モンスターハンターひろゆき〜人喰い魚のパエリア
―「危険な川で人喰い魚を釣って、美味いパエリアを作る? それ、僕にとっては魅力的すぎる話ですね。」
1. 人喰い魚の噂と“釣り”の依頼
前回、マンドラゴラを採取してベーコン・ポテト・バターガーリックのグリルを堪能した僕は、王都の酒場でのんびりしていた。
すると、漁師風の男が声を潜めて話してくる。
「人を襲う化け物じみた魚が下流の川に大量発生して困ってるんだ。しかも、その魚の白身は絶品で、パエリアにしたら最高らしい…って聞いたんだが、誰も釣りに行きたがらなくてな。」
「人喰い魚……名前からして物騒ですね。でも白身が美味いってのは気になるなあ。
報酬もそこそこいただけるなら、僕としては“パエリア”目当てで一石二鳥じゃないですか。」
そう思ったらいてもたってもいられない。
「よし、やりましょう。危険と食欲は常にセット、ってことで。」
2. 魚なのに人を襲う? 川辺の下調べ
下流の川といっても、その先は広大な湿地帯につながっている。草木や葦が鬱蒼と茂る地域で、ワニや巨大な水棲モンスターが出没することも珍しくないそうだ。
依頼人から渡された地図によれば、特に流れの遅い支流あたりで人喰い魚が大量に目撃されているという。
「魚なのに人を襲うって、まあピラニアとかもそうですけど、こいつらはもっとヤバそうですね。
でも結局、美味しい白身魚が手に入るなら行くしかないでしょ。
腹減ってるときのパエリアって最高なんですよね。」
念のため、今回は防水装備や丈夫な釣り竿、そして万が一のための小型ボートを用意して向かうことにした。釣り上げるどころか、こっちが釣られないようにしないといけないからだ。
3. 湿地帯での釣り開始
湿地帯に着くと、空気は湿り気を含み、虫の鳴く声が絶えない。
腐葉土や水草の匂いが鼻につく中、僕は視線を泳がせながら岸辺に近づく。
わずかな水面の揺れに、何匹もの影がうごめいているのが見える。
「あれが噂の人喰い魚、ですかね……意外とでかい? しかも歯がギザギザ。
うわ、これ水の中に落ちたら絶対やられちゃいますって。」
川岸に小型ボートを浮かべ、最小限の装備だけ持ってそろりと乗り込む。
ボートが揺れるたびに水面下からバシャッと音がする。すでに周囲を取り囲むように魚の群れが近づいてきていた。
4. 餌付けと“危険な一匹釣り”
今回の釣り作戦は、餌を使って人喰い魚を引き寄せ、狙いを定めて釣り上げるというシンプルなもの。
ただし、巨大な群れが一度に寄ってこられると危険すぎるので、少しずつ餌を投げ込み、群れを分散させる狙いだ。
1. 餌を少量ずつ投げる
2. 群れがある程度ばらけたところで釣り針を垂らす
3. ターゲットを一匹ずつ釣り上げる
「問題は、釣り上げた瞬間に他のやつらが暴れそうなことですよね。
まあ、逃げる準備だけは万端にしておきます。」
釣り竿を構え、緊張しながら待つ。
やがて、釣り糸がぐいっと引かれ、リールが悲鳴を上げるように回転した。
「よし、かかった! うわぁ、すげー力……!」
何とかリールを操作しながら、人喰い魚を水面上へ引きずり出す。硬い鱗とギザギザの歯がむき出しになり、凶悪な顔をしてバタバタ暴れる。
「やっぱり一匹のサイズがけっこうあるなあ。こんなのに群れで襲われたら……想像だけで怖い。」
5. 波乱の釣果と緊急離脱
ひとまず最初の一匹を仕留め、即座に袋に詰めてボートの底へ放り込む。すると、血の匂いを嗅ぎつけたのか、水面下の人喰い魚たちが一斉にボートに体当たりを始めた。
ボートは軋み、傾きかける。
「まずい……これは長居は無用ですね。もうちょっと釣りたかったけど……このまま沈んだらシャレにならない。」
