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短歌:The time has melted.

もどかしい脈が伝わる距離なのに時間とともに溶ける脳漿/銀猫
もどかしいみゃくがつたわるきょりなのにじかんとともにとけるのうしょう

 「時間がとける」という表現を、よく目にするようになりました。若者言葉でしょうか。新語や新表現というのは、だいたい若者から生まれます。これは古今東西、どこの文化圏でもそうでしょう。

 意味は恐らく、「無為に時間が過ぎ去る」とか「気付いたらこんなに時間が経っていた」というところではないかと。自分が自然に使える表現ではないけれど、それにしても何とも情緒のある美しい表現が生まれたものだと思います。最初にこう表した人は、神ですね。英語にしても、詩的で美しく感じます(今日のタイトル)。

 この場合、「とける」は「溶ける」なのでしょうか。他にも「融ける」や「解ける」もあるけれど。
 「無駄にしてしまった」「役に立たない時間だった」感を表現したいのだと思うので、それならわたしは「時間が溶ける」を推しますね。液化して流れ出てしまったことを表せていると思います。
 もしも、「夢中になっている間に時間が過ぎてしまった」というプラス面を含むのであれば、「時間が解ける」かなあ、わたしなら。

 わたしの語学フェチ第六感に拠れば、「時間がとける」は生き残っていずれ広辞苑に採用される表現だと思います。根拠はこの第六感だけですが。

 今日の短歌の場合、「時間も溶けるし脳漿も溶ける」と解釈する人もいるでしょうし、「単純に時が経って、それに伴い脳漿が溶ける」と解釈する人もいると思います。どちらでも、しっくりくる方で。

 詠んだ本人は、小難しいシチュエーションを考えた訳ではありません。誰もが経験したことがあるような、どきどききゅんきゅんの状況を、短歌の小瓶に閉じ込めてみました。

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北乃銀猫
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