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北海道で育つ身近なアオイをまとめてみたよ。

今年の春から青いハーブティーの茶葉になるウスベニアオイ(Malva sylvestris)を鉢植えしはじめたんですよ。

定植した5/2のようす

抽出がうまくいけば涼しげで真っ青なハーブティになる可食花(Eddible flower)ですね。
日常の風景をよ〜く観察すると、実はハーブティに多用されるウスベニアオイ(Common Mallow)以外にも似た葉っぱや花のつくりをしたマロウ=葵の仲間がそのへんでわりとたくさん見られることに気づいたおいらです。
(バイトしてるハーブ園にもわりかし種類があったので!)

よく観察してみれば仲間がいっぱい居ることに気付かされたのでプチ図鑑みたいなの作れるじゃ〜ん!と思い立ち、ここ最近でのアオイの仲間を撮り集めてみた次第でっす。


通称に関して、和英文化的にそれぞれ語の意味が異なってる場合が多いことから和名/英名-Japanese name/English name表記で紹介します。
カッコ内に植物の世界共通ラテン名である学名を表記します。

🌺ウスベニアオイ(Malva sylvestris L.)

Leaf & Flower

英語圏ではCommon mallow、いわゆる"普遍的なマロウ"の意で流通しているゼニアオイ/Malva(ラテン語)の一種ですね。
見分けの特徴としては、花びらに濃色の筋が入ったような模様があること。
おいら宅にいるウスベニアオイは花色が薄い品種のようです。

後述するハーブティとしての盛んな利用文化から、一昔前には薬用マロウの意であるMalva offichinalisというシノニム学名があてられていたようです。

offichinalis(拉) - オフィキナリス〜薬用の。
ほかLavandula offichinalis(コモンラベンダーの旧名)

花はピンク色だが80℃ほどの湯に浸すと鮮やかな青色を呈する

この品種が主にハーブ(お茶)として利用されているようです。
ハーブとしての利用でいうと、別にこのウスベニアオイだけが毒性的に可食という意味ではなく、、、
アオイ科植物は普遍的に食利用ができる植物(伝統マシュマロ、オクラなど)なのですが、特にこのウスベニアオイはハーブティとした時に見た目が美しいためにこの種が選ばれてるのではないかと予想しています。

基本的に学名にMalvaあるいは通称名でMallowとつくとこういった小型花のアオイ科ゼニアオイ属を指すようです。

種小名"sylvestris"~野生の

ラテン語の意味解説

ちなみに世の中にはジョーマローンロンドンという英国香水メーカーより本種ウスベニアオイをイメージした香水が存在するようです。
しかし1万円と値が張って高い…

🌺ジャコウアオイ(Malva moschata L.)

白花種(var. Alba)
Musk mallow Leaf
Leaf & Flower

花は上記のウスベニアオイ/Common Mallowに似ているのですが、切れ込みの深い葉っぱにわずかながらのムスク様の香りがあることから学名ともどもジャコウアオイ/Musk mallowと呼ばれています。

注釈入れておきますが、ジャコウアオイ(M. moschata)は
植物ムスク香料が採れない方のMusk Mallowです。

英通称が同じMusk Mallowには香料(精油)が採れる方と採れない方とがある。

キンポウゲ科植物のように激しい葉の切れ込みが特徴的なのがこのジャコウアオイ/Musk mallowでしょうか。
そして桜の花に似たような花の形状をしています。
後述にこのジャコウアオイにごく似た近縁種マルバアオイを載せてるのですが、見分けは葉っぱの構造くらいでした。(素人には見分けが難しいやつ)

種小名"moschata” ~ ムスクのような

ラテン語の意味解説

🌺マルバアオイ(Malva alcea L.)

