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【本の紹介】 『乙嫁語り』に通じる民族衣装デザイン本
こんにちは!シルクロード文庫の渡邉俊です。
10年くらい勤めていた漫画編集者を辞め、現在はシルクロード文庫でアルバイトをしています。
この記事では、シルクロード文庫の1万冊ある膨大な蔵書の中から、埋もれた遺跡を掘り出すように発掘した本を紹介していきます!
訪問の際のご参考になればと思います。
11月から世田谷文学館で「漫画家 森薫と入江亜季展」が始まるようですね。
森薫さんといえば、19世紀のシルクロード付近を舞台にした『乙嫁語り』で知られる漫画家です。
『乙嫁語り』は編集者の中でも人気がある作品で、前職でよく話題に上っていました。
自分もとても好きな作品で、緻密に描かれた中央アジアの風俗・生活で暮らす人々の息遣いまで聞こえてきそうなほど丁寧に描かれています。
個人的な思い出になりますが、
大学生の頃、『乙嫁語り』の第1話が掲載された雑誌『Fellows!』創刊号を買って読んだとき、日本人には馴染みが薄い土地であるにもかかわらず一気に引き込まれたのをよく覚えてます。
馬上から弓を引くアミルの真剣な眼差しや服と装飾品の美しさに見惚れて何度も繰り返し読みました。
漫画の原画展って良いですよね〜。
ホワイト(修正)や消し残った下書きの鉛筆の跡とかを見ると、印刷物からでは窺い知れない作家の執筆の痕跡に触れることができるのが原画展の醍醐味だと思います。
あと原画の方がエネルギーが乗っているからか、「原画の方が圧倒的に綺麗!」って思うこともしばしば。
印刷物でも非常に美麗な『乙嫁語り』の原画、今から楽しみです!
それではシルクロード文庫発掘記vol.2はじめます〜。
今回は『乙嫁語り』に通じる一冊を発掘しました。
『Costume Patterns and Designs』(Max Tilke著 Magna Books,2002年)
洋書です。
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本書は、古代から近年にいたる世界の民族衣装のデザインをカラーイラストで紹介しています。
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数多の民族衣装の図柄を淡い色遣いが印象の残るイラストで紹介しています。
トルキスタンといえば、まさに『乙嫁語り』の舞台の中央アジア!
やはり、美しく洗練されたデザイン!
冒頭には、英文になりますが衣装の解説がなされています。
例えば、真ん中上部の鮮やかな薄ピンクと白い水滴の形をした図柄が印象的な衣服は「銀の刺繍が施された女性用の赤いベルベットの外套」と解説されています。
白い水滴は銀の刺繍と判明!実物はたいそう綺麗だったでしょうね〜。
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写真ではなくイラストなので、デザイン性がより分かりやすいです。
服飾デザインに関心がある方にとっては非常に興味深い内容かと思いますが、ただパラパラめくるだけでもうっとりできる一冊ではないでしょうか。
衣服とは土地の風土や文化に根ざしたもので、その土地を知らない人にとっては非常に神秘的に映るものだなぁ、と感じました。
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江戸時代の着物も紹介されてます!
他の国々の衣装と並んでまとめられているので、日本の着物の特異性が認識しやすいです。
この巻では、
まず古代(バビロン、エジプト、ペルシャ、ギリシャ、ローマなど)から始まり、小アジア、シリア、パレスチナ、アラビア、トルコ、メソポタミア、近東、エジプト、東スーダン、アフリカ、
そしてローマ、ビザンチウム、中世ドイツ、
次にロシアを含むヨーロッパ、コーカサスまで、
そしてアジアはインドとビルマ、中国、モンゴルと日本、インドネシア、シベリア、北アメリカ、中央アメリカ、南アメリカ
の衣装デザインが収められています。
(本館には、姉妹巻であるヨーロッパ編も置いています。)
さらにもっと学術的に学びたい方に向けて、もう一冊発掘しました!
『中央ユーラシア古代衣服の研究 立体構成の起源』(加藤定子著 源流社,2002年)
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中央ユーラシア(中央アジアとその周辺)の古代・中世初期の古墳出土の実物の衣服の復元作業により、皮から布への衣服の移行、衣服の立体構成の形成と発展、変容の過程を明らかにする試み。
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著者の加藤定子さんは中央アジア考古学の権威である加藤九祚さんのご夫人であり、ご自身も中央アジアの服飾の研究をされた方になります。
ご興味ある方は両書を読み比べてみてはいかがでしょうか。
それでは本日はこのへんで!
最後まで読んで頂きありがとうございます。
紹介した本はシルクロード文庫内に置かれていますので、ご興味ありましたらお立ち寄りください。
宝探しみたいに、紹介した本を"発掘"してみるのも一興です!
text by 渡辺俊