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「大学無償化シリーズ③」(関西の出願状況2/2・総括)
「大阪・兵庫の公立大無償化」は、成功したのか?
2024年に始まった「大阪公立大学、兵庫県立大学の無償化」が、周辺大学に与えた影響は?
果たして、この動きは全国へ波及するのか?
2月2日の国公立大出願結果を受けて「2023年出願と2024年の出願倍率比較」という観点から、今後推測できることを展望していこうと思います。
(1)大学の「無償化元年」は、着実な一歩を歩みだした。
2024年、この注目の2公立大学の出願倍率は、前年と大差なかったものの、確実に周辺公立大学を凌駕した人気を示しました。
(2023年倍率 → 2024年倍率)
大阪公立大 ( 3.2 → 3.3 )前年微増 ⤴
兵庫県立大 ( 3.3 → 3.3 )前年同レベル ー
軒並み「志願者減」となった他の周辺公立大に比べ、確実に受験生を集めたこの無償化の公立2大学は、2024年「大学無償化元年」に着実な地位を固めたという結果となりました。
(2023年倍率 → 2024年倍率)
滋賀県立大 ( 3.6 → 2.3 )前年減 ⤵
神戸市立外国語大 ( 2.9 → 2.6 )前年減 ⤵
神戸市立看護大 ( 3.0 → 2.7 )前年減 ⤵
京都府立大 ( 3.5 → 3.3 )前年減 ⤵
このように、周辺の公立大学の多くが、出願前年減となりました。
周辺公立大学で、影響を受けたとみられる大学が続出しました。
これらは、上記2公立大に志願者を吸収された影響を受けたと思われます。
一方、志願者を伸ばした大学もあります。
奈良県立大 ( 2.6 → 3.5 )前年大幅増 ⤴
これは、
「来年(2025年)奈良の公立大も無償化に動く!」
と読む受験生が一定数いた事に起因すると考えます。
根拠としては、奈良県知事が「日本維新の会」の山下氏になったからです。
実際、高校では大阪にならって、奈良も完全無償化となりました(2024)。
大学も大阪、兵庫に続いて奈良が無償化に動く可能性が高いと思われます。
(2)関西の国公立大医学科での「大きな変動」
関西の国公立医学科では「大きな変動」がありました。
「奈良県立医科大」は、2024年前期試験から、学科試験が消滅し、代わりに「小論文+面接」での受験方式となりました。
2024年奈良県立医科大(前期)の出願は、「試験方式」が難しくなったと感じた受験生の敬遠によって、前年の4分の1に減少しました。
(2023年倍率 → 2024年倍率)
奈良県立医科大 ( 10.2 → 2.6 )前年大幅減 ⤵
それまで、奈良県立医科大を志望していた受験生の多くが、次々と「和歌山県立医科大」や、近隣国公立の医学科へと出願先を変更していきました。
(2023年倍率 → 2024年倍率)
和歌山県立医科大 ( 2.6 → 4.5 )前年大幅増 ⤴
そのほか
滋賀医科大 ( 3.7 → 4.1 )前年増 ⤴
大阪公立大医 ( 3.1 → 3.4 )前年増 ⤴
にも、かなりの受験生が流れたものとみることができるでしょう。
もっとも、大阪公立大医の出願倍率上昇に関しては、その根拠としては、「公立大無償化」の影響が大きいと考える方が自然ですね。
参考までに、そのどちらの要因も、京大、阪大、神大、この京阪神3大学の医学科出願にはあまり影響はなかったと考えるのが妥当なようです。
※今年に関しては、さほど影響のなかった3大学
大阪大医 ( 2.6 → 2.8 )
京都大医 ( 2.7 → 2.8 )
神戸大医 ( 2.8 → 2.9 )
(3)まとめ、今後の展望
公立大無償化は、東京都立大でも今年同時に実施されています。
こうした無償化先行自治体での成功事例は、全国各地方公立大でも「注目」されていることは間違いありません。
大阪、兵庫に続いて奈良が無償化に動く可能性、また周辺自治体の動きと、更には、それを見た国の対応もどうなるのか、大注目かなと思います。
次年度以降の動きについては、今後も、追いかけていこうと思います。
そのほか、奈良県立医科大の「学科試験廃止」の挑戦的なスタンスには、注目すべきものがあります。
医学科志望の人であれば、本来、医療をとりまく課題や、医療の最新動向に関心があって然るべきだし、また、できることなら医師を志す意識や資質の高い人を小論文や面接で選抜する方が理にかなっていると思います。学力は、共通テストで測れば十分だと思うからです。
奈良県立医科大の場合は、後期の募集方法で優秀な学生が集められる担保があるので、前期での思い切った改革に挑戦ができるのかもしれません。
筑波大なども、2025年には、前期画家試験を廃止する方向を表明していますし、元々、入試問題はシェアしましょうという動きもありますし、日本の入試体制を、より理想的な形に進化させることは素晴らしいことかなと思います。
こうした「チャレンジングな動き」に取り組む姿勢にはエールを送りたいと思っていますので、今後も、注目していきます。
<参考>
なお、今回の記事の元となった資料については、下記にまとめて掲載しておきます。
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