短歌：ひたむきに

手を伸ばし手に入れたいと望むなら鉄紺色の時に祈りを/銀猫
てをのばしてにいれたいとのぞむならてつこんいろのときにいのりを

A

　日本の伝統色の名前って、その名自体が美しいなあと思ってしまいます。ちなみに、鉄紺色はカラーコードで#003149。鉄色∔紺色の深い紺色で、少し緑が入っています。色自体も色の名前も、わたしのお気に入りのひとつです。

　まだジェンダー問題や性多様性などが特異なテーマとして社会で扱われていた頃の話です。アメリカ文化の講義で、担当教授がこんなことを言っていました。

「アメリカの男性でmauveという色の名前がわかる人は、デザインやアート関係の人でなければ同性愛者と認識されやすい」

　ここのくだりを強烈に覚えています。おそらく、その認識に対する反感があったから。実際、現在の大学の講義で教える側がこの発言をしたら、あっという間にSNSに乗って流れまくり、炎上するでしょう。ちなみに、mauveは淡い紫色です。カラーコードで#865C9A、ライラックやラベンダーの薄い紫が近いと思います。

　わたし個人は、色の名前をたくさん知っている人は、男女問わず尊敬の対象です。ほかにも、雨の名前、星の名前、月の名前などなど。というか、何事であっても、並よりも詳しく知っている人、体系的な知識を持っている人は、尊敬に値します。俗にいえば、どんなオタクにも偏見がないとでも言えましょうか。それは、資質に恵まれていたとしても、必ずや本人の努力がなし得たものに違いないからです。

　ただ、世の中すべての希望が努力で報われるとも限らないのが人生ですよね。そんなときには、何かに祈りたくなるかもしれません。