新人ライターや編集者に教えている「文章はトンマナに“意図”を持たせる」
今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。
なぜか、今年いちばんの繁忙期を迎えております……。
最近は読みもの系の本の制作が多く、書きに書きまくったついでに、今回は久々に文章についてのお話をしようかと思います。
以前の記事、「短文のススメ」でもチラッと触れましたが、プロとアマのライターの違いを決定づけるものは「書き分けのスキル」だと思っています。
想定するターゲットがいて、その人がどういう状況で、どういう目的で読み、読んだことでなにを得るのか、読者がどう変化するのか、ということを考えながら文章のトンマナを設定して書き分けます。
この辺りは基本的なことなので、すでに意識して書いているライターさんも多いと思いますが、経験の浅い新人ライターさんなどの場合、意外と「適当」「なんとなくの感覚」で置きにいっているケースも少なくありません。
「なぜ、こういう書き方をしたの?」という質問に対し、「そうしたほうが読者に合っていると思ったので……」などと、答えているようで、実は答えになっていないことが多々あったりしました。
文章は割と「自由なもの」だと思い込んでいるケースが多く、「コンセプト」が軽視されているな〜と感じることが多かったです。
文章に限らず、あらゆる創作物には「コンセプト」があります。私の場合は「意図」と言い換えたりしますが、自分がつくったものに対し、きちんと説明できることが大切だと、日々感じています。
それは、感覚的なアートにも該当します。言葉にできないものを表現するにしても、「自分がなにを表現したかったのか?」というコンセプトは必ず存在します。
出版関連の仕事でいえば、たとえばデザイナーさん。ベストセラーを連発するような優秀なデザイナーさんたちは、カバーや本文フォーマットのデザインをお願いすると、大体3案くらい提案してくれるのですが、その3案についてなぜこういうデザインにしたのか? という説明を添えて提出してくれます。
それらを見ていると、「なるほど、こういう意図でこのフォントを使い、こういう配置で、こういう色を使っているのか〜」と、すべてに明確な意図を持って制作していることがわかります。これは本当に尊敬に値しますし、いつも「素晴らしい仕事だな〜」 と感心しています。
このようなことを仕事の現場で度々目の当たりにしてきて、私自身もプロの仕事はこうでなければいけないと、自分の仕事に活かそうと考えた結果、文章はもちろん、編集にも明確なコンセプトを持って制作するようになりました。
トンマナは、「ですます」などの文体やノリ、リズムだけではなく、どこまで説明するか、どこまで掘り下げるかといった情報の深さの設定なども含みます。
これらをターゲットに合わせ、どのように表現するかの基本ルールが「文章における意図」だと、個人的には考えています。
たとえば、「ストレスは体に悪いので睡眠が大事」みたいなことを伝えるとして、コンセプトの違いでまったく異なる表現になります。
同じテーマの文章でもコンセプトの違いでだいぶ印象が変わりますよね?
コンセプトAの場合、対象が学びたい男性なので専門用語を少し多めに出して「学びの充実感」を演出したり、知識の下地がある想定なので用語の説明を基本的な部分は省いたりしています。メカニズムなどの蘊蓄に面白さを感じてもらうため、なぜ睡眠がストレス解消につながるのか? というプロセスの情報をやや深めに設定しています。
コンセプトBの場合、短時間でとにかく今そこにあるストレスの問題を手っ取り早く解消したいというコンセプトなので、難しいプロセスなどは省略し、最低限の理由と、こうすれば解消できるという端的な解説にとどめています。ターゲットが女性なので、「共感」を重視し、「仕事で〜」などのよくある状況を差し込んで自分事化して興味を持ってもらうことを意図しています。
ざっくり粗い感じの例を出したので、ツッコミどころはあるでしょうが、それは置いといて……(汗)。
こうしたひとつひとつの文章に「意図」を持つことは大事です。たとえば、クライアントとトンマナについて意見交換するときなども、明確な意図を持って説明できれば、相手が納得する確率も上がるので、より自分が書きたい方向へ持っていくことができます。
また、コンセプトの軸が決まっていれば、書き進むごとに迷いが生じたときも、一貫性を持って選択できるので、仕上がりのクオリティもおそらく上がっていると思います。
もし、これまであまりコンセプトを意識しないで書いていたという人は、「なぜこう書いたのか?」という理由を説明できるようになると、グンとレベルアップするかもしれません。
少なくとも私自身はそうだったので、よろしければぜひお試しください!
文/編プロのケーハク
Photo/Alexander Grey(Unsplash)
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