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短歌:懇願

頽れる なぜくれないの抱擁を僕の望みは祈りじゃなくて/銀猫
くずおれる なぜくれないのほうようをぼくののぞみはいのりじゃなくて

 実家で少々片付けものをしてきました。

 当たり前のことですが、良くも悪くも(良い<悪い)実家には思い出があるので、片付けながらあーだこーだと思い出しては、当時の自分と、その出来事に関わっていた家族のことを分析していました。

 分析したかった訳ではありませんが、考えちゃうと必然的に分析に至ってしまったのです。この思考の流れは、経験則上あまりよくありません。やっちゃったけど。

 わたしは、漫画家の清水玲子さんの作品が好きです。線が綺麗で絵が綺麗だから、というのがいちばんの理由ですが、ストーリーがなかなかヘヴィで、哲学が詰まっているものも多くあります。

 「夢のつづき」という作品は、とても印象的です。

「金持ちの家に生まれたことが、私の唯一の才能なの」

『夢のつづき』より 清水玲子/白泉社

 これは、ヒロインであるアイリのセリフです。超絶大富豪の娘であるアイリは、文字通り湯水のように金を使って自分の欲求を叶えていきます。それを大好きな人に咎められたときに、彼女はこう答えるのです。

 はじめて読んだとき、「ああ、これは真理だなあ」と思い、以来わたしの心の折り合いをつけるときの大切な指針になっています。

 望んで美貌に恵まれて生まれてくる訳ではない。
 望んで金持ちの家に生まれてくる訳ではない。

 彼女の理屈はこういうことです。

 「そうなのよ、ああいう家庭に生まれたのも、ああいう両親なのも祖父母なのも、わたしの才能の限界ということなのよ」

 人生の後悔というのとは少々違うのですが、自分の思う方向へ自分で踏み出すことができなかったときのしがらみを、そのときからかなり時間が経過してから思い返し、再度この真理で納得するようにしています。

 そして、生があるうちに少しでも思うものを手にできるよう、限界突破の可能性を考えたりしています。間に合えばいいけれど。間に合いますように。

 清水玲子さんの作品、ぜひ読んでみてください。個人的なイチオシは「秘密」です。

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