いている。
最後まで良い進めて頂きありがとうございました。
素敵なお盆休みを満喫してください。🌱
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