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修正を受ける立場になる。編集者の「修正」の考え方
書籍づくりは、一本道ではありません。修正がつきものだからです。
出来上がった原稿やイラスト、デザイン、印刷物をチェックして、修正を重ねて、前に進みます。
自分で作ったものを自分で修正するならば問題はないのですが、だいたいの場合は「発注者」が「作り手」に対して修正指示を行います。コミュニケーション能力や、言語化する力が求められるので、なかなか難しい……。
こんにちは、高橋ピクトです。
編集者の仕事は、「修正指示」がうまくできるかが大事です。
書籍のクオリティはもちろん、チームワークを整えることができるからです。今日は失敗しながら学んできた、私なりの修正の考え方をご紹介します。
「修正」は出来上がったものを調整して、やすりをかけるような作業。
全否定するわけではなく、「良いところ」を伸ばし、「足りないところ」を改善していきます。
と、いうのが修正の基本的な考え方なのですが、
修正って、普通に考えると嫌なものですよね。
だって、誰かが考えたものの、欠点を指摘するわけですから。
よいところは「よい!」と伝える
嫌な修正を始めるときに大事なのがこの点です。
発注者ならば、作り手に感謝を伝えたいです。
発注者でなくても、形にしたことへの経緯を払いたいと思います。
改善したい点があることはわかりますが、それは後の話。
どこがよかったのか、素直な感想を自分の言葉で伝えることが大事です。
原稿だったら、具体的にどの部分がよかったのか。
たとえば、「取材の内容が、臨場感を保ったまま書かれていて、ワクワクした」とか、「レシピがわかりやすい。調理する人への気遣いがあって、あたたかい気持ちになった」とか。
第三者からは、浮ついた言葉に見えるかもしれませんが、苦労した作り手には必ず伝わります。
「すぐ修正の話だと、心が折れる」「褒めてほしい!」と、ライターさんや編集者さんからよく聞きますし、私も作り手の立場で修正を受けることもありますから、その気持ちはよくわかります。
具体的でない修正をどう考えるか。
肝心な修正についてですが、改善したい点をはっきりと伝える必要があります。修正内容は、ケースによるとは思いますが、
・具体的な修正
・具体的でない修正
があると思います。
とくに「具体的でない修正」。これは難しいものです。
なぜなら、どうしてほしいか、具体的でないままだと作り手がどう修正していいのか迷ってしまうからです。この状態では、クオリティも上がりません。
もちろん、具体的に赤字が入れることがベストなのですが、たとえば原稿ならば「専門用語が多くてわかりにくい」「読者対象の認識がズレている」「文章量が多いけど、どこから削るか判断できない」など、具体的に赤字を入れにくい場合があります。
ここでは、以前、私が「受けた」修正依頼を例に説明していきます。
修正指示を出す側よりも、受ける側の話をしたほうが「修正指示に何が必要か」が伝わりやすいと考えたからです。
私は、制作中の書籍で、300文字程度の原稿を書きました。
書籍の導入で、著者のメッセージや本の特徴を、コピーライティングで伝える大事なところでした。
その原稿について、著者からメールで「なんだか気になる」と指摘を受けました。自信のある内容でしたが、伝わらなかったのです。ここから修正のやり取りが始まります。
私は、メールでやり取りをしても話がまとまらないかもしれないと考え、電話で打ち合わせをすることにしました。
打ち合わせでは、どのあたりが「気になるのか」聞いていきます。そうすると、「ほかのページとの内容的な被りが気になる」「普段、自分が使う言葉と違う表現がある」「文章が長いと感じる」など、気になる点が具体的になっていきました。
ここで私は、著者の意図を汲めなかったことを、力不足だったとお詫びして、どうしてこのような原稿になったのか、経緯を説明しました。
文章内の言葉のセレクトの意図(打ち合わせや撮影など、現場でおっしゃった言葉を元にまとめていること)、文章のコンセプト(本の特徴を、このページでつかんでほしい)などです。
それを聞いた著者は、「そうだったのか、それなら間違いではないから、修正しなくていいかも」と言ってくれました。
作り手の意図が伝わったとき、嬉しく思いましたが、修正をせずにそのままにしては、せっかくのブラッシュアップのチャンスを無駄にしてしまいます。私は、伸びしろを与えてくれことに感謝し、「読者に、この本に興味を持ってもらえること」そして「先生(著者)のメッセージを、先生の言葉で伝えること」を目指しますと伝えました。
このあとは、原稿のどの部分が気になるのかを教えてもらい、どういう表現だと「読者に伝わるのか」そして「著者が納得するのか」を打ち合わせていきました。
「修正を受ける」経験を生かす
と、「修正を受ける」話になりましたが、
ここで「修正を指示する」側の話に戻します。
私は、「具体的でない修正」を依頼するときは、
自分の「修正を受ける側の経験」を生かすようにしています。
たとえば、以下のように今回お話した例を生かすなら、作り手が迷わないように進めていく感じです。
1気になる点を、できる限り言語化する。
2目指す目標を共有し、現状とのギャップを把握する。
3作り手の意図を聞き、本当に修正すべきか判断する。
4“読者ファースト”で具体的にどのように修正するか、打ち合わせる。
修正指示をするとき、受けるときに、やってはいけないのは、自分本位になることです。「私は絶対これがいいと思うから、修正はマスト」「私はこれがベストだと思うので、修正はできない」など、「私」だけが主語の議論は的外れだと思います。原稿であれば、大事なのは読者です。
「読者がどう思うか?」を前提に、発注者も、作り手も、お互いの仕事を尊重して、一緒にクオリティを上げていくことが大事だと思っています。
文 高橋ピクト
生活実用書の編集者。『新しい腸の教科書』『コリと痛みの地図帳』などの健康書、スポーツや囲碁、麻雀、競馬、アウトドア、料理など、趣味実用書を担当することが多いです。
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