Great musk mallow Flower
Leaf & Flower
葉っぱが異科植物ローズゼラニウム(Pelargonium graveolens)に似る。
アオイ科ではないがローズゼラニウムの和名にはニオイテンジクアオイと"アオイ"が付く。
たくさんの花を付けブッシュを形成するマルバアオイ
ゼニアオイ属ながらブッシュとなる全体像

マルバアオイ/Great musk mallowは見た目が上記ジャコウアオイ()と酷似しており素人目ではなかなか判別つきづらいのですが、ジャコウアオイに比べて葉っぱが丸みを帯びていることから"丸葉葵"として区別できます。
(後述しますが、原生地では高標高に育つのが本種Malva alceaのようです)

花びらがジャコウアオイに比べて角ばっているのが特徴のよう(自信ない)。
そしてジャコウアオイに比べふた回りほど大きく育ちブッシュを作ります。
英名の意味は読んで字のごとく、"デカいジャコウアオイ"の意。
葉っぱがカワイイので個人的に気に入ってるアオイです。

フランス語書籍「Cuisiner les plantes de montagne」にて本種の記載がありました!フランス国内においてMalva alceaは高山植物の扱いのようです。
ジャコウアオイ(Malva moschata)と生育地域も重なり交雑種もつくる本種マルバアオイですが、近縁種ジャコウアオイと比較すると、より北方生であり、耐寒性を持ち、高標高地での自生がみられるようです。

種小名"Alcea=Althaea” ~ ギリシア語のalthaino(治療)から

ラテン語の意味解説

🌺タチアオイ(Alcea rosea L.)

All view (Yellow flower cultivars)
キバナタチアオイ
Flower
Alcea rosea Leaf

北海道の街中で最も目にするアオイ科植物がこのタチアオイではないでしょうか。
夏の風物詩と言っても差し支えないほど、タチアオイの名を知らなくともこの姿に見覚えがある人は多いはず。
広くいうとアオイ科の仲間なのですが、上記のゼニアオイ属/Malvaのクラスからは外れてタチアオイ属/Alceaに類されるアオイです。
(歴史的にウスベニタチアオイ属/Alceaに含められていましたがタチアオイ属/Alceaとして分離再編されました)

わりかし大きく育つアオイの一種ですね。花もデカいので同じくアオイの仲間であるハイビスカスを思わせます。
北海道の田舎育ちのおいらことエフゲニーマエダはこのタチアオイを「コケコッコー花」(北海道地方での方言)としてしっかりと認識していました。
親の北海道人教育のおかげですね。笑

とにかく花茎を上に伸ばす性質が強いためか、モノによっては秋までに3mを越す草丈になっているものも少なくありません。(小さい頃は怖かった)
対して葉っぱの付くブッシュ部分は腰丈くらいで落ち着いてしまうので、遠目でみるとデルフィニウムのような咲き姿にも。
このとにかく花茎を真上に伸ばす性質から「大望」や「威厳」といった花言葉が付いています。

種小名"rosea” ~ 薔薇、ローズ

ラテン語の意味解説

🌺ウスベニタチアオイ(Althaea officinalis L.)

Botanical art of Alhaea offichinalis L.
文化的には薬草であるので、花はなかったが北大薬草園に居た。

文化的に重要なアオイの一種と思うので特別に載せます!
和名だとウスベニアオイ(Malva sylvestris L.)と紛らわしいアオイ科の一種なのですが、こちらはタチアオイ/Alceaの仲間
分類史的にこのAlthaea(アルタエア)→Alcea(立葵属)が分離独立したようです。
見た目は小柄らしいのですが、直根性であり、立葵と同じくブッシュを作らず比較的まっすぐ上へと成長するようです。

学名の種小名にはしっかり薬用植物を表すoffichinalisが入っているタチアオイの一種なのですが一体どのような薬利用があったかというと、なんとBBQで欠かせないアイテムであるあのマシュマロの由来がこのウスベニタチアオイ!
このAlthaea offichinalisからかの銘菓マシュマロが生まれたワケです。
なのでこのウスベニタチアオイの英名はマーシュマロウ/Marsh mallowなのです!(保護粘性が高かったようなんですね〜)

