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【予習】第37回東京国際映画祭【コンペティション部門】

みなさんこんばんは。
東京国際映画祭のラインナップが発表されたということでコンペティション部門の予習をしていきたいと思います。

アディオス・アミーゴ(イバン・D・ガオナ/コロンビア)

内戦に揺れるコロンビアの山岳地帯で展開するドラマを、マカロニ・ウェスタンのスタイルで描いたアクション映画。内戦の中で消息を絶った叔父を探す主人公の前に、次々と怪しい人物たちが登場する。

 監督のイバン・D・ガオナは短編を一本発表しているだけの新人だと思われます。映像が出ていないのでなんとも言えませんが、ストーリーに惹かれるものがあります。見応えアリの娯楽映画でしょうか。楽しみです。

小さな私(ヤン・リーナー/中国)

フィクションとドキュメンタリー双方で活躍するヤン・リーナーの監督作品。障がいを持ちながらも力強く生きる若者を、その母、祖母との関係のなかに描く。『少年の君』(19)でスターとなったイー・ヤンチェンシーが主演。

 監督のヤン・リーナーは90年代からドキュメンタリーを発表、長編フィクションは本作で四本目となる中堅監督のようです。こちらも映像が出ていませんが、静的で深い人間ドラマが期待できるでしょう。

死体を埋めろ(マルコ・ドゥトラ/ブラジル)

『狼チャイルド』(17)など、独創的な作品で知られるブラジルの俊英マルコ・ドゥトラの最新作。路上で轢き殺された動物の死体を回収する男が遭遇する異様な出来事を、夢と現実を錯綜させて描く。

『Todos os Mortos』(ベルリン映画祭/コンペティション部門)
『O Lençol Branco』(カンヌ映画祭/シネフォンダシオン部門)
『Um Ramo』(カンヌ映画祭/?)
『Trabalhar Cansa』(カンヌ映画祭/ある視点部門)
『狼チャイルド』(シッチェス映画祭/ホセ・ルイス・ガーナー批評家賞)

 『狼チャイルド』で日本でも知られるマルコ・ドゥトラ監督の新作です。カンヌやベルリンでも実績があります。ストーリーから想像するにこれは大好物な予感がします。

士官候補生(アディルハン・イェルジャノフ/カザフスタン)

『イエローキャット』(20)などで知られるカザフスタンの俊英監督、アディルハン・イェルジャノフの最新作。士官学校に入学した少年の視点から、軍隊の内部にうずまく暴力や虐待をリアリズム・タッチで描く。

『世界の優しき無関心』(カンヌ映画祭/ある視点部門)
『イエローキャット』(ヴェネツィア映画祭/オリゾンテ部門)
『Goliaf』(ヴェネツィア映画祭/オリゾンテ・エキストラ部門)
『Chuma v aule Karatas』(ロッテルダム映画祭/Netpat賞)
『Shturm』(ロッテルダム映画祭/ビッグ・スクリーン部門)

 『世界の優しき無関心』が東京国際映画祭、『イエローキャット』がフィルメックスで紹介されているアディルハン監督の新作です。過去作が一般公開されておらず私も観られていないのが残念です。

娘の娘(ホアン・シー/台湾)

『台北暮色』(17)で監督デビューしたホアン・シーが、大女優シルヴィア・チャンを主演に迎えた新作。同性のパートナーとアメリカで暮らしている娘の死の知らせを受け、アメリカを訪れた母親が自ら封印していた過去に直面する。

『台北暮色』(金馬奨/新人監督賞ノミネート)

 『台北暮色』で鮮烈なデビューをはたしたホアン・シー監督の新作です。本作はトロント映画祭で上映されています。予告をみるに台湾らしい温かな人間ドラマでしょう。

英国人の手紙(セルジオ・グラシアーノ/ポルトガル)

父親が南部アフリカのナミブ砂漠に残した書類を探索する小説家を主人公に、植民地主義の問題をアフリカの壮麗な映像のなかで描いた作品。ポルトガルの著名プロデューサー、パウロ・ブランコが製作。

『Njinga Rainha de Angola』(モントリオール映画祭/フォーカス・オン・ワールドシネマ部門)

 監督は00年代からコンスタントに作品を発表しているベテランのようです。予告でも砂漠で撮られた美しい映像が収められており、映像に期待できる作品でしょう。

彼のイメージ(ティエリー・ド・ペレッティ/フランス)

コルシカ島の地元紙で働く女性写真家とその周辺の人々を、1980年代から約20年間にわたって描いた作品。モザイク状のエピソードから、コルシカ島に起こった独立運動の推移が浮かび上がる。

『Les Apaches』(カンヌ映画祭/監督週間)
『Enquête sur un scandale d'État』(セザール賞/脚色賞ノミネート)

 今年のカンヌ映画祭監督週間に出品された作品です。監督は国内外から注目を集めている存在のよう。独立運動を絡めた社会派作品でしょうか。

雨の中の欲情(片山慎三/日本)

