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映画評 デューン 砂の惑星 PART2🇺🇸

(C)2023 Legendary and Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

第94回アカデミー賞で6部門に輝いた『DUNE/デューン 砂の惑星』の続編。『メッセージ』『ブレードランナー2049』のドゥニ・ビルヌーブ監督が再びメガホンを握る。

その惑星を制する者が全宇宙を制すると言われる砂の惑星デューンで繰り広げられたアトレイデス家とハルコンネン家の戦い。ハルコンネン家の陰謀により一族を滅ぼされたアトレイデス家の後継者ポールは、ついに反撃の狼煙を上げる。しかし、宿敵ハルコンネン家の次期男爵フェイド=ラウサがデューンの新たな支配者として送り込まれてくる。

全編IMAXカメラで撮影された本作は圧巻と驚きの連続だ。デューンの世界観と登場人物を神々しく描き、戦闘シーンはその場に居合わせたかのような臨場感に包まれる。

IMAXスクリーンで鑑賞することを前提に作られているため、前作以上に従来のスクリーンでは物足りなさを感じることになるかもしれない。配信では当然面白さは半減してしまうため、リバイバル上映の機会があれば、ぜひIMAXスクリーンへと足を運んでいただきたい。


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映像技術の革新は去ることながら、デューンの世界観を一通り見せ、ポールの成長をゆっくりと描いた前作と比較すると、よりスピーディーなテンポ感で、より見応えのある迫力満載なシーンが増えたエンタメ作品として昇華されているように見えた。

筆者個人的には、テンポ間の鈍重さがポールの成長に説得力をもたらせ、デューンの世界観をより堪能できていたため、本作のテンポ感は見応えのあるシーンが次々と描かれていく楽しさはある一方で、デビット・リンチ版『デューン/砂の惑星』のような駆け足な印象を覚えた。

前作では時間をかけてポールの成長を描いていたのだが、目まぐるしい勢いで英雄へと駆け上がっていく。フレメンの文化や戦い方を覚え、一人前の証であるサンドワームを乗りこなし、クイサッツ・ハデラックとして覚醒した後、デューンに生息する全フレメンのリーダーとなってハルコネコン家及び皇帝と対峙する。展開が早いため飽きないのだが、どこか説得力の無さは否めず映像美だけが際立つ。

駆け足なテンポ感の犠牲者となったのがフェイド=ラウサだ。残忍な性格でありながら、戦闘相手には敬意を持って戦う『プレデター』や『グラディエーター』でありながら、次期皇帝として統率力にも長けているそう。魅力的なキャラになるはずなのだが、役目としてはポールが復讐を遂げるための噛ませ犬感が否めない。当然登場時間の短さも影響している。ただ、モノクロで描かれたコロセウムで試合する初登場シーンは、迫力満載であることは記しておきたい。


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テンポ感の駆け足加減は前作よりも劣ってはいたが、原作が持ち合わせる白人酋長への批評及び人類がこれまで歩んできた歴史を批評する試みが前作以上に機能していた。

ポールが救世主になりフレメンを率いてハルコネコンを倒すのだが、冷静に考えれば、絵に描いたようなマッチポンプだ。ベネ・ゲセリットによって救世主がやってくる教えを普及させ、フレメンを精神的に支配する土台を作り、ポールが救世主として君臨する。信仰を用いて精神を支配することは、統治をやりやすくする土台を作るのに適しているのは人類史が証明している。信仰心の危険性を辛辣に突きつける。

しかもアラキスを巡る争いは、ハルコネコン家とアトレイデス家は皇帝直属の系譜。むしろ、お家騒動にフレメンは巻き込まれていると言っていい。その上で、ポールを神聖化させ救世主として奉るフレメンらの姿は、信仰によって精神が支配されていることの現れであろう。

ゼンディア演じるチャニの視点が白人酋長及び英雄談に昇華させず、物語を形成する上での批評的バランスを保つことができた。ポールが徐々に権力を獲得し、英雄として奉られていく姿は、権力を闘争に用い、暴徒化する民衆に乗せられ、新たな争いの火種の予感をさせる。

暴徒化するポールとは反比例するように、チャニの心はポールから離れていく。ラスト、サンドワームに乗ったどうすることもできないと訴えかけてくるようなチャニの表情が全てを物語っている。

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