調べてみると、花びらを茶葉とするゼニアオイとは利用法がやや異なっていて、もっぱら根っこを食用していたよう。
元祖わらび餅のように根っこから得たでんぷんを加熱調理して粘性を持たせて伝統的なマシュマロにしていたようです。
なお古くから可食植物として扱われてきたためか、英語圏での通称が"Hockherb"(食える立葵)のようです。

まさかあの洋菓子マシュマロの生まれがこのアオイ植物から作られていたなんて。。。

種小名"offichinalis” ~ 薬用の

ラテン語の意味解説

🌺ハナアオイ/モクアオイ(Malva arborea L.)

LAVATERA next to Lavender.

特別に載せます。数多くの園芸図鑑において、Lavenderの次にくる植物がこのモクアオイ、英称Lavatera/ラバテラです。
ラバテラ命名の由来を調べてみると、欧州の植物学者ラバター兄弟が命名したからだそうです。
この種はかなり情報が錯綜していて、ゼニアオイ属(Malva)なのかハナアオイ属(Lavatera)なのか分類の歴史からかなり難解な部分があります。
※生物分類学的分類と園芸分類で名称の偏りがある事がわかったので本記事末にて後述‼︎

少なくとも
Lavatera arbolea→モクアオイ(Malva表記もある)
Lavatera trimestris→ハナアオイ(和属名としても)
という和名分けがなされるようです。

原産地なんかの情報を調べてみると、北はブリテン島から南は北アフリカなど欧州南北の沿岸域に生える、樹状性であり、海浜性でもあるマロウのようです。
なので学名に樹木を表すラテン語のArboreaが当てられてます。(後述”ムクゲ”のように木本となるかは不明)

種小名”arborea” ~ 樹木性の

ラテン語の意味解説

🌺カシミールモクアオイ(Malva cachemiriana)

花びら同士が離れているのが特徴
直径10cmほどで比較的大輪で、風車のような見た目の花をつける
葉っぱはやや厚手でアサガオのような縦長い葉っぱをつける
つぼみはねじれる
風車のような咲き姿。
アオイ属の特徴として南向きに花を向けるのは「葵」に含まれる「癸」の語源。
2mほどのブッシュを形成する

英国の王立園芸協会が創刊する園芸作物辞典(2019)ではかつて存在していた旧ラバテラ属(和:ハナアオイ属)に配置されており、旧学名はSyn. Lavatera cachemirianaでした。
2024年現在の分類ではラバテラ属が解体されて本種はゼニアオイ属(Genus Malva)に移管されており、学名はMalva cachemirianaです。

名前から察するに、インド奥地のカシミール地方を表す名称となっているようで、和名は調べても出てきませんでした。
英語圏での通称はKashmir mallowKashmir tree mallowがよくみられます。やや高性に育つためか、それとも大型種が多いラバテラ属に属していたためかツリーマロウの名称もついていますね。

原産地は種小名や英通称(Common name)が表すとおり、カシミール地方を中心として西はイランから東はヒマラヤ山脈西部や新疆自治区の半乾燥および亜高山帯に自生しているようです。
中央アジアの亜高山を代表するアオイとみて間違いなさそうですね。

一見すると、ジャコウアオイやタチアオイに近しい葵/マロウとは似つかないやや大柄なブッシュと、互いが大きく離れて風車の羽根のように細長い花びらをしていますが、構造的にはアオイ科の特にゼニアオイに近しい姿をしています。(花弁の裂け目など)
花は比較的大きく子どもの手のひらいっぱいほどの大きさ(約10cmほど)で、タチアオイ(Alcea rosea)にも似たサイズ感をしています。
大柄に育つから花も大きくなるのでしょうかね?

種小名”cachemiriana” ~ カシミール地方の

ラテン語の意味解説

🌺アメリカフヨウ(Hibiscus moscheutos L.)

