【水仙続編!】5月上旬、咲いてるスイセンが変わってきたぞう??
読書をしていて得られた「桜」についてのうんちくを一つ垂れ流すと、、、
「桜」って古来日本人にとって農業の作物豊穣の神が宿る木とされてるらしいのですよ。
特に稲作において、桜の開花は稲作スタートの明確な合図(ここは林業でも同じ)であり、桜が咲いてから散るまでの開花期間の長さでその年の豊作凶作を占っていたりもしたそうです。
開花期間が長持ちすれば稲作の神が長く見てくれているし、早くに散ってしまえば稲作の神が足早に去ってしまった、とみていたそうな。
(参考図書:世界史を大きく動かした植物 - 稲垣栄洋)
そう考えると、今年の桜シーズン(北海道・道央エリア)は気温の高さゆえかわりかし早く過ぎ去ってしまった気が。
家の裏の桜でさえもなんだか、ものの3日くらいでピンク色が失せてしまった感じがしています。
ただ!
そんな春の過ぎ去りが早く感じられた中でも、いまだ健気に咲いている花たちがいます!!!
そうです、水仙/Daffodils(Latin:Narcissus sp.)です!
5月初旬、なんだか咲いてるスイセンの品種が変わったぞ??
前回のスイセン記事は咲きはじめた家のまわりのスイセンたちをパパッとリポートしてみた感じの記事でした!それが前回4/26の出来事…
北海道ではだいたい4/20になってからスイセンが順次咲き始めるようすでした。
それから半月ほど経った頃合いでしょうか。
気にして見渡すと意外とスイセンたちが咲き残ってるんですよ。
意外とスイセンの花って長持ちするんだなぁ〜と思ってたら、どうやらスイセンの様子が変化していることに気づきます。
どうやらスイセンたちが咲きはじめた4月末時点では黄色かったラッパスイセン(N. pseudonarcissus)の花被片が白く変化しているではありませんか!
見渡してみると、確かに白いスイセンが増えたなぁ〜〜と気付かされ、、、
よくよく見回ってみると前回記事で載せていたラッパスイセンとは明らかに異なる種のスイセンが咲いていた!これはもしや別種の遅咲きスイセンだな!?
ということで自宅周りの異なるスイセンたちをまとめてみることにしました!(何種類現れるんだろ〜うワクワク!!)
葉っぱがラッパズイセンに比べてよりニラっぽい。
別種のスイセンであるということを示すために花の形だけでなく葉っぱの形状にもスポットを当ててみました。
4月末に開花していたラッパズイセン(N.pseudonarcissus)を早咲き種としてみると、5/10にいまだ未開花つぼみをつけていた遅咲きスイセン種たちは葉っぱが細身であり「ニラ感」が増した気がする形状となっていました。
ラッパズイセンだとアヤメのようにヘラ形状で平たく大きい葉っぱなのですが、遅咲きスイセンらは葉っぱの幅が細身で丸まっているのがわかるかと思います。
こういった葉の細い遅咲き種をニラと見間違えて誤食してしまったりするんだろうなぁーと納得の形態。
まさかの香料品種:Narcissus jonquilla発見!?
ラッパズイセンの開花ピークからやや遅れて、気付けばやや小ぶりな黄色いスイセンも現れていました。
はじめは桜の受粉サインのように花色が時間とともに変化しただけかな〜〜〜と思ってたのですが、よ〜〜〜く見てみると、明らかにラッパ部分(副花冠)が小さいのです…!!(おぉ…これは!!)
香りがエラくジョンキル香料と似ていたので、とっさにN. jonquillaでググってみると「丸っこい形の花被片」「花被片も副花冠も黄色」「ラッパが小さい」「葉っぱがニラ葉状」などかなり外見特徴が合致!
ジョンキルは他の水仙たちと違い、よりニラやチャイブっぽい細く丸い葉っぱをしていることが知られているようなのです。
ちなみに、香料用水仙で名高いジョンキル(N. jonquilla)は和名で黄水仙のほかに「糸水仙」「糸葉水仙」とも呼ばれているようなのです。
匂いも強く、より芳醇でウッディースパイシーな香り!
周囲に生えているさまざまなスイセンと花の香りを嗅ぎ比べてみたのですが、ジョンキルと思しき黄花のスイセンは、他の花では強いユリのような生花の香り印象が強いのに対して落ち着く香り要素がある芳醇な香りがするのです!
所有しているジョンキル香料の香り要素ともおおむね合致するアロマ特徴だったので、どこからかタネで飛ばされてきたジョンキルがここで芽生えたのでしょう…!
