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【絵本】「100万回生きたねこ」 佐野洋子

「ねこは、白いねこと いっしょに、いつまでも生きていたいと思いました。」



「100万回生きたねこ」 佐野洋子



「死ぬ」ってことはこわい。
「別れる」ってことはこわい。


と僕はずっと思って今まで生きてきて、これからもずっとそう思って生きていくのだろうと思っていました。


でも


「死ぬ」ってことはこわい。
「別れる」ってことはこわい。


と思うのは、実はとても


「幸せ」


だったんだんですね。

          ◇


100万回生まれ変わった猫がいました。どんなに人に大切に思われようと幸せを感じることがなく、死ぬことが怖くなかった猫。


王様、船乗り、サーカスの手品使い、どろぼう、おばあさん、女の子、いろんな人たちに飼われ、のらねこにもなりました。


ねこは 死ぬのなんか平気だったのです。

「おれは、 100万回も 死んだんだぜ。」


しかし

たった1ぴき、ねこに見むきもしない、白い美しいねこがいました。ねこは、白いねこのそばに行って「おれは、100万回も しんだんだぜ!」といいました。

白いねこは 
「そう。」と いったきりでした。

「おれは、100万回も......。」
と いいかけてねこは「そばに いても いいかい。」
と白いねこにたずねました。

白いねこは、 「ええ。」 といいました。
ねこは、白いねこのそばに、いつまでもいました。


やがて


2匹のあいだに子どもが生まれました。
自分のことが一番好きだったねこにも家族ができました。


ねこは、白いねことたくさんの子ねこを、自分よりもすきなくらいでした。
ねこは、 白いねこと いっしょに、いつまでも生きていたいと思いました。

ある日、白いねこは、ねこのとなりで、しずかに うごかなくなっていました。ねこは、はじめてなきました。

夜になって、朝になって、また夜になって、朝になって、100万回もなきました。


愛するねこがいて、家族がいて、100万回生きたねこは、はじめて「生きる」ことができました。


ずっとそばにいるだけでいい。
いっしょにいつまでも生きていたい。


死ぬのが・・・
別れるのが・・・
こわい。


そう思ったとき、自分は
「幸せ」
だったと気づくはずです。


そして


ねこは もう、けっして生きかえりませんでした。



【出典】

「100万回生きたねこ」 佐野洋子 講談社


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shinku  |  読書ヒーリング
いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。それだけで十分ありがたいです。