![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/130384557/rectangle_large_type_2_43e4ee3219651942bd8afa18fcfaa7dc.png?width=1200)
今日の短歌〜なくしたもの〜
洗濯機の後ろに落ちた物たちの
ヒソヒソ話が聞こえそうな夜
「あっ」
と思った時はもう遅かった。
歯みがきチューブのキャップは洗面台から転げ落ちて、隣にある洗濯機の向こう側に転がっていった。
ああ、また落としてしまった。
我が家の洗濯機は洗面台と風呂場の間にすっぽりと収まっている。洗面台と洗濯機の隙間は4センチくらい。洗濯機は台のようなものの上に乗っており、その台は端がお皿のようになっているので落ちたものを引き寄せることも出来ない。洗濯機は重く、しかも排水パイプが下に出ているため持ち上げられない。だから一度落ちたら最後、拾うことは難しいのである。
今までも、髪オイルのキャップやら化粧水のふたやら、いろんなものが洗濯機の後ろ(下)に吸い込まれていった。
洗濯機の後ろでは
「あ、新入りだ」
「あんた、何の仕事してたの?」
「私はもう2年もここにいるのよ」
「全くあの人(わたしのこと)はそそっかしくてねぇ」
などといった会話が交わされているのだろうか。
彼らを救出できるのは次に洗濯機を買い替える時か…。それにしても歯みがきチューブにキャップが無いとかなり困るなぁ。
そう思った時、浮かんだのはユーミンの「真珠のピアス」という歌である。
確か歌詞にこうあった。
「どこかで半分無くしたら 役にはたたないものがある」
そう、別れる前の最後の夜、恋人のベッドの下に真珠のピアスを片方落としておく、というあの有名な歌。
初めてこの歌を聴いた時、私はまだ学生だったが
「女って怖いっ」
と、大人の女の怖さを教えられた気がした。
「もうすぐ可愛いあの人と引越しする時気づくでしょう」
…怖い!もうこれは呪いの時限爆弾なのであった。
私の歯みがきチューブのキャップも、洗濯機の後ろでじっと時を待ち、洗濯機が買い替えられる時に他の物たちと一緒に姿を現すだろう。
しかし、歯みがきチューブにキャップがないと困るなぁ。