手のひらよりもデカい花を咲かせる
(北海道に生育するアオイ科の中で最も特大な花?)

まさかまさかの学名→ハイビスカス属です、北海道におりました。
日本語属名のアメリカフヨウは英訳するとハイビスカス(或いはRose mallow)になります。なのでハイビスカスの兄弟的植物種として認められます。
さすが北米"大陸"原産の植物。花のサイズがデカイ。
島国育ちの植物と違って大陸育ちはスケールが大きいのです…

※日本固有種のフヨウ(Hibiscus mutabilis)は英名が無い!

フヨウの仲間は日本にもいくらか存在しているのですが、ほとんどが南方系植物なので北海道では生きられません。
しかし北海道など寒冷地でも生育できるハイビスカス属の仲間…となると北米原産のこのアメリカフヨウ(Rose mallow)となります。
北方性ハイビスカスという位置付けでしょうか、おいら的にはそう捉えています。

有名なハイビスカスフヨウとの見分けについて、、、
まず日本育ちのフヨウに関しては、関東以南の温暖地でしか育たないので消去法的に排除…。
ハイビスカスに関しても無論そうなのですが、ハイビスカスとの大きな違いは雌しべ雄しべが長く突き出るか出ないかが見分けに使えそうです。
長く突き出るとハイビスカス🌺の特徴となるのですが、雌しべ雄しべが突き出ないとなるとこのアメリカフヨウとなります。そこが北海道であれば!

種小名”moscheutos” ~ ムスクのような香りのある

ラテン語の意味解説

🌺ムクゲ(Hibiscus syriacus L.)

どちらかというとハイビスカス風な花を付けるアオイ科フヨウ属ムクゲ。
ムクゲは多彩な品種があるので白花種も存在。

花柱(おしべめしべ)が長く、どちらかというとハイビスカスっぽい花の作りをしているムクゲ。
広くのアオイ(Genus Malva,alcea)はおしべめしべがそこまで長く突き出ないんですが、ハイビスカス属は花柱が長く出るんですね。
そして花びらの端も真ん中がちゃんと窪む特徴を持つのがゼニアオイ属(Genus Malva)ら。どのゼニアオイ属の花を見ると、花びら一枚の端中央が凹んでいるのがわかります。
けどこのムクゲは花びらの端がガタガタしていたり丸かったりで不明瞭、、、これはハイビスカス属に共通の特徴のようです。

さらなる花の特徴が、ムクゲは木本性でありたくさんの花を付ける種なので、開花エネルギーコスト的に花の寿命が1日程度のようなのです。
なので開花してから受粉が完了すると即座に萎れてしまう開花特徴があるよう。

葉はどれも小さく、カエデやツタウルシのよう
枝先にたくさんの花芽をつける
木本なので樹上の高い位置に花がたくさん付く。
種子を広い範囲へ蒔こうという植物の生存戦略だ。

こちらアオイ科ムクゲ(Hibiscus syriacus L.)も上記アメリカフヨウHibiscus moscheutos L.)と同じくハイビスカス属(Genus Hibiscus)にグループされているアオイ科植物になります。
北海道でも育つハイビスカスの仲間2つ目になりますね!

見分けは簡単で、バカでかい花を付けていればアメリカフヨウ、樹木のように高く育っていればムクゲと見分けられるでしょうか。
暖地の本州ではわかりません。

花が付く枝の根元を辿るとしっかり太い枝となっている

こちらムクゲが面白いのは、今までの紹介ではいなかった、木本類(幹を持ち高い背丈となる)のアオイである事。
初めましてのとき、花の特徴は全体的にアオイなのですぐさま「お前もアオイだな‼︎」と見分けがついたのですが、問題なのはしっかりと樹木であった事。。。

アオイの中にも学名に樹木:arboreaを持つ種がいるので噂の旧ラバテラ、モクアオイ(Malva arborea L.)か?と二の次に思ったのですが、花の様子がどうも違う。
木本低木でハイビスカスっぽい花を咲かせる日本でも育つアオイ科など特徴から調べてみると”ムクゲ”に差し当たりました!