日本×台湾共同制作作品。『さがす』(22)「ガンニバル」(23)の片山慎三監督がつげ義春のシュルレアリスム作品「雨の中の慾情」を原作に創出した、独創的で数奇なラブスト―リー。

『岬の兄妹』(スキップシティ国際Dシネマ映画祭/作品賞)
『さがす』(釜山映画祭/ニュー・カレント部門)

 『岬の兄妹』で鮮烈な印象を残し、『さがす』はキネマ旬報ベストテンにも選出されましたね。個人的にはそこまで好きな監督ではないですが『さがす』は面白かったです。成田凌を主演に迎えた本作、どのようなストーリーが展開されるのか期待したいところです。

わが友アンドレ(ドン・ズージェン/中国)

『山河ノスタルジア』(15)等で知られる俳優ドン・ズージェンが出演も兼ねた監督デビュー作。父の葬儀のため故郷の街に向かった男と少年時代の友人との奇妙な再会を描く。「唐人街探偵」シリーズ(15、18、21)のリウ・ハオランが主演。

 敬愛するジャ・ジャンクー作品『山河ノスタルジア』に出演していたドン・ズージェンの監督デビュー作とのこと。その手腕はいかに。ストーリーはなかなか惹かれるものがありますね。

お父さん(フィリップ・ユン/香港)

香港電影金像奨を受賞した『九龍猟奇殺人事件』(15)など、リアリズム・タッチの作品で知られるフィリップ・ユンの最新作。家族を殺害する事件を起こした息子と対峙する父親の苦悩を描く。ラウ・チンワンが主演。

『九龍猟奇殺人事件』(金馬奨/脚本賞ノミネート)
『Ming mei shiguang』(香港映画賞/新人監督賞ノミネート)
『Jing yi wui long』(香港映画賞/作品賞ノミネート)

 『九龍猟奇殺人事件』はなんだか怖くて観られていないので予習として観ておきたい。父親の苦悩、香港らしいテーマな気がします。予告での美しい映像に期待させられます。

大丈夫と約束して(カタリナ・グラマトヴァ/スロヴァキア)

スロバキアの田舎の村で夏休みを過ごす15歳の少年の苦悩と成長を描いたカタリナ・グラマトヴァの鮮烈な長編デビュー作。少年たちがバイクで丘陵地帯を駆け抜けるシーンが印象的。

 スロヴァキア映画!これまたニッチな作品がきましたね。上映時間はコンペでは最短の91分。青春物語といったところでしょうか。東京国際映画祭はユース部門など青春物語に定評がある(気がする)ので期待できます。

今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は(大九明子/日本)

萩原利久×河合優実×[監督・脚本]大九明子×[原作]福徳秀介(ジャルジャル)。唯一無二のコント職人が小説家デビューを果たした珠玉の恋愛小説を実写化。すべての人が、心を震わせ、生きることの尊さを噛みしめる――。

『私をくいとめて』(東京国際映画祭/観客賞)

 大九作品、一本も観ていないなんて今更言えない…『勝手にふるえてろ』も話題になりましたよね。このあたりでちゃんと予習して臨みたいと思います。

敵(吉田大八/日本)

渡辺儀助、77歳。大学教授の職を辞して10年――妻には先立たれ、祖父の代から続く日本家屋に平穏に暮らしている。ところがある日、パソコンの画面に「敵がやって来る」と不穏なメッセージが流れてくる。

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(カンヌ映画祭/批評家週間)
『紙の月』(東京国際映画祭/観客賞)

 吉田大八監督待望の新作は白黒映画!『桐島』はもちろん『紙の月』もすごく好きな作品なので期待しています。

トラフィック(テオドラ・アナ・ミハイ/ルーマニア)

第34回東京国際映画祭審査員特別賞を受賞した『母の聖戦』(21)のテオドラ・アナ・ミハイの最新作。実際に起こった美術品盗難事件をヒントにヨーロッパの貧困問題を描く。クリスチャン・ムンジウがプロデュースと脚本を担当。

『母の聖戦』(カンヌ映画祭/ある視点部門)
『Waiting for August』(ヨーロッパ映画賞/ヨーロッパ・ドキュメンタリー賞ノミネート)

 『母の聖戦』が国際的に評価されたミハイ監督の新作です。骨太なストーリーが素晴らしかった印象があります。美術品盗難事件と貧困問題をどのように繋げているのか興味津々です。

チャオ・イェンの思い(ミディ・ジー/中国)

スター女優として活躍するチャオ・イェンのもとに、長年連絡が途絶えていた姉が訪ねてくる。それをきっかけに、彼女は隠していた過去に脅かされる。ミャンマー出身の映画作家ミディ・ジーが中国で撮影した最新作。

『ニーナ・ウー』(カンヌ映画祭/ある視点部門)
『マンダレーへの道』(ヴェネツィア映画祭/ヴェニス・デイズ)

 ミディ・ジー監督、『ニーナ・ウー』をフィルメックスで観てその年ベストに入れたと思います。それくらい好きな作品でした。新作もなんとなく似たものを感じます。色彩や撮影が素晴らしかった記憶があるのでそういった意味でも大いに期待できるでしょう。

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