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【本の紹介】140年前の人々の暮らしに思いを馳せる写真集
こんにちは!シルクロード文庫の渡邉俊です。
この記事では、シルクロード文庫の1万冊ある膨大な蔵書の中から、埋もれた遺跡を掘り出すように発掘した本を紹介していきます!
訪問の際のご参考になればと思います。
最近、自宅に食洗機を導入しようか迷っています。
会社員を辞めてから自炊を日常的にするようになったのですが、洗い物がとにかく溜まる溜まる…。
料理すること自体はわりと楽しくやっているのですが(もっぱらの悩みとしては味が安定しないことです)、洗い物が本当にメンドくさい!
ただ、台所の設置スペースを考えるとなかなか手が出しづらい状態です。
そんなときに見つけたのが1960年の団地のPR動画。
団地生活が憧れだった時代の入居者の生活の様子がわかります。
驚いたのが、できたばかりの団地は、ペンキが乾ききっていないので2年間程度、家具と壁の間をすき間ができるように置くことが推奨されています。
部屋が狭くなる…!
そんな、現在とかなり近いですが、少し違う生活が垣間見れてとても面白く見ました。
当然、食洗機もある訳もなく、手洗いをしているのを見て、
「これが普通だよな」と思い直し、今日も食器洗いに勤しんでいます。
さて、そんな感じで自分は昔の生活の様子を知るのが結構好きなのですが、ちょうど良い本を発掘しました。
『百年前の日本 モース・コレクション/写真編 』(小西 四郎・岡 秀行 構成、小学館)
『モースの見た日本 モース・コレクション/民具編 』(小西 四郎・田辺 悟 構成、小学館)
の2冊です!
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アメリカの東海岸ボストンの北にある小さな港のセイラム。そこにあるピーボディー博物館には、今まで知られることのなかった大変なコレクションが眠っていた。それは、大森貝塚を発見したことで有名なモース博士の持ち帰ったコレクションである。古い日本を写した写真、そして日本の民具、生活用品などその数は3万とも5万点ともいわれる。 1982年10月、このコレクションを求めて、渡米、そしてピーポティー博物館の地下の収蔵庫でモース・コレクションの調査、発掘が始まった。モース・コレクションを日本に紹介する第一弾となったのが、この写真集『百年前の日本』である。
タイトルは100年前になっていますが、それは初版が刊行された1983年から数えてのこと。
2024年の今からみると140年前の日本人の生活の様子がカラー写真も交え、多数紹介されてています。
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もう漫画や映画の中くらいでしか見ることができなくなった火吹き竹で火をおこしている様子。
キャンプやBQで風を起こすことは今でもやる時はありますが、140年前はしれが日常だったんですから、文明の進歩を感じます。
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『モースの見た日本 モース・コレクション/民具編 』には写真と図を交えながら、当時の生活のため道具や農具、遊具などを紹介してます。
『写真編』と『民具編』を一緒に読むと、『写真編』だけではわからないディテールが見えてきて楽しいです。
本書で紹介されている写真を撮ったアメリカ人であるモースの日記や随筆も掲載しているのですが、箸を大絶賛しているのが面白いです。
1877年(明治10)7月17日 江ノ島
……もしわが国の軍隊で箸の使用法を教えることができたら、兵隊の装具一式からナイフ、フォーク、スプーンを取り除くことができるだろう。また囚人はみな箸の使い方を教わるべきであり、あらゆる公共の場所にそれが備えられるべきである。
私は箸を、人間が発明したもっとも簡単で経済的な道具として世界中の人々にすすめたい。
そんなにか…!?
最近のアメリカ人は、箸を普通に使えると聞いたことあるので、もしかしたらモースが母国に紹介したのかも知れないですね。
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緊張が伝わってくるようです。『写真編 』P75より
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140年で人間の生活がかなり変わったことを改めて実感します。
この頃の人たちが実際にどんなことを考えて暮らしていたのかは、写真を眺めていてもなかなか想像しづらいです。
令和の東京で生活する個人として気になるのは、その時代に生きる人々の幸福度です。
幸福度なんていう尺度自体が曖昧さを伴うものではあるのですが、この頃から文明は発達したものの、幸福度は果たして上がったのだろうか。
ただ、どんな時代であろうと人は日々の暮らしを過ごしていくのだという至極当たり前のことをこの本を眺めながら、考えました。
それでは本日はこのへんで!
最後まで読んで頂きありがとうございます。
紹介した本はシルクロード文庫内に置かれていますので、ご興味ありましたらお立ち寄りください。
宝探しみたいに、紹介した本を"発掘"してみるのも一興です!
text by 渡辺俊