▶︎木本性のアオイ

木本の“低木”といってもラベンダーのように膝丈サイズの灌木サイズではなく、しっかり見上げるほどの5,6mにもなる立派な樹木に育つようです。
おいらが発見したムクゲもそんな感じでした!

北海道でも育つアオイ科をサイズでクラスすると
草本サイズ→ゼニアオイ属(Malva)
生垣サイズ→タチアオイ属(Alcea)
木本サイズ→ムクゲ(Hibiscus syriacus)

というサイズ分け、栽培選択ができるようです。

つまるところ、アオイの花を付ける比較的大柄なガーデンツリーが欲しければムクゲ(Hibiscus syriacus L.)を植えるとよい、という考え方ができるでしょうか(笑)

種小名”syriacus” ~ シリアが原産の?

ラテン語の意味解説

🌺ハイビスカス(Hibiscus rosa-sinensis L.)

見た目はムクゲだが雌蕊がとにかく長いですね!
葉っぱはアオイ属特徴の三つ葉型とはならないよう
立派でデカい雌蕊

北海道でブナンにみられる植物か?と言われると色々語弊はあるものの、北海道各所の植物園温室では南国植物の定番として見られるよね!ということでやっとハイビスカス属の親玉である”ハイビスカス”登場です!
10月に入り温室で開花したキンモクセイの香りを楽しみに行ったついでにいくらか開花していたハイビスカスも目撃できたのでパシャり。

アオイ科植物の代表例に挙がるハイビスカスですが、「葵」の仲間として広くみると日本では馴染み深いタチアオイ(Alcea rosea L.)とも近しい仲間関係で、同じく黄色や赤色の花色を持ちます。

ハイビスカスといえば紅色の花🌺だが…

Theハイビスカス!と言えるようなイメージ通りの色鮮やかな花も1輪だけいたのですが、形成不良八重咲きなのかバラのようにモシャモシャになっていました。アララ…

基本的に樹木の上の方に太陽を仰ぎ見るようにして花が付くようなのです。(この性質は葵/Kiという字の由来でもある)
なので花が少ない時期などはかなり高い部分にしか花が見られないことになり。。。
鮮やかな葉っぱの緑色に囲まれた紅花ハイビスカスは南国のバラを思わせるような美しさがありますね。学名にもバラの意Rosaが含まれてますし!


▶︎番外編。野菜だったり香料だったりするアオイ

🌺オクラ/トロロアオイ(Abelmoschus esculentus (L.) Moench)

スーパーでよく目にする野菜で、モロヘイヤとかおひたしになるあの有名なオクラ、実はアオイの果実なんです。なので和名は「秋葵」(Jap:Autumn Mallow)。
ちなみに属名トロロアオイの漢名(Chinese)は「黄蜀葵」(おうしょっき)。
文字通り黄色い花のアオイであることを表していますね。

植物分類学上では、驚くことにオクラはかつてハイビスカスと同じ仲間とされていました。が、のちにトロロアオイ属(Abelmoschus)に移されました。
あのオクラが花の美しさで有名なアオイの仲間であるとは想像がつきにくいですが、確かに上記の黄花ハイビスカスとソックリな花を付けていますよね。

🌺ニオイトロロアオイ(Abelmoscus moschatus Medik.)

Abelmoscus moschatusで画像検索した表示結果。
紅花品種に加え、やはりオクラと似た花と熟した果実が出てくる。

まず最初に注釈入れておきますが、ニオイトロロアオイ(A. moschatus)は
植物ムスク香料が採れる方のMusk Mallowです。

英通称が同じMusk Mallowには香料(精油)が採れる方と採れない方とがある。

【Malva属のジャコウアオイと英名が同じである件】
ややこしいことに、英語圏での通称名がマロウ/ゼニアオイ属のジャコウアオイと同じMusk Mallow。
オクラの仲間であり、植物ムスク香料が採られるこちらの方も通称名はMusk Mallow。(Musk Okuraにはならなかったのか…)

【Malvaではムリだが、オクラの仲間からは香料が採れる件】
数々のアオイの仲間を調べていくうちに麝香っぽい香りがするアオイの仲間はいくらか発見したのですが、香料採取が可能なアオイは見つからず…
で・す・が、実はアオイ科のアオイ属に近いところ(トロロアオイ属)でしっかり香料Ambretteが採れる植物が存在していました!驚きました!