仕方なく、その場はすぐに岸へ戻ることにした。道中も何度か魚たちが跳ねてきて、ボートに噛みつこうとする。その歯が当たるだけで穴が開きそうな勢いだ。
「やっぱり“人喰い魚”ってだけはありますね……でも、これでじゅうぶんパエリア作れる量は確保したかも。」
バシャバシャと追いかけてくる奴らを振り切り、なんとか安全圏まで戻り切ったときには、体中が冷や汗でびっしょりだった。
6. 下ごしらえ:人喰い魚の解体
こうして手に入れた人喰い魚を岸辺で解体してみると、中骨は頑丈だが、身自体は白くて程よくしまりがあり、そこそこ脂ものっている。
「おお、これは確かに美味しそう。人間を襲うわりに、身は普通の川魚に近いんですね。ま、食べる側としては大歓迎ですけど。」
危険を冒して釣ってきただけあり、この時点で満足感が湧いてくる。しかし、真の喜びはここからの調理次第。
さっそく王都へ持ち帰り、パエリアの準備を整えよう。
7. パエリアづくりスタート
材料
• 人喰い魚の切り身:適度な大きさのそぎ切り
• お米:スペシャルブレンド(粒が大きめ)
• タマネギ・ピーマン・トマト:みじん切り
• ニンニク・オリーブオイル
• サフラン or ターメリック:色と風味づけ
• 出汁(魚の骨や貝殻があればさらに旨みUP)
• 塩・コショウ・お好みのハーブ
1. 下準備
• フライパン(本格的にはパエリアパン)にオリーブオイルとみじん切りのニンニクを入れ、弱火でじっくり香りを出す。
• そこにタマネギやピーマン、トマトを投入し、中火で炒める。
2. ライス投入
• お米を加え、野菜と一緒に軽く炒める。米粒が半透明になってきたらOK。
• サフランやターメリックを少量の出汁で溶かしておき、これを米に絡めて色と風味をつける。
3. 魚の切り身と出汁を加える
• 解体した人喰い魚の切り身を並べ、出汁を注ぎ、塩・コショウで味を整える。
• 魚の骨や頭からも出汁をとっておけば、より濃厚なスープに。
• そのまま弱火~中火でじっくり煮込み、余分な水分を飛ばしながらお米に旨みを吸わせる。
4. 仕上げ
• 表面がほどよくパリッとなり、米がアルデンテで芯が少し残るくらいになったら火を止める。
• 魚の切り身の上にハーブを散らし、少し蒸らす。
• レモンを添えれば彩りもバッチリ。
8. 実食──辛口の危険と甘口の勝利
フライパンの蓋を開けると、サフランと魚のいい香りが立ち上る。野菜の甘み、魚の旨み、そしてオリーブオイルとニンニクの芳醇な香ばしさが混ざり合って、なんとも食欲をそそる。
「いや、最高ですよ、これ。川魚なのに変な臭みもないし、しっとりとした白身が米の出汁を吸って絶品ですね。人間を襲う凶暴なやつだったとは思えないくらい上品な味だなあ。」
ひと口頬張ると、お米のプチッとした食感と魚の旨みが口いっぱいに広がる。夏野菜のフレッシュさとサフランの華やかな香りが相まって、まさに至福。
「やっぱり危険を冒して釣ってきた甲斐があったってもんです。これなら本職の料理人にも負けない……かも。」
9. 次なる“美味”を求めて
人喰い魚のパエリアを美味しく頂き、依頼の報酬も問題なく受け取った僕は、また一歩“モンスター美食の道”を進んだ気がした。
「あー、パエリアをお腹いっぱい食べたら眠くなってきちゃった。しばらくはのんびりしたいけど……またきっと面白い話や美味しい素材のうわさが回ってくるんでしょうね。」
こうして、河川を恐怖に陥れた人喰い魚の脅威はひとまず去り、その身は見事にパエリアの具として供された。
相変わらず“食”への探求は尽きない僕。次はどんなモンスター料理を味わうことになるのか――。
“危険な川の釣りは大変だけど、うまいパエリアを食べられたらオールオッケー”
そんな気楽な言葉を胸に、僕はまた新たな冒険へと旅立っていく。