まだ終わってない。ここから、頂点へ。
思いの強さの差異はあれど、ファンという立場の人間がその対象に寄せる「好き」という気持ちは、等しく扱われてほしいと思う。
どんな著名人であっても、何かを応援する「ファン」という立場にいる場面では、皆、同じ。
そう思うし、そうであって欲しいとも思う。
とはいえ、直接の面識は無くとも作品を通じて知っていた著名人が、プライベートでは自分と同じものを推していたファン仲間だったと知れば、嬉しい。
単純に、嬉しい。
「え?あの人も同じだったの?」
と、急に親しみを覚えたりする。
手の届かない世界の存在だった人が、身近に感じられるようになったりもする。
その著名人が、以前から少なからず好意を抱いていた人だったりすれば、なおのこと。
それは、とても嬉しいことだ。
そう、本当は、嬉しい筈だった。
こんな悲しい形で、知りたくは無かった。
8月20日。
声優の田中敦子さんの訃報が伝えられた。
アニメファンにとっては、恐らく知らぬ人はいないくらいに著名な声優さん。
そして、私にとっては、洋画吹き替えで親しんだ声の人。
ダイアン・レインやニコール・キッドマンの吹き替え。さらに、最近では番組開始当初から夫婦でハマって見ていたテレビ番組「魔改造の夜」のナレーションでも馴染み深い存在だった声優さん。
落ち着いた、それでいて力強い、大人の女性の声。
憧れの声。
それが、田中敦子さんの声だった。
今年に入り、声優さんの訃報が続いている。
そんな中、また一人、耳に馴染んだ声が天国に旅立ってしまった。
あの声がもう聞けないのかと思うと、悲しさと寂しさがこみ上げてきた。
その夜。
田中敦子さんとは仕事仲間であると同時にファイターズファン仲間でもあったという声優の深見梨加さんのXのポストで、私は田中さんがファイターズファンだったことを初めて知った。
言葉を無くす、という時がある。
その日の夜、このXを目にした時、言葉が出てこなかった。
素敵な声で楽しませてくれていた人は、自分と同じチームを応援するファンでもあった。
知らなかった。
こんな形で知ったことが、悲しかった。
その日、北海道日本ハムファイターズは、千葉ロッテマリーンズとの2位攻防戦を制した。
ファイターズは、この日から三連勝中。
今日からは、ホームのエスコンフィールド北海道で、首位のソフトバンクホークスを迎えての三連戦である。
この戦いでファイターズは、ファンの間で「エスコンユニ」と呼ばれる黒いユニフォームで試合に臨むという。
この春、このユニフォームを着用して臨んだ試合で、ファイターズは勝率7割超えという驚異的な結果を残している。
あの日から私は、深見梨加さんのXのポストを、何度も読み返している。
そうだよ、優勝するかもよ。
見届けなくちゃ。
まだシーズンは終わっていない。
まだまだ、ここから。
天国からも、きっと応援してくれるはず。
応援するぞ、ファイターズ。
さぁ、ここから駆け上がっていこう。