しかも何よりの驚きであるのが、私たち日本人がごく普通に野菜として食しているあのオクラの兄弟的同属植物から香水の原料が採られているんです!

【香料Ambrette】
アベルモスカス・モスカタス
から得られる香料の名称はアンブレット/Ambretteで、どうやらフランス語のようです。さすがは香水文化の中心地!(正しい発音はアムレらしい)
香料史の中でアンブレットはどのような扱いであったかというと、香水に使用して爆ウケした麝香鹿ムスク(動物性天然ムスク)を採り続けるのは動物福祉的にどうなの?ということで代替ムスクを探すことになります。
そこで着目されたのが、ニオイトロロアオイ(A. moschatus)の種子。花ではなく種子だったんですね。
製造法としては粒々の種子を粉砕し、水蒸気蒸留にかけてムスク香の精油を得ていたようです。
ですが現在は化学合成技術が発展したことにより、量産ができて長時間香る合成ムスクに取って代わられたようです。


【注釈】

1)AlthaeaとAlcea

タチアオイ属のラテン名Alceaはアルセアと呼び、ウスベニタチアオイ属(仮称)/Althaeaはアルテアと読みます。
英称それぞれ【タチアオイ→Hollyhock】【ウスベニタチアオイ→Hockherb】

分類学的にはウスベニタチアオイ/Althaeaより後発で新設・分離独立させられたタチアオイ属は表記がより簡略なAlcea/アルセアが宛てられているようです。
日本国内の情報では認知が遅れているためか、ウスベニタチアオイとタチアオイが同義植物として扱われているようで、タチアオイもAlthaeaにまとめられている資料がほとんどのようです。後述する旧Lavateraのモクアオイもタチアオイとされている資料もありました。

海外では【ウスベニタチアオイ→食用アオイ】、【タチアオイ→園芸アオイ】という認識のようです。

2)Lavatera属

RHSなど園芸図鑑などではしっかりLavatera属が存在しているのですが、分類学的にはMalva(ゼニアオイ)グループに統一される傾向があるようです。
特にRHSの植物図鑑ではSyn.Lavatera trimestrisが通称Royal mallowと英国の名を冠していたためかLavatera属が尊重されているようです。

例えば、ハナアオイ属ハナアオイは種小名'trimestris'ですが属名が園芸資料上だとLavatera trimestrisで、分類学的にはMalva trimestrisとなっています。
※'trimestris'〜ラテン語で"3ヶ月間咲く"の意。
ハナアオイ属モクアオイは種小名'arboea'ですが属名が園芸資料上だとLavatera arboeaであり、分類学的にはMalva arboreaに分類されています。

ハナアオイとモクアオイはどちらとも日本ではあまり馴染みのないアオイ科植物であり、和命名ではハナアオイ属ですが英語圏だとLavateraはtree-mallowの認識が強いようです。
物により日本語の資料では、サイズ感が似ているためかモクアオイが違属タチアオイ(Genus Alcea)と同一視されている資料も散見されます。

園芸資料では1836年-再分類以前のLavatera属分類を尊重している?傾向がみられるようです。
1753年→カール・フォン・リンネがLavatera属に分類
1836年→フィリップ・バーガー&セービン・ベルトロ氏らがMalva属に再分類
1998→martin forbes rayの遺伝解析により DNA的にはMalvaと分類


Taxonomy history about Genus Lavatera.

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