短歌:てのひらの記憶
小学何年生のときのことだったかはっきりとは覚えていないのですが、同じクラスの女の子が、
「タンバリンもカスタネットも、叩く楽器はみんなきらい」
と言っていたのをときどき思い出します。
特別に仲がよかった記憶がないので、たぶん、席が近かったとか、整列するときに近くだったとか、そういう間柄だったのだと思います。
わたしは木琴や鉄琴の類が好きだったので、彼女の打楽器嫌いは単なる不得手なのだろうと思っていました。
でも、大人になっていくにつれ思い出すにつれ、そういう単純なことではなかったのではないかという気がしてきました。
彼女はたぶん、叩くという行為が嫌だったのです。
いつもどことなく悲しそうで、休み時間にみんなといっしょに遊ぶこともなかったように記憶しています。
いまとなっては背景に何があったのか、何かあったのかすらわかりません。
名前も覚えていない彼女。元気にしているだろうか。
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