いやぁ〜探してみると意外と香料種スイセンも日本にいるもんなんだなぁ〜と感心でした。
水仙の植物学
水仙はその花のスタイリッシュさ・美しさから日本の春を代表する"アジアンな花”といったイメージを持ちますが、歴史を辿るとどの種もヨーロッパ・地中海周辺の地域が原産地となっているようです。
ギリシャ神話においてもナルシスの伝承が存在していることから古い時代からヨーロッパ地域で愛でられてきた植物であることがわかると思います。
東アジア地域への伝来はシルクロード交易により持ち込まれているようで、今日では東アジア地域に多く見られるフサザキスイセン(N. tazetta)が多く定着したようです。
なのでスイセンは厳密にはヨーロッパからの外来植物なのです。
現在では数多くの園芸品種が生み出されていますが、元来野生環境で生育していたスイセンの原種は約40種あまり存在しているようです。
スイセン属植物のなかで最も小型のものは花茎の高さが10cm未満となるペチコートスイセン(Narcissus bulbocodium)という種がおり、大型とされる種は80cmあまりまで花茎が伸びることがあるフサザキスイセンであるようです。
スイセンは花茎に基本1輪か3輪の花をつけるものがよく知られていますが、シロバナスイセン(Narcissus papyraceus)とよばれる種はネギ属アリウムやニラのような球形に花が出る散房花序という形態をとり、花茎1本あたりから最も多くの花をつけるようです。
ラッパ(副花冠)が最も小さい種はNarcissus serotinusが知られているようです。
そのへんに生えてる野生帰化スイセンを比べてみた。
わが地元エリアで見られる、完全に野生環境で独り立ちしてしまっているスイセンたちを集めてみると、ざっとこんなポピュレーションになりました。
おなじみのミニ図鑑形式で紹介していきまっす!
ラッパズイセン(N. pseudonarcissus)
ラッパ部分(副花冠という)が花被片(花びらに見える6枚)よりも大きく、他のスイセン種に比べて大柄な特徴を持つラッパズイセン(喇叭水仙)。
北海道では最も早く開花するスイセン種で、4月下旬に開花しはじめる。
立派なラッパ部分や多種多彩な花色の品種が数多く作出され、園芸品種としてよく目にする種。
品種によっては、開花後期(受粉が完了したタイミング?)に花被片の色が変わるものもいるようです。
園芸品種として庭に植えられたものが、種子散布による逸出などで野生帰化することがよく確認されている。
フサザキスイセン(N. tazetta var. tazetta)
4月下旬に咲くラッパズイセンより2週間ほど遅れた5月に咲きはじめ、北海道の田舎風景で見られる白いスイセンのほとんどがおそらくこのフサザキスイセン(房咲き水仙)。
基本的に1本の花茎から花が3つほど展開する。若い個体だと1輪咲きの場合もある。
後述の1変種であるニホンスイセン(N. tazetta var. chinensis)はカップが山吹色〜オレンジ色となるのでそれで見分ける。
フサザキスイセン(N. tazetta var. tazetta)はカップの先端が西洋貴婦人のスカートのようにフリル状となっている。
フサザキスイセン個体群の中でごく稀に6枚の花被変が細くユリっぽい印象を持った変種?も見られる。細身の花被片だと一気に印象が一変する。
ニホンスイセン(N. tazetta var. chinensis)
上記フサザキスイセン(N. tazetta var. tazetta)の1変種であり、ニホンスイセンと呼ばれるが学名上はchinensisとなってるので注意が必要。
カップ(副花冠)がオレンジ色か山吹色をしているのが特徴で、フサザキスイセンと違って先端がフリルがからない印象が強い。
全体的にエッジを感じない丸っこいキュートな印象があり、インスタなどで目にするのはこのニホンスイセンの1輪挿しなどが多いイメージ。
野生種は海岸沿いに多く生えており、かつて中国大陸から種子が波に乗り日本沿岸へ漂着しそれが繁茂したとする説がある。
北海道の南空知エリアの野生環境ではなかなか珍しいスイセン種で、花壇植えのものだとよく見かけることができる。
ジョンキル(N. jonquilla)
和名:黄水仙で通称"ジョンキル"とも呼ばれるこのスイセンは黄花のフサザキスイセンのような印象を持つが、スペインのイベリア半島が原産地のヨーロッパ由来スイセン。
今シーズンでこの1個体しか見つけられておらず、なかなか珍しいスイセンの印象。
数あるスイセンの中でも香りが芳醇であり(強いため?)フランスの香料産業において最も香料採取用に栽培されるスイセン種となっているようです。
他のスイセン種と比べて香りにウッディーなイメージがあるため、それが落ち着く香りとなっているよう。
クチベニスイセン(N. poeticus)
かつて人家があったと思しき畑跡にて発見。
種子散布による逸出が少ないためか、花の美しさとともにかなりレアな印象のスイセン。
カップの先端が赤〜オレンジ色に染まる特徴、花びらが際立って白いなどの特徴をもつ。
美しさが際立つクチベニスイセンの花言葉は学名ポエティカスから「詩人の心」やその花の美しさから「素敵な装い」などがある。
香りも雑味をさほど感じず澄んでいて、ユリを思わせる美しい香りがする。
水仙の象徴:ラッパ/副花冠を比較してみた。
スイセンのラッパについてさらに語ると、スイセンの1種にはラッパ部分のみが残り花びら様の花被片が矮小化してほぼ消滅してしまったNarcissus bulbocodium(通称ペチコート水仙)という種が存在します。
スイセンのラッパのみを残したようなおもしろい花なので日本国内でも園芸品種として入手することができます。
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