ランダム練習での過去の経験が,将来の新規スキルの獲得に有益?!(論文紹介)
練習効率をあげる,文脈干渉効果について以前紹介しました.それに関係する論文の紹介です
過去の記事のように,練習順序をブロック(AAABBBCCC)からランダム(ABCBCAACB)にするだけで,学習(スキルの習得)効率が上がることがわかっています.今回,紹介する論文は,過去のランダム練習での経験が,新規課題のパフォーマンスを向上させるのかを検討した論文です.
論文紹介
Kim at al(2018)Improving novel motor learning through prior high contextual interference training, Acta Psychologica, 182, 55-64
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0001691817300379
目的
ランダム・ブロック練習での過去の経験が,将来の運動学習に影響するかどうかを検討すること.
方法
被験者;今回使用する課題をしたことがない右利きの学生
グループ;ランダム練習(RP)・ブロック練習(BP)・練習なし(NP)
課題;discrete sequence production (DSP) tasks
画像のように,コンピューター画面に表示されるボックスに対応するキーボードを順番通りにタイプする課題.
キーボードタイピングの順番の種類は下記の4種類
実験スケジュール;
実験は3日間で行われた.Day1は,1,2,3の課題を上記の画像のスケジュールで実行(ランダム練習グループはランダムの順番で,ブロック練習グループは,ブロックスケジュールで練習を行なった).Day2では,新規の課題である課題4を全てのグループ同じスケジュールで行なった(9ブロック×11試行;合計99試行).
Day3は,テスト.課題4,1,2,3,の順番で全てのグループ同じスケジュールで行なった.試行数は,各課題11試行.
パフォーマンス指標は課題に費やした時間(ms).
結果
学習課題1,2,3の学習効果(Day1)とテスト成績(Day3)
学習初期段階のブロック1,2ではグループ間のパフォーマンスの差はないが,ブロック練習グループはブロック3以降ランダム練習グループよりも有意に高いパフォーマンスを示した.さらに,ランダム練習グループは,練習期間における有意なパフォーマンスの向上を示さなかったが,ブロック練習グループは練習ブロックを通してパフォーマンスの改善を示した.
テスト成績(Day3)では,ランダム練習グループがブロック練習グループよりも有意に優れたパフォーマンスをしました.
つまり,文脈干渉効果が起こり,ランダム練習はより優れた学習効果を示した.
新規課題(課題4)の練習効果(Day2)とテスト結果(Day3)
新規課題練習効果;
ブロック練習グループとランダム練習グループは,新規課題の最初の練習ブロックで類似した成績を示したが,両群共に練習なしグループよりも優れたパフォーマンスを示した.しかし,ランダム練習を行なったグループは新規の課題なのにも関わらず,ブロック2までに,ブロック練習グループよりも優れた成績を納め始めた. ブロック2において,ブロック練習グループは練習なしグループよりはいいパフォーマンスを示した.このパフォーマンスの差(ランダム練習グループがブロック練習グループ&練習なしより優れたパフォーマンス)はブロック5まで続くが,最後のブロックであるブロック9では, グループ間に有意なパフォーマンスの差は見られなくなった.
Day3の新規課題テスト成績;
ランダム練習グループはブロック練習グループと練習なしグループよりも有意に優れたテスト成績を示した.